フローティングミノーとシンキングミノー
フローティングミノーとシンキングミノー
<なぜシンキングにこだわるのか>
なぜS.A.V.Aがシンキングミノーにこだわるのか?
それは、銀山湖という特別な フィールドで生まれ進歩して来たからである。
銀山湖には湖底から生える立ち木が無数に有り、岩魚達がその立ち木をテリトリーにしている。今では殆ど枝が無くなり幹になってしまっているが、以前は船底が引っかかる位の水面直下まで立ち木が茂っていた。その枝の下や中に岩魚が付いているのである。
その魚にいかにアピールするかが問題である。木を想像すると解るが、根元の方には枝が無いのである。フローティングでこのポイントにレッドコアでトレースさせても、ラインが弛んで浮き上がってしまうと、根掛かりしてしまう。
こういうポイントを真っ直ぐ走り抜けられるシチュエーションはそうそうないものである。そこで、シンキングの登場である。レッドコアでトレースして木の根元にミノーを誘導し、操船によって沈み込ませて喰わせるのである。
銀山湖は人造の発電用のダムである。自ずと発電量が増加すれば水位は下がる。一日で1m以上減水するのは珍しい事ではない。発電量が増えれば増える程対流し、下層の冷水が表面に吹き上がり、表面に冷水塊が出現する。
つまり、東京が暑くなればなるほど銀山湖の表面には冷水塊が出現する事になる。そのエリアでは、表層に魚が出て補食するのである。このエリアではレッドコアなど必要無い。ピンポイントで表層で魚が出るのである。
この事から、通年を通して両サイドにレッドコア、後ろに表層の3本出しスタイルが有効となる。ここでシンキングミノーの登場である。両サイドがシンキング、真後ろにフローティングをセットすれば、ターンした際に後ろで絡む事は無い。両サイドにフローティングをセットしてしまうと、浮かび上がって表層のラインと絡んでしまう。
トローリングは通常レッドコアを使用する。鉛の芯を持つレッドコアでミノーを沈み込ませていると勘違いしている事が多い。
例えば、10mのレンジを想像してみよう。仮にレッドコアの先端が10mまで沈み込んでいるとする。その先にリーダーが付いているのである。先端に自己潜行能力が10mに満たないミノーがセットされている場合、リーダーが長ければ長い程浮かび上がるのである。
ところが、先端に自己潜行能力が10mのミノーがセットされていれば、その棚をトレースする事が出来る。またミノーの潜行能力が高ければレッドコアは太い物を使用しなくても、長く出さなくても良い事になる。レッドコアの事については詳しく後述する事にする。
これらの事を考えると、レッドコアで棚をトレースさせるにはシンキングミノーが圧倒的に有利である事がわかる。
フローティングミノーで深い所に根掛かりしている事からミノーが潜っていると思いがちだが、レッドコアの最深部が引っ掛かり伝って行き、ミノーが根掛かりしてしまっている場合が多い。
レッドコアの役割
レッドコアラインの役目(S.A.V.Aミノー使用の場合)
<レッドコアはラインなのか錘りなのか?>
最初レッドコアのスプールを手に持つと、ズシッと重く感じる。感じるのではなく、実際ナイロン等のスプールしか手にした事の無い人には、非常に重く感じる。
最初の感想は”こんなのを100ydも出したら何メーター潜るんだ?”とたいがいの人は想像するだろう。しかし、実際に引いてみると、ラインの受ける抵抗で以外と浮かび上がる事に気付く。
レッドコアは水中では先端に行く程傾斜角が緩やかになっている。また出せば出す程抵抗が増える。通常は、この先にリーダーを付けミノーをセットする。
S.A.V.Aのシンキングミノーは1-4colで最大潜行能力4-5m、4-7colで最大潜行能力7-8mのシンキング仕様なので、ラインの出す量で棚が決まるのではなく、ミノーのタイプを使い分ける事でトローリングレンジが決定する。
ここまでだと、まるでレッドコアなど必要無く、PEなどの通しで十分な様に思う。しかし、ここからがレッドコアの重要な役割なのである。
レッドコアの中心に鉛が入っている事で、早く引いてもなかなか表面に浮き上がる事は無く、また水を持たせれば、ある程度船の軌跡をミノーにトレースさせる事が出来る。船をターンさせ内側のラインを沈み込ませる事も出来るし、銀山湖などのゴミの多い場所では浮き上がりを防止する役目も果たす。
ただし、太いラインではタックルが重くなってしまったり、魚とやりとりしている際には魚の動きに柔軟に対応する事は出来ない。
では、ラインは12lbの様に細ければ良いのかという事になるが、銀山湖では春先に大量の流木や落ち葉、氷の塊が表面だけでなく水中に浮遊している場合がある。この様な時は15lbが良いと思う。ある程度傷に強く強度も有るので安心して使用する事が出来る。最近のリールはドラグが良いので、魚と引っぱり合って切れる事はまず無いので、その他のトラブル要因を考えなければならない。
ここまで書いた内容は、あくまでS.A.V.Aミノーのシンキングを使った場合の理論である。レッドコアは沈める道具では無く、船の軌跡をトレースする為の手段。なるべく細く短くする事で、ミノーの潜行能力を阻害せず、出来るだけ忠実に、船の軌跡をトレースさせる為に使用する。
ただし、解禁直後の魚のプレシャーが高く表面しか見ていない時は、あえてリーダーを長くしフローティングミノーをセットして、レッドコアを長く出さなければならない状況もある事を最後に付け加えておく。
ルアーリトリーバー
ルアーリトリーバー活用術
<百発百中ルアーリトリーバ活用法>
トローリングで避けられないのが根掛かりである。金属のプレスされた安価なスプーンであれば、ロストしてもさほど痛くは無いのだが、高価なハンドメイドで、それも過去に実績が有るミノーはどんな事をしても回収したいものである。
特に銀山湖では、立ち木に掛かってしまったり、岩盤の表面に這う様にのびた枝(通称悪魔の手)などに、ミノーだけでなくラインまで絡んでしまう事が多い。
そこで活躍するのがルアーリトリーバーである。色々な市販品を使用したが、殆どの商品がキャスティングミノー程度の大きさにしか対応していないため、ビックミノーには効果がない。大概はラインにぐちゃぐちゃに絡み、回収するには至らない。これは、ビックミノーには大きいリップが付いている為で、チェーンタイプの物だとチェーンがフックに届くのを阻害し、リングタイプの物だとリングに引っ掛かってしまう。
やはり、トータルでビックミノーのトローリングをプロデュースするには、必要不可欠のアイテムであるというコンセプトでオリジナルのリトリーバーを開発した。他の種類のリトリーバーの良い所を集約させた一品である。これを開発してからというもの、どんなに複雑に絡み合った根掛かりでも99%は回収する事が出来る様になった。
では、残る1%は何かというと、それはムーチングが木に巻き付けて切ったままにしたロープが水中にワカメの様に漂っているのに絡んでしまった時である。ムーチングが嫌われる原因の一つがこれである。ムーチングは悪いとは言わないが、最低限のマナーは守って欲しいものである。
実際の使い方を説明するとしよう。まず準備する物は、本体とアイテム、ロープである。付属しているロープは、直ぐに使える事とコストを考え、実際は余り実践向きではない。一番実践的な物は、2mm程度の太さで水に浮く素材のクレモナ編みの強度の有る物である。これを、レッドコアの空きスプールや浮く素材で出来たスプールに巻いておく。くれぐれもこれ以上細い物は使用しない様にする。PEなどの素材で細いものを使用すると、そのロープ自体が木に絡み付いて肝心のリトリーバーが根掛かってしまい、回収不能となってしまうからだ。また浮く素材を使うのは、リトリーバーの真上を示すインジケーターとして使えるのと、回収時に船が流された場合、湖に放り込む事が出来るからである。
リングの中にラインをセットし、ロープを巻いたスプールを船の床に置いたままリトリ−バーを水中に投入する。足下でスプールが勝手に回転しロープが出て行く。浮く素材のロープを使用すれば、必要以上にロープは出ないし弛みも出ない。
この際、できるだけ根掛かりしたコースをトレースする様にバックにてラインを巻き取りながら、根掛かりの箇所まで戻る。根掛りの箇所を通り過ぎない様に注意ししなければからない。
リトリ−バーがルアーに到達したら、ラインとリトリ−バーのロープを交互にたるませたり張ったりする。今まで錘りの重さだけを感じていたリトリ−バーのロープが急に重くなったら、ラインは張ったまま、リトリ−バーのロープだけを引く。
この時、一緒にラインを引っ張ってしまうとラインだけが切れてしまう可能性が有るので注意する。リトリーバーを引っ張り軽くなってもミノーが外れない場合は、再度ラインとリトリ−バーのロープを交互にたるませたり張ったりするのを繰り返す。単純な根掛かりだとリング部にフックが引っ掛かって上がって来る。
厄介なのはミノーが掛かった際ラインにテンションが加わると、そのテンションで立ち木の枝の下にラインが入ってしまった状況である。
この様な場合は、枝をくぐってしまった場所から先にリトリーバーが入って行かず、そのままでは回収する事が出来ない。そこで、くぐってしまった箇所とミノーの間のラインを拾い上げる必要がある。
ここで登場するのがリトリーバーの下部にセット出来る錨針である。単純に言うと、錨針でこの箇所のラインを引っ掛けて船上にあげ、改めてリトリーバーをその箇所にセットすればミノーにリトリーバーを迎えに行かせる事が出来る。
言うのは簡単だが、実際は途中のラインを引き上げる際にリールから糸を出したり、拾い上げた際にリーダーをレッドコアの継ぎ目で切って、その端部にペットボトルなどの浮子になる物を結びつけ、ラインが沈んで行かない様にしたりと色々とやらなければならない事は有るが、この方法を覚えればかなりの確実で回収する事が出来る。
春先などで、浅い棚で根掛かりをすると、船上から見えている様な根掛かりは、もう一種類のアイテムのチェーンをセットして直接つり上げる事も出来る。
ここまで習得すればもう怖い物は無い。なかなか習得するのは難しいと思うが、チャレンジする価値は有ると思う。
アイテムを最初からセットすると、ラインに絡んで回収不能となるので、必ず必要に応じてセットする。
余談では有るが、一緒に行った仲間はリーダーを切ってペットボトルを結びつけて目印にしておき、後で私に回収を依頼するといった裏技を使う人もいた。