写真はご自由にダウンロードしていただいて結構ですが、印刷物・ホームページにお使いの場合には18世紀音楽祭協会事務局にご一報下さい。
第11回福岡古楽音楽祭に関連したイベント(終了)
前田りり子リサイタル「ヴェルサイユのフルート音楽」
2009年5月20日 あいれふホール  詳細は 前田りり子さんのサイト
ラ・フォンテヴェルデ〜マドリガーレの巨匠モンテヴェルディの世界〜
 2009年3月17日 あいれふホール  >> 当日の写真など掲載
ロベール・コーネン先生からベルギーへのご招待
2009年6月29日から5日間、古楽コンサートの受講生5名がベルギーで、コーネン先生のレッスンを受けました。>> 詳しくはこちら
芸術交流宅配便「演奏とお話でつづるフルートの歴史」
  
9月22日19:00〜 福岡市中央区警固公民館
   出演/管きよみ・前田りり子(フルート)
     
主催 福岡市文化芸術振興財団・福岡市・福岡市教育委員会
音楽祭プログラムより抜粋
音楽監督挨拶・・・楽器と音楽

有 田 正 広   

 第11回福岡古楽音楽祭においでいただき、ありがとうございます。
 福岡古楽音楽祭はいつもテーマを決めて開催して来ましたが、今回のテーマは「管楽器の祭典」です。プログラムの予告にありますように、来年は「弦楽器の祭典」の予定です。こんな風に、ここしばらくは楽器別をテーマにした音楽祭を開いてみようと考えており、「鍵盤楽器」や「声楽」の特集も検討しています。
 それぞれの時代に作られたオリジナルの楽器は、美術館に並べられた絵画や彫刻と同じように、ひとつひとつが違った個性をもっており、それが作られた時代を映し出す鏡であると同時に、見る人の心をときめかす精巧な美術工芸品でもあります。その時代の音楽が楽器を創り、また楽器が音楽を創ってきました。古楽を鑑賞する大きな楽しみのひとつは、そういった楽器と音楽の関係を読み取っていくことにあります。
 フルートに関しては、最終日に我が国の若いフルーティストの人たちと一緒に、ルネサンス時代から現代までのフルート音楽の変遷を、「時代楽器」を使ってたどるコンサートをやります。ルネサンス時代のフルートは円筒管に穴をあけただけの、見かけ上は単純な構造の笛です。この時代には、リコーダーと同じようにいろいろなサイズのフルートが残されており、それを使ったコンソートが行われていたようですが、今ではめったに演奏されることがありません。今回はそういう珍しいルネサンスフルート・コンソートも試みます。
 フルートは19世紀の前半にベームという人により、現在使われているモダンフルートの原型ができあがりました。しかし、バロックフルートからモダンフルートへの移行は、一気に起こったものではなく、その間に様々な形のフルートが作られ、古典派からロマン主義音楽への変化に対応してきました。そういった過渡期のフルートについても、実演でお聴かせしたいと思います。
 リコーダーという楽器は、フルートやオーボエと違って、バロック時代末に一度衰退してしまいました。そのために、キーが沢山付いた近代的なリコーダーというのは存在しません。しかし、20世紀になってからは、学校教育にも取り入れられたせいもあって、たいへん普及し、アマチュアの演奏家も多いジャンルです。リコーダーの特徴は、大小様々なサイズの楽器が作られていて、家庭でも気軽にコンサートが楽しめる点にあります。
 それと同時に、ソロ楽器としても、サイズによる音色の違いを楽しむことができます。今回は、ワルター・ファン・ハウヴェとセバスティアン・マルクという達者なリコーダー奏者をお迎えしていますので、ソロ楽器としてのリコーダーの幅広い表現力を堪能してもらえるのではないかと思います。
 オーボエはバロック時代から、弦も含めたアンサンブルやオーケストラに最もよく使われてきた木管楽器です。今回ソリストとしてポール・ドンブレヒト氏をお招きしましたが、氏は同行するロベール・コーネン氏や、前回招聘したクイケン兄弟たちとは同郷のベルギー生まれということもあって、古楽の黎明期から活躍してこられたベテランです。最近は指揮者としても有名で、これだけ著名な方が今回「初来日」というのには、ちょっと驚いています。3日目には氏のリサイタルを予定していますが、オーボエのみのソロリサイタルはこの音楽祭では初めての試みで、オーボエ音楽の真髄をたっぷり聴かせてもらえるのではないかと楽しみです。
 古い時代のオーボエに相当するリード楽器は一般に「ショーム」と呼ばれていますが、木管楽器の中では大きくよく通る音が出るために、古くから金管楽器と一緒に室外での行進や祝典にも使われていました。昔ヴェルサイユ宮殿にはラ・グラン・エキュリという野外音楽隊があって、沢山のオーボエ・ファゴット奏者を抱え、野外での祝典行事や野外オペラで活躍していました。今回のオープニングコンサートでは、ドンブレヒト氏に加え、本間正史、三宮正満(オーボエ)、堂阪清高(ファゴット)氏など総勢8人ものリード楽器奏者をそろえた「オーボエバンド」の演奏を行います。これでだけのリード楽器奏者を集められるのも、福岡古楽音楽祭ならではのことですので、お聴きのがしがないようにお願いします。

「古楽」とロックミュージック
       〜 若者の文化としての「古楽」〜

18世紀音楽祭協会会長  中里 隆  

 昨年は18世紀音楽祭協会ができて20年目、拙宅で「古楽」のコンサートを開き始めて30年目の年でした。ということは、有田さん達の音楽に触発されて、私が古楽を聴き始めたのは1970年代の終わり頃だったわけです。
 「古楽」は、1960年代に始まる反体制的な若者の文化のひとつとして生まれてきました。その点では、同じ時期に生まれたロックミュージックと同一のルーツを持っているように思います。それは、19世紀以来の体制的な伝統音楽に対する反逆であると同時に、機械化が進んだ近代社会への抵抗という意味でも、学園紛争世代の若者を惹きつける魅力があったようです。佐藤豊彦さんのお話では、その当時の若者はブリュッヘンやハウヴェたちのコンサートに、ビートルズなみの熱狂を示したそうです。
 当然のことながら、当時の「古楽」は、伝統的なクラシック音楽界からは「異端的な音楽」として排斥を受けましたから、常に闘争的で、身構えた姿勢を強いられたようです。はじめの頃、18世紀音楽祭協会が主催する「古楽」のコンサートは、必ず「オリジナル楽器による」という但し書きを付け、「古楽」とはどういう理念に基づく音楽なのかをクドクドと説明していました。
 この30年間様々な形式で「古楽」のコンサートを開いてきて、いちばん大きな変化として感じられるのは、クラシック音楽の中に「古楽」が自然に溶け込んでしまったことです。今では一般の方々はもう、その音楽に「古楽器」が使われているかどうかをあまり意識していないのではないでしょうか。音楽に対して敏感な演奏家の多くは、「古楽器」の独特な音と、今まで聴いたことのない特異な奏法に最初アレルギーを起こしたようですが、いつの間にか彼らの奏法にも大きな影響を与えるようになっています。バッハ以前の古い時代の音楽を掘り起こしたことと並んで、「古楽」の運動が20世紀のクラシック音楽の歴史に果たした役割は大きなものがあります。

 福岡古楽音楽祭は20世紀最後の年、1999年に始まりました。以後10年間続けてきて、今一番気になっているのは、聴衆の皆さんが年とともに老齢化していることです。確かに、その間に次の世代を担う若い古楽奏者も育ってきました。しかし例えば、オープニングコンサートは「学生券」というのを発売していますが、実を言うとこれがさっぱり売れません。それに対して、ロックミュージックのコンサートには、福岡でも1万人単位の若者が集まります。ロックも、そろそろ老年を迎える「団塊の世代」の人たちが最初作り出した音楽です。中身は変わっているのかもしれませんが、それは21世紀になっても若者を惹きつける魅力を保っているようです。
 「古楽」とロックミュージックは、同じ時期に似たようなルーツから生まれ、育ったものですが、音楽としてはまったく両極端の性格を持っています。「古楽」はもともと1万人の会場で演奏することを前提に作られた音楽ではありません。数十人の聴衆に、耳を澄まして聴いていただけば、それでも十分成立する音楽です。ですから何も、ロックコンサートのまねをする必要は毛頭ないのですが、それでも21世紀に生き延びるには、若い人たちを惹きつける魅力はぜひ必要でしょう。
 「古楽」を聴いた多くの方々が漏らされるのは「心が癒やされた」という感想です。「古楽」は、過去の音楽にその時代時代の生命を吹き込んだという意味では、本来「癒しの音楽」というわけではなく、ロックとは違った意味で「生命力」をもった音楽だと思います。しかし、現代の世相に神経をすり減らした多くの人が、「古楽」に「癒し」を感じるとすれば、それはまた現代人にとっての「古楽」の「効用」の一つでしょう。「癒し」を求めている人は老人だけでなく若者にもたくさんいます。
 古楽は「開かれた耳」を持った人にのみ、親密に語りかけてくるデリケートな音楽です。精緻な和声の調和や、空間に交錯する音のしめやかな響きを楽しむ音楽です。現代の音楽に忘れ去られたそういう手作りの素朴な人間味を持った音楽に、若い人たちも耳を傾けてほしいし、また21世紀が、そういった音楽にも貴重な価値を見いだすことのできる社会であってほしいと願っています。


左から音楽監督の有田正広、外国から招聘したワルター・ファン・ハウヴェ、セバスティアン・マルク(リコーダー)、パウル・ドンブレヒト(オーボエ)、ロベール・コーネン(チェンバロ)の諸氏

◆ワルター・ファン・ハウヴェ(Walter van Hauwe、リコーダー)
 オランダに生まれ、デン・ハーグ王立音楽院でフランス・ブリュッヘン氏にリコーダーを師事。ブリユッヘン氏、ケース・ブッケ氏とともにアンサンブル「サワー・クリーム」を創始、オランダにおける古楽運動のパイオニアとして活躍した。その後も「クァドロ・オトテール」等、ソリスト、アンサンブル奏者として国際的に活動している。第3回おぐに古楽音楽祭には、佐藤豊彦氏らとともに「リトルコンソート・アムステルダム」のメンバーとして参加している。第7回福岡古楽音楽祭にはソリストとして出演し、妙技を披露した。また最近では、サイトウ・キネン・オーケストラを指揮してブランデンブルグ協奏曲全曲を演奏するなど、話題を呼んでいる。アムステルダム・スヴェーリンク音楽院教授。

◆セバスチャン・マルク(Sebastien Marq、リコーダー)
フランスで音楽を学んだ後、セバスチャン・マルクはアムステルダムのスヴェーリンク音楽院でマリク・ミッセン、ケース・ブッケ、ワルター・ファン・ハウベに師事、1985年に演奏家ディプロマを得た。1984年には、ブルージュの国際古楽コンクールにおいて、ルイ・ランデ・コンソートで第1位に入賞。彼はパリ近郊に住み、著名な古楽合奏団と共演するとともに、ヨーロッパを始め世界各地で演奏活動を行っている。ソロのレコーディングにはピエール・アンタイとのテレマン、バッハのトリオ、ファン・エイクの「笛の楽園」とのヴィヴァルディのコンチェルトなどがある。レザール・フロリサンのメンバーでもあり、またマーク・ミンコフスキー、トン・コープマン、クリストフ・ルセとも共演している。教育、即興演奏、指揮にも興味を持ち、ハーグ王立音楽院で教えるほか、フランス、オランダ、イスラエル、ドイツ、日本でのマスターコースにも招かれている。

◆パウル・ドンブレヒト(Paul Dombrecht、オーボエ)
 1948年、ベルギー生まれのオーボエ奏者、指揮者。初期の頃からヴィーラント・クイケン、ロベール・コーネン氏らフランドルの古楽派の人たちと共に活動し、多数のレコーディングも行っている。また1989年にはバロックオーケストラ「イル・フォンダメントIL FONDAMENTO」を組織して、その音楽監督、指揮者を務め、世界各地で演奏を行うとともにJ.S.バッハの「ヨハネ受難曲」、ヘンデルの「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」、テレマンやヴィヴァルディのオーボエ協奏曲集など多数のCDをパッサカリアというレーベルから発売している。彼はブリュッセル王立音楽院の教授を務め、またスペイン・イタリア等各地のマスタークラスの講師を務めている。

◆ロベール・コーネン(Robert Kohnen、 チェンバロ)
1932年ベルギー生まれの名チェンバリスト、オルガニスト。メヘレンとブリュッセルの音楽院でオルガンを学ぶ。チェンバロ奏法は独学でマスター。1958年アラリウス・アンサンブルの創立メンバーで、レオンハルト、ブリュッヘン、ヤコブスなどと協力して、今日の古楽の隆盛を築き上げた巨匠の一人である。とくにクイケン兄弟のアンサンブルやラ・プティット・バンドの有力メンバーとして活躍し、日本でもその精妙な演奏は大きな感動を呼んだ。特にその通奏低音奏法の美しさは高く評価されている。現在ブリュッセル王立音楽院の教授。日本からの留学生も多く、これまでに有田千代子氏をはじめ多くの優れたチェンバロ奏者を育てた。