前田憲男とウインドブレーカーズ
ライブ見学記

1999年のも暮れに押し詰まった12月某日・銀座スウィング、
前田憲男とウインドブレイカーズのライブに足を運んだ。
”トランペットの仕事人”のライブ現場での様子や仕事ぶりを少しでもご紹介できたら、と思う。
”本来、スタジオの仕事人”晋様の音にナマで触れ合う機会は非常に少なく貴重な機会である。

冒頭に触れたように、ナマ晋様を感じられる機会は非常に少ない。
どこかのコンサートのゲストなどでライブ出演される事はあるが、それらをいちいち把握することは不可能に近かったと思う。
今でこそ晋様ご自身のHPなどでそのスケジュールなどを知ることが出来るが、元々アーティスト名としての”数原晋”でライブ情報などを検索する事が無理な方なので苦労した物だった。
そんな中、晋様がレギュラーで、もう20年ほど続いているバンドが”前田憲男とウインドブレイカーズ”である。
ご存じピアニスト兼アレンジャーの前田憲男氏率いる正統派ジャズコンボである。
レパートリーも、往年のスタンダードは勿論、前田氏オリジナルの名曲たちも素晴らしい。
編成はDr.B.Gt.Pianoの4リズムに、Tp2.Tb1.Sax3という10人編成である。木管群はそれぞれFlなどへの持ち替えもある。
平均年齢は60近いのでは無いか(もしかしたら越えてるかも・・・?(*^_^*))。
すごいおっさん達の集団なのである。なんせ、晋様が最年少なのだから・・・!(今回のライブはTpに河東伸夫さんが入っていたため最年少ではなかったが)

さて、正統派ジャズコンボである。
味と渋さを求めて私は有楽町へ向かった(銀座スウィングは、銀座と名は付くが有楽町駅の方が便利である)。
いわゆるジャズクラブと呼ばれるお店で雰囲気はよろしい。が!よろしすぎる!!
私は訳あって一人きりで訪れたのだが、どう考えても一人で行くには寂しすぎる・・・。こう、何というか、年の頃なら60過ぎ、シルバーグレーのナイスミドル、お召し物も英国物で統一し、パイプの煙をくゆらせながらスコッチの水割りを傾けているような方ならば、一人でも絵になる(かな?)。わたしゃまだ20代の若造、銀座と言う地名に怯えながらいつも通りのジーパントレーナーという、どこから見てもお金持ちには見えない貧乏人。どうせなら、女性の一人や二人(一人でええがな)連れていれば、年に一度の大奮発デートかな?という感じに見えなくもないが、訳あって一人きり。
まあそれくらい(どれくらいだ?)、おしゃれで、お値段もそこそこの雰囲気がよろしいお店なのであった。

さて、これからスウィングに足を運ばれる方はご一読しておいて下さい。
やはり席は予約しておいた方がよいです。特にウインドブレイカーズなどの人気バンドの出演日は満席になる可能性が大です。
私もその点は抜かりがないので、数日前にお店に電話を入れてました。
「すみません、今度のウインドブレイカーズの予約を入れたいんですけど?」
「はい。会員番号をどうぞ」
「・・・?あ、あの会員番号てなモンは持っておらんのですが・・・?」
「会員で無い方はご予約が出来ないようになっております」
「あ、あ、そうですか・・・」ガチャン、ツーツーツー。
まあ、一人だし何とかなるだろうと思い、予約なしで当日強行突破を試みたのであった・・・。後半へ続く・・・。

店には開演30分前に着いた。店の前に数人が並んでいた。
しまった遅かったか、と思ったが、まあ一人だし何とかなるだろう、と再び思い店の真ん前まで行ってみた。
店の入り口には5〜6人が入場の手続き(そんな大した物では無いが、人数の確認やら予約の確認やら、上着を預けたり等)をしていたが、ほんの数メートル横におっさんが5人ほど居た。げ!メンバーや?!全く周囲にとけ込むほど違和感が無く日本屈指のミュージシャン達がそこに居る。勿論晋様も。
入り口がまだ混んでいたので、一旦そこを離れ晋様に挨拶をして、再び入り口に戻った。
人数を訊かれ、
「一人」と寂しく答えると・・・来た来た!
「ご予約は?」
「してません!」胸張って答えてやった。内心追い返されないかと冷や冷やしながら・・・。
すると、丸イスがいくつか並べられたキャンセル待ち席へご招待された。既に5〜6人予約をせずに来たお間抜けさん達が並んでおり、情けなさそうに小さな丸イスに身を預けている。もしかして、キャンセルが無い場合はこのお間抜けさん席になってしまうのか、とうろたえながらもとりあえずお間抜けさんの仲間入りを果たした。そして、ここでも出たのだ、禁断のあの言葉が!
「会員の方から先にお席へご案内致します」
お間抜けさんはお間抜けさんでも、会員ならば格が上らしい。一体どうすれば会員になれるというのだ。銀座という街のイメージが頭の中を縦横無尽に駆けめぐる。
高い年会費を払わされて、週末はとあるマンションの一室で仮面を付けてパーティにいそしむのか!(どんなイメージや・・・)
訊けば何のことはない。ボトルキープをすれば自動的に会員番号が与えられるらしかった。な〜んだ、そうかそうかそれならそうと・・・ん?まさか、そのボトルに落とし穴があるのでは無いか?あくまでも田舎者の私は恐怖を感じずにはいられなかったが、元来酒飲みなので、奮発してバーボンのボトルを入れることに決めた。勿論値段を確認してからね。
確か一番安いボトルだったと思う。6,000円くらいだった。な〜んだ、全然高くないじゃ〜ん、とうきうき。ま、まさか!氷が・・・もうええか、キリがない。私の陳腐なイメージ達は、幸か不幸か全くの当てはずれで、ごく普通のお店でありました。
さて、そうこうしてまんまと会員番号の勲章を手に入れた私は、格上のお間抜けさんになったわけであった。

先ほどの、これからスウィングに〜、の続きですが・・・
好き勝手書いてますが、まったくそんなことはないです。会員になるにはボトルのキープ、しかも初めての場合でも事前に電話でボトルを入れる旨を伝えれば予約は出来ます(電話したときに教えろっちゅうねん)。
会員になるとチャージの料金が安くなります。会員同伴の方もいくらか安くなります。お酒が飲める方ならば、一般のチャージ料金を払う事や予約が出来ることを考えればボトルを入れる価値はおおいにあると思います。予約の際には追加500円で好きな席をオーダーすることも出来ます。
詳しくは銀座スウィングまで・・・。銀座スウィングHP

さて、見事に会員番号を手に入れた私はようやく席に案内された。場所で言うと、店の奥の奥。バンドを真左側から見る位置。店のレイアウトは真ん中にステージがあり、ステージを囲むようにコの字型のカウンター、それをまた取り囲むようにボックス席がコの字型、しかしカウンターと同じ向きではなくに並ぶ。カウンターをコの字型とすると「岡の中身無し字型(こんなんで解るのかな?)」に並んでいた。
四人掛けのテーブルを真ん中で仕切った左側に、中年男性と妙齢の女性の、不倫か、と思えるようなカップル。その右側が私、例によって一人。右側にも四人掛けのテーブルがあり、そこは30代後半(以上)と思われる女性二人、一見すると銀座のクラブのチイママてな感じ。決してカタギの仕事じゃないな、という雰囲気を醸し出している。妙な二人連れ二組に挟まれた私は戦々恐々であった。

そうこうしている内に本番の時間が近づいて来た。
ウェイターがバーボンのボトルとグラス・アイスとメニューを持ってきた。私としては酒だけあれば十分なのだが、どうも何かを頼んで欲しい雰囲気がありありと感じられる。とりあえず何かを考える不利をしながら、ウェイターには一旦引き下がって貰った。
ウインドブレイカーズの面々が、先ほど我々客が入ってきた店の入り口から入ってくる。この辺のある意味アットホームな感じもジャズクラブならでは、と言う感じである。
おもむろに一曲目が始まる。
ライブハウスやコンサート会場の音響に慣れているせいか、音量は小さく感じられる。が、演奏中でも同伴者(この時は訳あって一人であったが)と会話が出来るのは好感が持てる。BGMと言うほど小さくはなく、耳に心地よい音量だと言っておこう。
一曲目が終わると、前田憲男氏がMCをする。ビデオで観た雰囲気と全く同じ感じで、ぼそぼそと喋る方であった。そのくせ、そのぼそぼそ喋る端々に細かいギャグが散りばめられていて面白い。
「リクエストカードを出して下さい、プログラムを立てるのに非常に役立ちます」とのこと。
実際、事前にプログラムは立てていないであろうと思われる。
私も、ウインドブレイカーズといえば晋様ソロの「I Remember Clliford」が聴きたくてしょうがなかったので、書こうかなあと思っていたのだが、あっさり3曲目あたりで演られてしまった。
次々に古き良きスタンダードがウインドブレイカーズの面々によって演じられる。味や渋さは若者では決して出ない物であった。流石である。

演奏中でも会話が出来る音量と前に書いたが、実際私の両隣はよく喋った。
不倫のおっさんの方はそのパートナーに「あのトランペットの人・・・横溝正史かなんかのTVドラマで駐在さんの役をやらしたら似合うだろうね」などと言っている。晋様のことである。むちゃくちゃ言いよるなあ、と思いながらも、そういえばそうかなあ、と一人でにやけていた。
チイママ二人連れの方は、一人がウインドブレイカーズマニアらしく、もう一人を無理矢理連れてきたって感じであった。一生懸命ナマのジャズを聴ける幸せを説明しているのだが、興奮していて空回りしていた。
あれよあれよの間に1ステージ目(1時間)が終わった。30分の休憩である。

店の照明がふっと明るくなる。本番中は暗かったため、一人でも別にどうって事はないのだが、明るくなるとやはり目立ってしまう。
さあ、次のステージまでの30分どうやって過ごせばいいのだ・・・と途方に暮れていたところ、晋様がこちらに向かって歩いてこられた。そしておもむろに私の前の席に座ったのであった。
色々喋って居る内に、両隣の不倫とチイママも会話に入ってきた。不倫のおっさんはどんな気持ちで「駐在さん」と話していたのだろう?
最初、チイママの方は晋様が出演者だと言うことに気付かず「1ステージ目、終わりましたよ」などと訳のわからないことを抜かしておられた。わかっとるっちゅうねん。

そして2ステージ目。1ステージ目同様、渋いジャズを堪能し終了。
二回目の休憩にはいる。またも晋様が来られて雑談が始まる。
チイママは私に向かって「あら?さっき出演してました?」とさらに訳のわからないことを抜かす。この日の2番ラッパは河東伸夫氏で衣装がチェックのシャツであった。たまたま私もチェックのシャツだったのだが、わしゃずっとここにおったやないかあ!

最後の3ステージ目。この日は年末と言うことでスタートの時間が早かった。必然的に終演の時間も早くなっている。時間がずれていただけなので、ステージの時間はいつもと変わらず堪能することが出来た。
たっぷり3時間、大人の雰囲気のジャズを楽しめるなんてなんと素晴らしいことであろう。
最後のステージが終わっても、晋様は私の席に来て下さり雑談をして下さった。
思えばなんと贅沢なライブだったのだろう。ステージ中は晋様の演奏を聴き、休憩中はその晋様と雑談。その雑談の中「こういうトコは一人で来るモンじゃないでしょ?(*^_^*)」と耳打ちして下さった。私も「そうですね。色々訳あって一人です(*^_^*)」と答えた。

さあ、お会計である。
金額から言えば12,000円ほどであった。まあ、高いと言えば高いが、ボトルを入れたこともありその半額はボトル代である。そしてウェイターのしつこい攻撃に根負けして注文したパスタ(1,600円)とチャージ(3,000円程)と税金などを足せばそんなモンであろう。
次回からはとりあえずボトル代がかからないので半額以下になるだろう。
それに一人だから高かったのであって、2人以上で訪れた場合はそれほど行かない筈である。
誰かの6,000円くらいのコンサートに行ったと思えば十分お手頃なライブである。
本邦最高峰のミュージシャンたちが3時間まるまる演奏してくれるのだから・・・。

素晴らしい演奏に夢心地の私は、軽くなった財布を胸に、師走の街を帰ってゆくのであった。

後記
これ、ライブレポートかあ?(*^_^*)

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