栢孝文さんインタビューその4

麻雀ゲームとしてのMARU-JANという側面もあるわけじゃが、その一方でMARU-JANは「開発者側」の視点で捉えられることも多いわけじゃな。日本でも珍しいプロジェクトファイナス形式のスタイルとか、ベンチャーとしてのゲーム会社的なニュアンスじゃな。

わしらユーザーからすると、ゲームは楽しければいいやんか! となりがちで製作者側を意識することはあまりないんじゃが、少し裏側についても教えていただきたい。どうして、通常の会社形式ではなく、プロジェクトファイナンス形式を選択したりしたんじゃろう? 何が問題じゃったんじゃろうか?
…これはさっき答えたのとかぶるんですけど、通常の会社で資金集めると、基本的に─まぁ「貧乏人」が独立した場合は最初は手元資金がないので、外部からの資金が株式という形で調達される。そうすると、会社の支配権というか、コントロールが、基本的に外部の会社なり人に委ねられてしまう。そうすると、自分たちの理想を追求するというのはやっぱり難しいんじゃないか、と。
いわゆる「もの言う株主」ってやつだな・・・
もう一つは、プロジェクトファイナンスということを最初からやることによって、会社がそういうプロジェクト毎の採算性というものを明確化することができて、かつリスクとリターンというのを外部の資金で調節することが出来る。

これで一体何が出来るかというと、会社が新しい企画に、会社の支配権を取られることなくチャレンジする土壌が出来る。

これはコンテンツ制作に於いて非常に重要な点で、ハリウッドの映画作りなんかはまさにそういった手法を使ってやっている。脚本にお金を集めたりすることで、制作費200億円みたいなものを作ることが出来るようになる。

現状の日本のやり方だと、制作費200億円のコンテンツを作るというのはまず無理。これはハリウッドが制作力があるということだけではなく、資金調達の仕組みを持っているということ。そこに注目してプロジェクトファイナンスという形式を取りました。


一般論として、日本は何かにチャレンジできる土壌が整っていないといわれておるんじゃよ。これは栢君が言うように、資金的な面でスタートをきれないという部分もそうじゃし、一方では失敗した時のリスクの話にもなるんじゃな。

日本では一度失敗したりすると、一人でリスクを背負ったり「連帯保証人」みたいな制度のおかげで、家族まで巻き込んで再起不能になりがちじゃが、アメリカなんかでは、失敗しても再スタートできる雰囲気や土壌があったりするわけじゃよ。それは、結果は失敗でも過程を評価したりとか、栢君が言うように、外部の資金で行うことで、失敗した時のリスクも分散できる。

ただし、人のお金を預かるという点で、その責任は非常に重要なものであるのは、言うまでもないんじゃが。


【連帯保証人】
借りた本人とほぼ同等の返済義務を負う。貸す側も連帯保証人を求めるケースも多い。連帯保証人になるメリットはなく、多くは親族などを頼ることになる。日本以外にはない制度みたいですね。
MARU-JANはシグナルトークという会社にではなくて、MARU-JANというプロジェクトに対してお金を出してもらう手法をとったわけですネ。
MARU-JAN開発に関わる中で苦労した話とかってありますか? アイデアとか、どういうところから生まれてくるんでしょうか?
苦労した話!?これはもう山のようにあるけど…

苦労した話は、何度も「もう作るのやめよう」みたいな話が…、大体3回くらいありました(苦笑)。最初お金がない時と、バグが取れない時と、会員が集まらない時と。

まぁ最初の方は全然会員が集まってくれなくて、その…半年くらい、1万人超えるまで全く儲からなかったので、その辺りでやめよう、と言う話も出ました。
プロジェクト・ファイナンスを「企画ごとにお金を出してもらう」というと、人によっては、何か虫のいい、安易な話に聞こえてしまうかもしれん。

やはり、資金を調達する場面、MARU-JAN成長の過程では、かなり苦労されたと思うんじゃが・・・。どうじゃろうか?
苦労したのは─もちろん最初の資金調達は苦労して、大体800人くらいの人に会って、大体20人の人に投資してもらうということをやりました。800人回るのに1年くらいかかって、その間は資金調達できなくて、いってしまうとお金が無くて苦労した、と。

2つめのバグについては、やっぱり麻雀ゲームって非常に複雑なので、基本的なバグを取るだけでもとても大変だった。

もう1つは、通常のパソコンゲーム的な作り方で作ると、実は麻雀ゲーム自体がそんなに面白くなくて、やっぱり牌の混ざり具合をちゃんと─サーバー上で牌を混ぜるということをやったことで、面白くなったということですかね。

アイデアはどこから生まれてくるかというかっていうのは、実際の麻雀とか、日常生活とか、普段他の趣味とかから、ですかね。


麻雀ゲーム1つとってみても、いろいろな面で苦労があるのね・・・。
たぶん、何かに挑戦したりする人間、それは起業でもスポーツでもなんでもいい。絶対に「もうやめよう」とか、諦めが入る心境になるはずだよな。話を聞けば、800人に会ったらしいしよ。

そんな時にあんたを支えたものはなんだ?自分自身のメンツや意地か? それとも「夢」みたいな話なのか? それが家族や友人でも、金であってもいい。

その時に、あんたを奮い立たせたものは、いったいなんなんだ? なんでそんな苦労してまでやるんだ?
う〜ん。麻雀、、、かな?(笑)
あとは、自分のためではなく、人のために頑張りますね。

まずは、スタッフがいて、仲間が増えて、仲間のために頑張りますよね、そしてゲームが完成する。

ゲームがお客様に届くようになったら、次はお客様のために頑張るようになる。病気の中、遊んでくれるお客様もいらっしゃいますし、、、。

自分のためなら、「こんなもんでよいかな」って思ってしまいますね。自分のためだと、限界がありますが、クリエーターの理想郷のためにやる、正しい事をやる。「仁義」とでも言いますか、人としての道というか、仕事をしているのだから、正しい事をやって、結果は出るはずだという信念はありますね。
ある種の使命感みたいなものは、多かれ少なかれ、起業家と呼ばれる人は持ってたりするもんじゃな。わしにはマネできんが・・・。

バージョンアップを繰り返して様々な変化が起きているMARU-JANじゃが、今後の方向性や可能性について、少し教えてもらえんかな?
リアルさを追及していくと、どっかで頭打ちになったりしないのかしら?
方向性については…、結局麻雀そのものの面白さは変わらないので、いかにイベントや実力評価の仕組みを入れていくかというところですね。

実力の評価というのも結構おかしいですけど、去年は「段位」というものを入れて、皆さんが「雀力」に応じての「段位」を取っていけるという仕組みを入れたのと、もう一つは、今年はちょっと面白いバージョンの発表を控えています。間もなくですのでご期待下さい。これはネットでしかできないもので、更に気軽に参加できるものを考えています。

リアルさの追求もまぁ今後ご期待下さいというか、頭打ちは…多分ないのかな。考えてることやりたいことはまだまだたくさんあるので、全然実際の麻雀を目指してやっていく限りは終わりがないと思ってます。

バージョンアップは今後も定期的に、確実にやっていく予定なんで、ご期待下さい。
では、インタビューも大詰めじゃよ。



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