2005

インターネットアルバム
大きな写真を準備しました。ご自由にダウンロードしてください。
写真撮影:蘇馬外二良・梅野 健

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日時

午 前

午 後

午 後

9月22日(木)

オープニング
盛時バロックの宴

交歓
パーティ

9月23日(金祝)

古楽セミナー
第1部

古楽コンサート
第1部

ハウベ
リコーダー
リサイタル

9月24日(土)

古楽セミナー
第2部

古楽セミナー
第3部

朝岡 聡
古楽講演会

バルトルド・クイケン/フルートリサイタル

9月25日(日)

古楽コンサート
第2部

フランス
バロック
コンサート

ヴィーラント&ロベール/デュオリサイタル

古楽器の展示と楽譜・CD等の即売

音楽祭前後のイベント

プレイベント
レクチャーコンサート「音楽と絵画」
2005年7月23日 あいれふホール

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朝岡 聡の第7回福岡古楽音楽祭レポート
古楽情報誌「アントレ」に掲載された朝岡 聡氏の第7回福岡古楽音楽祭レポートの全文を掲載しています。

「古楽」の源流を作った人々

 現在のオランダとベルギーにあたるネーデルランド/フランドル地方は、ヨーロッパではイタリアやフランスに負けないほど古くから、高い文化を持ったところでした。絵画を例にとれば、ルネサンス期にこの地域で活動したファン・アイク兄弟やメムリンクといった画家たちの技量は、フィレンツェのルネサンス画家たちと比較しても決してひけを取りません。バロック時代になると、レンブラント、ルーペンス、フェルメールなどヨーロッパでも最高レベルの画家がこの地から輩出しています。それと同様に、音楽のレベルも常に高い水準にありました。
 20世紀の半ばに生まれた「古楽」がどのような源から発し、成長していったかは、単純には言えませんが、少なくともネーデルランド/フランドルの音楽家が一つの大きな流れを作ってきたことは誰もが認めるところでしょう。ヴィーラント、シギスバルト、バルトルドのクイケン3兄弟は、その中にあって、それぞれの楽器において常に最も指導的な地位を占めてきましたし、チェンバロのロベール・コーネンもまた常に彼等と共に、美しい通奏低音を奏でてきました。
 クイケン兄弟の音楽の最も重要な支柱は、おそらくグスタフ・レオンハルトでした。この理知的で貴族的な孤高のチェンバリストが創造した音楽は、当初一般には受け入れがたいところがあったようですが、クイケン兄弟をはじめとする若い世代の演奏家の支持を受け、同時に彼等はレオンハルトがかかげた理念を様々な形で発展させてゆきました。
 レオンハルトと並んで、ネーデルランド/フランドル楽派のもうひとりの雄に、リコーダー奏者・指揮者のフランス・ブリュッヘンがいます。今回招いたワルター・ファン・ハウヴェは、ケース・ブッケとともに、ブリュッヘンの直系の弟子で、若い頃から前衛的とも言えるような極めて新鮮な音楽を作り出してきました。
 今回、シギスバルト・クイケンが日程の都合で参加できないのは、はなはだ残念ですが、40年にわたって追求し続けたネーデルランド/フランドル派古楽の奥義を、彼等はこの音楽祭で余すところなく披露してくれるでしょう。
(上の写真は、前列左よりグスタフ・レオンハルト、シギスバルト・クイケン。後列左よりバルトルド・クイケン、ロベール・コーネン、ヴィーラント・クイケン)

あの感動を分かち合いたい

有田正広(音楽監督)

 第7回福岡古楽音楽祭にお出でいただき、まことにありがとうございます。
 今回オランダやベルギーからお招きしたヴィーラント・クイケン、バルトルド・クイケン、ロベール・コーネン、ワルター・ファン・ハウヴェといった方々は、いずれも若い頃「古楽」の創成期にかかわり、その新しい流れを長年にわたって育んできた人たちです。その演奏はたくさんのCDに記録され、世界中の人々に深い感銘を与えてきました。彼らが創造した音楽は、「古楽」というジャンルに留まらず、音楽そのもののとらえ方に革新をもたらし、音楽の歴史を変えてきました。
 私は学生時代に、レオンハルトやブリュッヘンやクイケン兄弟たちのレコードを聴いて、それまで持っていた音楽観を根底から覆されるほど大きな衝撃を受けました。「これこそ私が求めていた音楽だ!」という熱い思いを胸に秘めて、私は今からおよそ30年前、彼らに学ぶためにオランダに留学したのです。そして彼らの真摯な探求心と温かい人柄に触れて、その後の私の人生に大きな影響をもたらしました。
 音楽は、国や言葉の壁を越えて、人の心を動かす大きな力を持っています。おそらくこの音楽祭に参加された方々のなかにも、これまでにクイケン兄弟などの演奏に触れ、私と同様に目からうろこが落ちるような経験をした方が多いのではないかと思います。
 「Ah〜, Baroque, Baroque, Baroque !」と題した今回の音楽祭で、私は彼等がバロック音楽の真髄とも言えるあのすばらしい響きを福岡にもたらしてくれるものと確信しています。そして、その感動を音楽祭に参加された全員の方々と分かち合うことができれば、音楽監督としてこの上ない幸せです。

古楽にどっぷり

18世紀音楽祭協会会長 中里 隆

昔、「おぐに古楽音楽祭」をやっていた小国町は阿蘇の山麓にあり、付近にはたくさんのひなびた温泉がありました。3日間の音楽祭は木魂館という温泉付きの研修施設で行われましたので、大部分の参加者は3日間泊まりがけでした。
 音楽祭というのは、日本でも西洋でも二つのタイプがあるようです。一つは主に夏に交通の不便な保養地などで開かれる音楽祭で、参加者の多くは期間中泊まりがけで、どっぷり音楽に浸りながら、交流を深めることに意義があるような催しです。もう一つは「都会型音楽祭」とでも言うべきタイプで、地元の一般の人や観光客を相手に、基本的には一連のコンサートの集約で成り立っている音楽祭です。「おぐに古楽音楽祭」は小規模ながら、都会型音楽祭では得られない魅力がありました。
 「おぐに」から「福岡」に移行する際、「おぐにの良さが失われてしまうのではないか」という危惧の声をしばしば耳にしました。われわれも、地元近くの古楽ファンはともかく、東京からコンサートを聴くために、わざわざ高い旅費を出して福岡まで来てもらうのは難しかろうと思っていました。それで、はじめの頃は主に地元の方々にターゲットを絞って、ともかく一度でもいいからコンサートを聴きに来て、古楽を好きになってもらうように努めました。
 しかし、音楽祭の質の高さが徐々に全国の古楽ファンにも知られるようになってきたせいでしょうか、回を追うごとに遠方からの参加が確実に増えてきています。その核になっているのが、古楽セミナーの受講者で、これは当初から遠来の参加者が多い部門でした。わざわざ遠くから福岡までおいでになる方々の多くは、コンサートの方もみっちりと聴いて頂けます。昨年から全コンサートの「通し券」というのを発売し始めましたが、今回は古楽セミナー受講の申し込み枠がほとんど遠来の方々で、早々と満杯になると同時に、この「通し券」の売れ行きが好調でした。遠いところではヨーロッパやオーストラリアから「通し券」を注文された方もいます。
 「通し券」を買われた方は、4日間で5回のコンサートを聴かれ、その間の様々な行事に参加されるわけで、まさに古楽にどっぷり浸って頂けるものと思います。参加者全体の数から言えばそう多いわけではありませんが、そういう熱烈な古楽愛好家が全国から集まって、音楽祭を通してしっかりと古楽コミュニティを支えてもらえるのは、まことにありがたいことです。ここに至って、福岡古楽音楽祭も本当に全国規模の音楽祭になってきたという思いがしています。

【音楽監督】
◆有田 正広(Masahiro Arita、フルート)

モダンフルートを故林りり子氏に師事。1972年に桐朋学園大学を主席で卒業、第40回NHK毎日音楽コンクールのフルート部門で第1位。75年にブリュッセル王立音楽院を、77年にはデン・ハーグ王立音楽院をいずれも主席で卒業。1975年ブルージュ国際音楽コンクールで第1位を獲得する。帰国後はわが国におけるバロック・フルートの第一人者として国際的に活躍するだけでなく、古楽器界のリーダーとして各種演奏団体を主宰、桐朋学園大学古楽器科の講師として若手演奏家の育成に努めている。多数のCDをリリースし、レコード・アカデミー賞、文化庁芸術作品賞などを受賞。1989年にわが国で最初の本格的なオリジナル楽器による交響楽団「東京バッハ・モーツアルト・オーケストラ」を創設、福岡・東京で結成記念公演を行い絶賛された。その功績により、90年サントリー音楽賞を受賞した。「おぐに古楽音楽祭(1990-1998)」「福岡古楽音楽祭(1999-)」の音楽監督を務めている。昭和音楽大学フルート科教授、桐朋学園古楽器科講師。

【ヨーロッパからの招聘者】
◆バルトルド・クイケン (Barthold Kuijken、フルート)

長兄のヴィーラント(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、次兄のシギスヴァルト(ヴァイオリン)とともに、ベルギー生まれのクイケン3兄弟の名は古楽復興の先駆者として、世界中に鳴り響いている。ほぼ独学でバロック・フルートの演奏方法を開発し、その奥義を極めた。優美でエスプリに満ちた暖かい音色と、豊かで自然な音楽性は他の追従を許さない。文字通り、バロック・フルートでは世界の第1人者である。ソロ・アンサンブルのレコードが多数発売されているが、最近ではジキスヴァルドの主催するラ・プティット・バンドとともに来日、各地で名演奏を披露した。デン・ハーグとブリュッセルの音楽大学で後進の指導にあたり、有田正広氏をはじめとして、我が国からの留学生も多数薫陶を受けている。

◆ワルター・ファン・ハウヴェ(Walter van Hauwe、リコーダー)
オランダに生まれ、ハーグ王立音楽院でフランス・ブリュッヘン氏にリコーダーを師事。ブリユッヘン氏、ケース・ブッケ氏とともにアンサンブル「サワー・クリーム」を創始、その後も「クァドロ・オトテール」等、ソリスト、アンサンブル奏者として国際的に活動している。第3回おぐに古楽音楽祭には、佐藤豊彦氏らとともに「リトルコンソート・アムステルダム」のメンバーとして参加している。アムステルダム・スヴェーリンク音楽院教授。

◆ヴィーラント・クイケン(Wieland Kuijken、ヴィオラ・ダ・ガンバ/チェロ)
1938年ブリュッセル郊外のディルベークに生まれる。15才でチェロを始め、1960年ブリュッセル音楽院で最高ディプロマをとる。ヴィオラ・ダ・ガンバは独習で、64年にはアラリウス・アンサンブルに参加。70年代以来、オランダのグスタフ・レオンハルト、フランス・ブリュッヘン、ベルギーの弟たちジキスヴァルト、バルトルド、およびロベール・コーネンらと様々なアンサンブルを組み、演奏会・レコーディングと精力的な演奏活動を続け、いわゆる「フランドル派古楽」の礎を築いた。細部への学究的な配慮と、高い水準の音楽性を結合させたその演奏により、名実ともに世界のガンバ界の第1人者となっている。72年よりハーグ王立音楽院講師、75年からはブリュッセル音楽院の教授となる。我が国でも教えを受けた弟子は多い。

◆ロベール・コーネン(Robert Kohnen、 チェンバロ)
1932年ベルギー生まれの名チェンバリスト、オルガニスト。メヘレンとブリュッセルの音楽院でオルガンを学ぶ。チェンバロ奏法は独学でマスター。1958年アラリウス・アンサンブルの創立メンバーで、レオンハルト、ブリュッヘン、ヤコブスなどと協力して、今日の古楽の隆盛を築き上げた巨匠の一人である。とくにクイケン兄弟のアンサンブルやラ・プティット・バンドの有力メンバーとして活躍し、日本でもその精妙な演奏は大きな感動を呼んだ。特にその通奏低音奏法の美しさは高く評価されている。現在ブリュッセル王立音楽院の教授。日本からの留学生も多く、これまでに有田千代子氏をはじめ多くの優れたチェンバロ奏者を育てた。

◆寺神戸 亮(Ryo Terakado、ヴァイオリン)
桐朋学園大学に学び、在学中の83年日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第3位入賞、84年同大学を首席で卒業すると同時に東京フィルハーモニー交響楽団にコンサートマスターとして入団、大学在学中より興味を抱いていたオリジナル楽器によるバロック演奏に専心するため86年に同団を退団、オランダのデン・ハーグ王立音楽院に留学、シギスヴァルト・クイケンに師事。同院在学中から演奏活動を始め、<レ・ザール・フロリサン><シャペル・ロワイヤル><コレギウム・ヴォカーレ>などヨーロッパを代表する古楽器アンサンブルのコンサートマスターを歴任、現在は<ラ・プティット・バンド>のコンサートマスターを務めている。最近ではソリストとしての活躍が目覚ましく、欧州での<ラ・プティット・バンド>や<レ・ザール・フロリサン>との数々のコンチェルト演奏やリサイタル、日本では<バッハ・コレギウム・ジャパン>や<東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ>との協奏曲で素晴らしい独奏を披露している。レコーディングも活発で、デンオン・アリアーレ・レーベルからルクレール《ヴァイオリン・ソナタ集》ヘンデル、ビーバーなどの録音を次々にリリースし、《コレッリ:ヴァイオリン・ソナタ集》は1995年レコード・アカデミー賞〔音楽史部門〕・《モーツァルト:協奏交響曲ほか》は96年同賞〔協奏曲部門〕を受賞している。

◆佐藤 豊彦 (Toyohiko Satoh、リュート)
立教大学在学中に皆川達夫氏に学ぶ。1968年に渡欧、スイスのバーゼル・スコラ・カントルムにて、オイゲン・ドンボワ氏に師事する。1970年に世界ではじめてバロック・リュートのソロLPを録音してデビュー。文化庁芸術祭優秀賞・レコードアカデミー賞等を受賞。以来多数のレコード・CDを発売している。アンサンブル「アルバ・ムジカ・きょう」のリーダー。ヨーロッパを中心にソロ、アンサンブル、教育、作曲等の音楽活動を行っている。73年よりオランダのデン・ハーグ王立音楽院教授を勤める。2000年には「リュート&アーリーギター・ソサエティジャパン」を発足、30年以上にもなるヨーロッパでの経験を日本の古楽界の発展に貢献すべく、活動の重点を日本へ移しつつある。