さんま、さんま、さんま 苦いか 塩つぱいか
「秋刀魚の歌」佐藤春夫

秋刀魚の歌
あはれ
秋風よ
情〔こころ〕あらば伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉〔ゆふげ〕に ひとり
さんまを食〔くら〕ひて
思ひにふける と。

さんま、さんま
そが上に青き蜜柑の酸〔す〕をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみてなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児〔こ〕は
小さき箸〔はし〕をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸〔はら〕をくれむと言ふにあらずや。

あはれ
秋風よ
汝〔なれ〕こそは見つらめ
世のつねならぬかの団欒〔まどゐ〕を。
いかに
秋風よ
いとせめて
証〔あかし〕せよ かの一ときの団欒ゆめに非〔あら〕ずと。

あはれ
秋風よ
情あらば伝へてよ、
夫を失はざりし妻と
父を失はざりし幼児〔おさなご〕とに伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。

さんま、さんま
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。

佐藤春夫

明治25年〜昭和39年。
和歌山県に生まれる。中学時代より文学に傾倒。慶應大学中退。雑誌「三田文学」「すばる」などに詩を発表。その後、数々の小説や詩集などを発表。耽美主義作家のひとり。主な作品は、「田園の憂鬱」「都会の憂鬱」「晶子曼荼羅」「殉情詩集」など。
和歌山県新宮市には、「佐藤春夫記念館」があり、なんと「秋刀魚の歌」の額があるのだそうです。是非行って拝見してみたいと思います。


しょっぱいについて

こんなに、盛り上がるとは思っても見ませんでした。
本来、この作品で取り上げられるべき争点は、上の全文を読む限り、ほかの所にあるような気もしますが、
ウチの掲示板で盛り上がった事は、「しょっぱい」という言葉についてでした。
しかし、なかなか、楽しい、そして新しい発見のある意見交換でしたね。
(一部修正)
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管理人(東京都)
「しょっぱい」は、塩辛いものを表現する言葉で使うものです。
例えば、塩を入れすぎたおつけもの、塩をふりすぎた秋刀魚などです。
「酸っぱい」とは、酸味が強いこと、例えば、レモン、かぼす、お酢などです。
地方によって違うのですね!
私の知り合いは九州の方なのですが、しょっぱいことを「辛い」といいます。
私にとって、「辛い」は、唐辛子や獅子唐、豆板醤のような風味のことです。
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くっちゃんさん(奈良県・大阪府)
私自身は奈良県出身で現在大阪府在住なのですが、
「しょっぱい」は塩辛いとき、
「すっぱい」は酸味が強いとき、
「からい」は唐辛子やカレーのようなスパイシー風味のときやしょうゆをかけ過ぎたときなどに使います。
管理人さんとわりと同じ使い方ですね。
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ぐみさん(三重県)
普段、塩で辛いことを
「塩辛い」「しょっからい」「しおはい」と言うので、
「しょっぱい」はちょっと驚きでした。
関東方面で言うのでしょうか?
皆さんは「しょっぱい」って言いますか?
しょうゆ味で辛いときは、
「ただがらい」とか「だだがらい」といっています。
「すっぱい」は「すっぱい」もしくは「すい」とも言います。
「この梅干し すいなぁ。」って感じで使います。
「からい」は管理人さんと同じで唐辛子やカレーなどの辛さをいいます。
大阪や京都などの関西地区では「しおからい」と言うと思うのですが、
くっちゃん のように奈良出身大阪在住の方でも「しょっぱい」だと仰っているので、もしかして、「しおからい」「しょっからい」「しおはい」などは、三重県伊賀地域独特の方言なのかなぁと思っています。
古語で「しほはゆし」と言う言葉があります。
意味は塩けが多い。しょっぱい。となっております。(旺文社古語辞典より)
これが「しおはい」となり「しょっぱい」と変化したのだと思います。
(佐賀・出雲・天草地方の方言では「しおはい」と言う言葉が残っているらしいです。)
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ほのかぁさんさん(北海道・福岡県)
私は、元々北海道で、札幌なんですが、向こうは「しょっぱい」でした。
嫁に来た先が、西の果て九州は福岡、こちらでは「からい」といいます。
「辛い」ものも、「塩辛い」ものも、すべて「からい」と表現します。
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けいさん(愛知県)
「しょっぱい」は塩辛いもののことをさします。
もちろんこの言葉を使うことがありますが、だいたいを「からい」で言ってる気がします。
塩辛い時、しょうゆの味が濃い時、カレーなどの香辛料のからさなんかです。
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いちごさん(愛知県)
みなさんとおなじようにしょうゆなどは「しょっぱい」
酢などは「すっぱい」
「からい」は唐辛子や大根おろしなどです。
わたしもけいさんのように「しょっぱい」もののことを「辛い」ということもあります。
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うりやさん(愛知県)
「しょっぱい」「しょっからい」「しおからい」は使います。
みそやしょうゆの辛さではなく、もちろん唐辛子などの香辛料系でもなく、純粋に塩味が過剰なときに使うような気がします。
涙と海の水はやっぱり「しょっぱい」が一番しっくり来る表現かなぁ。
「すっぱい」は、梅干、酢の物、レモンなど酸性のものにつかいます。
舌を丸めて口をすぼめるようなときの味。
「からい」は、カラシ、唐辛子などがきついとき、みそ、醤油などの塩分が濃いときに使います。塩辛いのも含まれます。
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ほか文献・サイトをいくつか調べました結果、次のことがわかりました。
塩味が強いことを
西日本では「からい」といい、東日本では「しょっぱい」という。
中部地方では、その両方が存在し、また、二つの言葉を合わせた「塩辛い」ということばも使われる。

つまり
西日本では
「さんま、さんま、さんま苦いか からいのか。」
東日本では
「さんま、さんま、さんま苦いか 塩つぱいか。」
とでもなるのでしょうか。

作者の佐藤春夫は和歌山県出身。となると、この法則が当てはまらないことになってしまいます。
しかし、中学卒業後は上京しておりますので、そういったことから「塩つぱい」となっているのではないでしょうか。
佐藤春夫氏も、まさか、こんなことが話題になるとは思わなかったでしょうね。

西日本と東日本の、言葉の違いはほかにもありますが、「存在する」「居る」ことを
西日本では「おる」といい、東日本では「いる」という。
というものもありました。

なかなか興味深い結果となりました。掲示板で意見を下さった皆さん、ありがとうございました。
また、日本語について、語り合いましょうね!

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