精神論(流れ論、デジタル、オカルト)

最後の項目になるが、いちおう精神論の話もしておこうか。

運を操ったりする技ですか?

麻雀の世界は偶然に支配されているので、長らく、そういう運とかツキ、流れとかをコントロールしようみたいな考え方が伝統としてあったんじゃな。そこには「美学」みたいなものがあって「ひっかけリーチは卑怯」みたいな精神の美意識の問題でもあったんじゃよ。

ちょうど、柔道や剣道がスポーツであると同時に、精神修行のような武道の要素を持っていることに近いかもしれん。

見えないものを操る、自分のツキや運の状況を見極めてコントロールしようとするのが「オカルト」と呼ばれる麻雀のスタイルなんじゃな。

ポンやチーをすることで流れを変えるとかですね?

ツキがある人は連続であがるような「流れ論」とか有名な話じゃな。雀聖、阿佐田哲也さんがいろいろと書いているので紹介してこう。

Aクラス麻雀 (双葉文庫) 麻雀を点棒のやり取りだとしか思えない人は永遠に弱者である。麻雀は運のやりとりなのだ。点棒の流通は誰の目にも見える。が、運の流通は見えにくい。だから多くの人が無視する

阿佐田哲也 ~Aクラス麻雀 (双葉文庫)より~

阿佐田哲也さんは色川武大の名前で直木賞を受賞しておる文学者でもある。非常に名言みたいなものが多いんじゃな。とても表現力のあった人じゃと思う。

阿佐田哲也勝負語録―ここ一番に強くなる (サンマーク文庫) 一生ツキ続ける男はいない。一生ツカない男もいない。誰にだって風の替わり目がある。そのきっかけを確実にキャッチし、ツキを一杯に使う、それがギャンブラーの腕なんだ

阿佐田哲也 ~ぼうふら漂遊記 (新潮文庫) より~

さすが文学者ですね。言っていることが、なんかカッコイイですよ。

批判的に言うならば、書いてることは本当なの?「ツキを使う」ってどうするの?という話になるかもしれん。言っていることはかっこよくとも、それが正しいものであるかどうか証明する手段がないんじゃな。

ただし、阿佐田さん自身は賭博のイメージしかなかった麻雀を、戦略を使って知的なパズルゲームにしようと努力された人なんじゃよな。

今でこそ、古臭いオカルト麻雀みたいな感じになるが、当時としてはおそらく非常に「デジタル」な感じじゃったのは書いておこう。阿佐田さん以前の麻雀は本当にサイコロ博打と同レベルのゲームだったわけじゃよ。

まあ、一昔前のプロの書く戦術も、こういう考え方が蔓延してたわな。運やツキという言葉を使わずとも「牌勢」や「状態」なんて言葉で、自分の運の状況などを前提に戦略を立てとった。さすがに今の時代に読むと古臭いし言葉どおりに信じろと言われても無理があるかもしれん。

デジタルはそういう流れとか偶然に影響されない麻雀なんですよね?

運の影響はもちろんあるんじゃが、それをコントロールするのは不可能なんじゃな。ついているからといって、次回も配られる牌が良い保証はどこにもないわけじゃし。未来を予測する行為がそもそも無理があるわけじゃな。

「もう負けるかもしれない…」「また振込むかもしれない」と弱気になると、配られてくる牌やツモする牌まで悪くなるのか?っていえば、それは関係ないじゃろう。

良い行いをすれば、良いことがおこるみたいな考え方は日本人の伝統的な宗教観も関係してくるかと思うので、けっこう根が深いかもしれん。

これはとつげき東北くんの言葉を紹介しておこう。


科学する麻雀 (講談社現代新書)彼らがただの「偶然」をそうとは認めず、さまざまな概念(「ヒキ」「勢い」「鋭い読み」など)を駆使し、ときには嘘をついてまで「必然」であると説明しようとあがいていたことを。

世の中には「それは偶然である」という説明以上に正しい説明ができないものがいくらでも存在する。

とつげき東北 -科学する麻雀 (講談社現代新書) より-

インタビューでもおっしゃってましたね。

他に大阪商業大学でギャンブル学をやっている谷岡一郎くんなんかも有名じゃな。

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これは麻雀の本ではないが、よくある「宝くじ必勝法」とか、嘘くさいギャンブル必勝法をバッサリ切り捨てておるよ。難しい本ではなく、痛快なので競馬、宝くじなどそういうのが好きな人は一度は読むといいかもしれん。回数が多くなるほど理論値に近づく「大数の法則」なども詳しく解説されておる。

最近は統計とか、科学を駆使したものが多いですねよね。

野球の世界でも少し前に映画化もされて話題になった『マネー・ボール 』で話題を集めた セイバーメトリクスみたいなものが注目されておるわな。ただ、古い価値観の人が、こういうのを素直に受け入れられない気持ちはわからんでもない。

幸運や不幸が訪れると人間は不安にもなるし、不安を解消するために何かに理由を求めたくなる気持ちは、まあ理解できんこともない。ここでは安易に結論は出さないが、さまざまなものを勉強してみるといいじゃろう。

長くやっていれば、もう嫌になるぐらいつかない時もあるじゃろう。リーチをしてもツモしない。相手にリーチで追いかけられると一発でつかまされてロンされる。どれだけ上手い人でも不調に陥って、連続で4位を引き続ける。しかも、別に悪い打ち方をしているわけでもないのにじゃよ。

そうなった時にやけくそになって、ムチャクチャな打ち方をしているようでは甘いわけじゃよ。ぐっと我慢して打つ。やけくそになっているようでは、まだまだメンタル面が弱いわけじゃな。麻雀はそういうゲームなんじゃよな。

どんな状況になっても平常心みたいなのが必要なんですね。

ついている、ついていないはあるかもしれんが、運を最大限に活かす場所を作ることは人間の努力でできるわけじゃよ。別に毎日、お祈りしろとか、ジンクスを守れとかではない。

自分の腕が未熟なことを棚にあげて「運」に責任をなすりつけたがる連中もおる。

たとえば、「スジ」「壁」といった技術を使い、牌効率を学び、相手の捨牌をよく観察していれば、自分の今から捨てる牌が十分に危険牌であることがわかるはずなのに、技術を知らないためにロンされてしまう。

必要のないリーチをかけて自ら危険な状態に陥っているかもしれん。あたり牌が1枚しか残ってないような薄いリーチをかけてるかもしれん。そんな状況であがれなくて「今日はツイてないなぁ~」なんて言う。あるいは、ここのネット麻雀は勝てないように牌が操作されてるんじゃないかと疑ったりする。

それって、「運」「ツキ」「流れ」「牌が操作されてる」とか以前の問題じゃよ。

ただ単純に麻雀が下手なんじゃよ!!

横断歩道で待っていて、道路を走る車に自分から飛び込んで怪我をして、「車に跳ねられるなんて、今日はツイてないなぁ~」なんて言うのと一緒じゃな。運が悪いとか、流れが悪かったとか、牌が操作されてるとか、地獄モードに入ってるとかじゃないじゃろう? ちゃんと赤信号のサインが出ているのじゃよ。それを見落としている方が悪いんじゃ!!ハァハァ…

博士、落ち着いてください…

ただ、運を最大限に生かす場所を用意することは、誰にでも練習すればできる。むしろ、技術を知っていれば、運まかせの初心者に負けることはそうはないと思うぞ。

人知を尽くして天命を待て!じゃよ。

運がいいとか、ついてないとか、神に祈るのは、できるかぎりのことをやった後でもいいんじゃ。

己の敵はおのれじゃ!





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