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1977 夏・記憶に残されたウエストコースト旅日記
Chapter 10
フレンドリーなフュージョン・ナイト
Best Wishes From Larry Carlton!

 体調を崩したハンティントン・ビーチの翌日は、ぐっすり眠ったせいか午前9時には起きられるほど回復していたようです。若さというのはたいしたものです。風邪を引くと1週間も調子の悪さが続くという今の体力とは比べ物にならいほど、自己治癒力もあったのでしょう。
 この日は午後からハリウッドに出掛けたのですが、窓外に見る景色に僕が反応して喋ると、メンバーの誰かから「昨日はあんなにダウンしてたのに、すっかり元気じゃん」と呆れたように声をかけられたことも思い出します。

 この日のメインイベントは、ノースハリウッドのランカシャーブルバードにあった(今でもあるのでしょうか?)「donte's」というジャズクラブに出演するラリー・カールトンのライブを体験することでした。
 ライブが何時にスタートしたのかがノートに書いてないので定かではないのですが、かなり遅かったと思います。その日の夕食として選んだカールズ・ジュニアでは食事を済ませた後からも、コーヒーを飲みながら粘りに粘って時間をつぶしましたから。

 時間になり「donte's」の店内にはいると、席はものすごくステージに近いことが分かりました。編成はサンバーストのセミアコを抱えたラリー・カールトンに、ベース、キーボード、ドラムスのカルテット。ベースの人はクルセーダースのメンバーとのメモが残されています。
 ライブは軽快にスタートし、全編インストゥルメンタルで飛ばすラリー・カールトンに僕らは心身共に感動を覚えました。当時、フュージョンというよりカントリー系ロックにぞっこんだった僕ですらそうだったのですから、他のメンバーの興奮度たるや大変なものでした。

カラパナのセカンドアルバム ジャックスサーフボードのフリスビー
1回目に座ったシートから見たラリー・カールトン・バンド。この位置でも、かなり近く興奮しました。

 演奏が終わり、店外に出るとライブは2部構成になっていたことが分かり、僕らはすかさず2部のライブを見に来た人たちの列の最後尾に並びました。時間は深夜の12時を廻ろうとしていたときです。店の人が僕らの姿を見付けるや手招きをして、前回よりさらに近い席へと招いてくれました。感謝感激です。

 その席の近さは、その時に撮った写真が掲載されていますので、比較してもらえれば分かると思います。なにせ、席亭はラリー・カールトンが使っていたブギーのアンプの置き台に足をかけて聴いた記憶があるといいますから。きっと、日本からわざわざ来てくれたんだから、優しくしてあげなくちゃな、なんてお店の人が思ったのかも知れません。違うかも知れませんが、この感覚は、翌日に行ったジェリー・ジェフ・ウォーカーのライブに入るときに大いに役立つことになったのです。

 さて、それは次回のお話として、2回目のライブは、ラリー・カールトンもさらにのって飛ばしまくりました。途中、ブルースを演奏し、ラリー・カールトンがヴォーカルをとったくらいです。
そして、ラリーは「いま、何時なんだい?」と客席に言葉を投げかけます。誰かが「まだ9時だよ」と応えると、ラリーはすかさず「本当は1時45分だけど、ここでは9時さ」なんて応えて、ラストナンバーへとなだれ込みました。

2回目に座ったシートから見たラリー・カールトン・バンド。
かなり近い席だったことが分かると思います。大興奮でした。

 フレンドリーな夜は、これでは終わりませんでした。席を立つとラリー・カールトンがカウンターで飲み物を片手にリラックスしているではありませんか!僕らはミーハーにも、サインをもらおうと、ラリーの側まで恐る恐る行きました。
 僕にとってこういう行動は、今までの人生の中でこの日を含めて3回だけです。1回目はこのアメリカ旅行の前年に大学のイベントで来たシュガーベイブのバックステージで大貫妙子さんに、3回目は10年くらい後に仕事で会えたケニー・ロギンスにサインをもらった時でした。でも、この時が一番感動しました。

 なぜ?感動の理由は、ラリー・カールトンの対応にありました。大貫妙子さんもケニー・ロギンスもイヤな顔ひとつしませんでしたが、ラリーは僕らとの会話にトライしてくれたのです。
 その内容はこんな感じです。「今日は楽しんだかい?日本から来たの?どこだい?」「東京です」「五輪真弓って知っているかい?前に一緒にプレイしたことがあるんだよ」・・・僕らは英語が流ちょうでないことが前提にありますが、感動しまくりで、ただ「はい、はい」と応えていたような記憶があります。

 サインをした後にラリー・カールトンは、ひとりひとりと握手もしてくれました。とびきりの笑顔も添えて。とにもかくにも、最高の夜でした。メンバーの運転する車は、「donte's」を後にしてからベンチュラ・ハイウエイ、サンディエゴフリーウエイと走り、ホリディ・インを目指しました。僕ら全員が、とても温かで幸せな気持ちを抱えていたことは言うまでもありません。

to be continue
Buddy Kobayashi