ソフィオ・アルモニコ初CD発売中!
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発売元:REGULUS RGCD-1041

魅惑のルネサンス・フルート
〜優しい眼差し〜

演奏:ルネサンス・フルート 前田りり子・菊池かなえ・菅きよみ・国枝俊太郎
   ルネサンス・リュート 佐藤亜紀子  打楽器 中村会子

レコード芸術 準特選

 ルネサンス時代の美と調和に満たされた音楽を、世界でも珍しいルネサンス・フルートを用いて、日本で初録音。優雅・流麗・繊細・精緻で魅惑的ないにしえの響きが、今甦る。

 収録曲:ジョスカン・デ・プレ、イザーク、パレストリーナ、オブレヒト、セルミジなど全31曲。

 録音 2015年9月8-18日北の大地美術館(中札内美術村、北海道)
ディレクター 花井哲郎  レコーディングエンジニア 吉岡永二

  魅惑のルネサンス・フルート                前田りり子

◆出会い

 私が初めてルネサンス・フルートに出会ったのは、初めてヨーロッパの講習会に参加した18歳の時でした。イタリアの小さな村の教会で聴いたルネサンス音楽は、私の人生を変えるほどの衝撃でした。こんなにも美しく心に響く世界があったのかと大興奮し、早速先生から楽器を借りて見よう見まねで吹いてみたものの、その時は全く思ったような演奏をすることはできませんでした。

 それから4、5年経って、イタリアのヴェローナに現存するオリジナルのルネサンス・フルートを試奏する機会に恵まれた私は、第2の衝撃を受けます。軽く吹いた途端楽器ではなく部屋全体が鳴ったのです。澄んで透明な響きがあらゆる角度から降り注ぎ、暖かく私の全身を包み込みました。それはまるで魔法の笛が起こした奇跡のようでした。そして気が付いたのです。それまで私が持っていたコピーの楽器はルネサンス・フルートではなくおもちゃだったと。

◆忘れられたフルート

 ルネサンス音楽は、バロック以降の音楽と比べると認知度が低く、愛好する人の数も未だあまり多くありません。あれだけ素晴らしい美術や文学の花が咲き乱れたルネサンス時代に音楽だけがつまらなかったはずがありません。しかし残念なことに、瞬間の芸術である音楽は美術のように当時の姿をそのまま留めておくことができません。楽譜は残っていても、それをどのように再現するかという知識が一度完全に廃れてしまったのです。それでも60年代の古楽復興運動以来、ルネサンス音楽がどのように演奏されていたのかの研究は著しく進み、現在、合唱、ガンバやリコーダー、リュート界ではルネサンス音楽はなくてはならないレパートリーとなっています。

 それに比べてルネサンス時代のフルート研究は未だ遅々として進んでいません。ルネサンス時代にフルートが演奏されていなかったからでしょうか。いいえ、違います。例えば、イギリスのヘンリー8世の宮廷ではリコーダーとフルートがそれぞれ74本ずつ所蔵されており、シュトゥットガルトの市庁舎ではリコーダー48本に対してなんと220本ものフルートが所蔵されていたそうです。また当時の絵画や著述からもルネサンス・フルートが広く一般に使われていたことが分かります。18世紀で姿を消してしまうガンバやリコーダー奏者たちのレパートリーの発掘や興味が、より古いルネサンス、中世の方へ広がっていったのに対して、18世紀以降ますます人気が高まっていったフルートでは、古楽復興の興味がより新しい19世紀へと広がったため、ルネサンス・フルートの存在は長い間忘れ去られてきました。

◆卵が先か鶏が先か

 興味のある人が少ないから楽器の研究が進まず、いい楽器がないからいい演奏ができず、いい演奏がないから興味のある人が増えない。20世紀のルネサンス・フルートはそんな状態でした。私自身コピーの楽器をいろいろ買って遊んだり、大学卒論のテーマをルネサンス・フルートにして研究の真似事をしたりもしていましたが、何をどうすればよいのか分からず悶々とした日々を送っていました。

 流れが変わってきたのは、クラシックやロマン派のオリジナル楽器によるオーケストラ設立ラッシュが一段落した90年代終わり頃からです。19世紀までの見通しがかなりよくなってくると、古楽フルート奏者の中には、より古いルネサンス音楽に興味を持つ人が少しずつ増えていきました。21世紀になると質の高い奏者と楽器製作家が共同で開発し、オリジナルと同じとまでは行きませんが、音楽を楽しむ、そして芸術を創造するにふさわしい楽器がようやく手に入るようになりました。

◆ソフィオ・アルモニコ誕生

 オランダ留学から帰国してしばらくは日々の生活をこなすだけで精一杯だった私ですが、生活が落ち着いてくると再びもぞもぞと私の中のルネサンス熱がうごめき始めました。でも何かしたいという焦燥感はあるものの、何をすればよいのかわからず、一人でいろいろ試しながら悶々とした日々を過ごすことまた数年。これではダメだ、私一人の力ではどうにもならないと、フルート仲間を巻き込んで無理を承知で、兎にも角にも日本で初のルネサンス・フルート・コンソートのコンサートを決行したのが2008年12月。ソフィオ・アルモニコの誕生です。

 メンバーそれぞれはバロックの分野、モダン・フルートの分野で研鑽を積んだ実力者でしたが、ルネサンスについては全員ずぶの素人。暗中模索の時期が長く続きました。楽器指定が全くない時代のこと、ルネサンス・フルートに関して残されている資料はあまりにもごくわずかで、さあやるぞといっても何を吹けばいいのか、ルネサンス・フルートに何ができるのか、何がふさわしいのか、どう吹けばいいのか全くわかりませんでした。それでも時間をかければ何とかなるもので、声楽家、リュート・オルガン・ガンバ奏者、音楽学者などルネサンス分野の先駆者たちからのたくさんの助言をいただきながら、片端から図書館の楽譜を借りてきては吹いていくうちに、次第にやりやすい旋法や音域、曲想、音程感覚、歌詞のリズムや抑揚、アーティキュレーション、バランスなどが何となく見えてきました。

◆コンソートの喜び

 フルート・コンソートの醍醐味はなんといっても調和の世界です。主旋律と伴奏が明確な調性音楽と違い、対位法で書かれたルネサンス音楽に主旋律はなく、絶えず変わり続けるお互いの関係性があるだけです。お互いが独立し、一見てんでばらばらに好き勝手なことを言っているように聞こえつつも実は絶妙なバランスで影響しあっており、最終的には一つの調和を作り上げます。自分の意志で生きていると思っていても、人は人間関係の中で助け合い影響し合いながら生きているのであり、それが神の作った調和の世界、もしくは宇宙の摂理なのかもしれないという実感を、コンソートを演奏していると感じます。まだ未熟な点も多々あるかと思いますが、まずは日本初、世界でもまだ珍しいフルート・コンソートの響きを体感いただき、こんな世界もあったのかと実感していただければ幸いです。

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