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第13回福岡古楽音楽祭 プレイベント
ヴォーカル・アンサンブル カペラ演奏会
2011年7月 24日 西南学院大学チャペル
当日の写真を掲示しています。
「古楽」における声楽
                    有田正広(音楽監督)

 この度は福岡古楽音楽祭においでいただき、まことにありがとうございます。この音楽祭は、このところテーマを楽器別シリーズということにして、第11回は管楽器、12回は弦楽器、今回は声楽、そして次回は「予告」のところにありますように、「鍵盤楽器」をとりあげ、これでシリーズは完結する予定です。
 私自身が器楽奏者だということもあって、これまでの音楽祭では声楽や合唱を曲の一部にとりいれたことはあっても、こんな風に声楽曲中心で音楽祭を企画したのは初めてのことです。歴史的に見ると声楽は西洋音楽の中で大きなジャンルを占めてきました。特に近代音楽に比べて、「古楽」ではその比重は非常に大きなものがあります。
 今回の音楽祭には、これまで長年合唱をやってこられたたくさんの方々が、オープニングコンサートの合唱団や、シュルト-イェンセン氏の合唱セミナーに参加されました。そういった方々の中には合唱団で、長年バロックやルネサンス音楽だけでなく、いろいろなジャンルの音楽を歌ってこられた人がたくさんいます。声楽は楽器を使わないので、「古楽」と「モダン音楽」の違いは歌唱法の違いのみということになります。器楽の場合より両者の垣根はずっと低いわけです。器楽で長年「古楽」をやってこられた方は、楽器に対する愛着やこだわりが大きいようで、その点雰囲気の違いを感じます。
 この古楽音楽祭も「おぐに音楽祭」の時代から数えると20数年の歴史を持っています。その間に、「古楽」に対する社会的な認知度は随分高まり、一般の方々にはそれが「古楽」であることをほとんど意識しないで聴いていただけるほどになりました。「モダン楽器」奏者の間にも、古い時代の音楽はその時代の奏法を取り入れないといけないという思想が行き渡りつつあるようです。声楽の場合には、「古楽」と「モダン」の区別意識はさらに少なく、昔から多くの方々が両者を使い分けています。今回の音楽祭を通じて、ふだんこの古楽音楽祭に関心が少なかった合唱関係の方々が、「古楽」に対して新しい認識を持たれることを期待しています。なにしろ西洋音楽においては、バロック時代以前に作られた声楽曲は、それ以後に比べると比較にならないくらい膨大です。声楽や合唱を志す方々にとって、バロック以前の音楽は、まさに「宝の山」なのです。

地方文化とお祭り

中里 隆(18世紀音楽祭協会会長) 

 東日本大震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。・・・ といった挨拶から始まるほど、この音楽祭もいつの間にか全国規模の催しになってしまいした。震災の影響でしょうか、確かに今年は東北・北海道からの参加がほとんどなかったのは、たいへん残念なことでした。最初の頃は、北海道から申し込みがあると「よくぞ遠方から」と感激したものです。
 日本でも江戸時代までは、それぞれの地域に大名がいて、今よりずっと地方自治が認められていたので、それぞれの地域に文化がありました。特に九州は、大陸との窓口として古くから開けたところでしたから、各地域に独自の文化がありました。最近では九州地域も福岡市への一極化傾向が見られますが、これはたとえば、北海道が札幌に集中するのとは様相が異なります。九州各県はそれなりの長い歴史的な基盤と、独自の自負を持っているのです。
 それにしても、福岡市は地方都市の中では珍しく、未だに人口が増加しています。大学生の数が多く、特に若い女性の人口比率が非常に高いのが特徴だそうです。そういう意味ではたいへん活気のある町ですが、「ミニ東京化」が著しいのも否めません。文化的にもあらゆるフィールドで東京への中央集権化が著しい昨今です。東京にないその地方独特のものを創り出すことが大きな課題でしょう。
 その中にあって、「祭り」は地方色を維持し、全国から人を集めるのにかなり成功している行事のひとつです。博多の場合には、5月の「どんたく」や7月の「祇園山笠」には100万人規模の人が全国から集まります。私がいる唐津や長崎の「くんち」も全国的に有名です。「祭り」といえば、九州地域はクラシック系の「音楽祭」が盛んなところです。福岡古楽音楽祭はそれほど意気込んで始めたわけでもありませんが、最近ではそのひとつとして紹介していただいているようです。
 しかし普通の「祭り」と違って、音楽祭におけるコンサートの演奏家は、ほとんど東京や外国などから呼んでいます。それをわざわざ福岡まで来て聴いていただくわけです。地方の音楽祭に遠来のお客様を迎えるためには、どうしてもプラスアルファの魅力が必要です。おぐに古楽音楽祭の場合にはそれが「豊かな自然と温泉」でしたが、福岡古楽音楽祭の場合、「食文化」がそのひとつとして挙げられるかもしれません。博多ラーメンだけが福岡の食文化ではありません。福岡においでになった機会に、ぜひじっくりと味の探訪を試みられることをお勧めいたします。

音楽祭に参加した演奏家によって下記の無料コンサートが開催されました。
ミュージック☆ファクトリー バロックアンサンブル 〜古楽で午後のひと時を〜

「ミュージック☆ファクトリー」は、アクロス福岡と九州大学大学院芦川研究室の学生さんとが連携して月に一度、アクロス福岡のコミュニケーションエリアで開催している音楽会です。企画・運営は研究室の学生さんたちの手で行われています。今回は、音楽祭に出演するオーボエ・ファゴット奏者4名により、ルイ王朝時代のいわゆる「オーボエバンド」の演奏をお楽しみください。

9月14日(水)13:30-14:00 入場無料
アクロス福岡1階 コミュニケーションエリア
出演:三宮正満、尾崎温子、篠原由佳(オーボエ)、永谷陽子(ファゴット)
曲目:プレトリウス:「テレプシコーレ」より「ブレー」、リュリ:「町人貴族」より「マーチ」ほか

オーボエの祖先ショームのコンソートによるルネサンス音楽の演奏
(アクロス福岡 コミュニケーションエリアにて)

九州国立博物館ミュージアムコンサート
古楽器でつづるバロック 〜クラシック音楽の源流を体感しよう〜

ミュージアムコンサートは太宰府にある九州国立博物館の1階フロアで定期的に開かれている音楽会で、誰でも聴くことができます。現在オーケストラで使われている楽器が完全に今のような形になったのは20世紀のことです。例えば18世紀頃のフルートは木製で、リコーダーや篠笛のようにシンプルな指穴が7つあいているだけでしたし、ピアノという楽器が誕生したのも18世紀後期でそれまではチェンバロという楽器が代わりに使われていました。今回のコンサートではそんな18世紀の復元楽器を用いて宮廷文化が華やかかりしバロック時代の音楽を21世紀に再現いたします。(チラシはクリックすると拡大します)

9月17日(土) 第1部 13:00-13:30  第2部 15:00-15:30
九州国立博物館1階ミュージアムホール
(博物館のチケットを買わなくても、無料で入場することができます)

出演者:前田りり子(フルート)、懸田貴嗣(バロックチェロ)、水野直子(チェンバロ)

第1部(13時から)
C.P.E.バッハ ハンブルグ・ソナタ
笛の歴史と世界の笛
J.S.バッハ  フルートソナタ ロ短調

第2部(15時から)
J.S.バッハ 管弦楽組曲第2番より「ポロネーズとバディネリ」
J.S.バッハ イタリア協奏曲 第1楽章
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲
M.ブラヴェ フルートソナタ

九州国立博物館へのリンク→ http://www.kyuhaku.jp/event/event_110819.html

芸術交流宅配便

芸術交流宅配便は福岡市文化芸術振興財団の主催により福岡市の小学校や公民館で開かれているローカルなコンサートで、公開と非公開の場合がありますが、今回のコンサートは博多地区の都心部にある4つの小学校が合併してできた博多小学校の新しい「表現の舞台」という施設で開催される地域共同の無料公開イベントです。バロックやルネサンス時代のフルートのスペシャリストとして知られる前田りり子さんと、チェンバロの水野直子さんの共演で、バロック時代の曲の他に、世界のいろいろな国の笛、西洋のいろいろな時代の笛など、楽しいお話を交えながらその実演を聴くことができる、たのしいトーク・コンサートです。

9月18日(日)11:00-12:30
博多小学校「表現の舞台」(福岡市博多区奈良屋町1番38号)
出演者:前田りり子(フルート)、水野直子(チェンバロ)

C.P.E.バッハ:ハンブルグ・ソナタ
世界の笛 お話と演奏 
 ・インドの笛(荒城の月),中国の笛(羊飼いの娘),篠笛(さくら)ほか
いろんな時代のヨーロッパの笛
 ・グリーンスリーブス 変奏曲 (ルネッサンスフルート)
 ・クープラン 恋の鶯 (ヴェルサイユ宮殿のフルート)
 ・J.S.バッハ シチリアーノ (バロックフルート)
 ・モーツァルト 魔笛 (クラシカルフルート)
 ・メンデルスゾーン 歌の翼に(ロマンティック・フルート)ほか
ブラヴェ:フルートソナタ ロ短調
J.S.バッハ:イタリアン協奏曲より
モンテクレール:コンセール 第2番
J.S.バッハ: フルートソナタ ロ短調より

博多小学校のしゃれた階段教室「表現の舞台」で、演奏といろいろな笛のパフォーマンスを演じる前田りり子さんと水野直子さん