logo
(C)2004 minori
  <<<OtherWorksのTOPへもどる
<<<TOPへもどる
イメージイラスト
「はるのあしおと」オープニングについて:
「BITTERSWEET FOOLS」「Wind」に続き、minoriのヒット作「はるのあしおと」(2004年7月発売)のオープニングムービーの制作を担当させていただきました。映像としてのクオリティやインパクトを求めると同時に、ゲーム本編と密接にリンクした演出を制作のコンセプトとしました。
制作時期は「雲のむこう、約束の場所」と重なっており、ワークフローや撮影手法などで「はるのあしおと」を「雲のむこう〜」のテストケースとして考えつつ作業を行うことも出来ました。自分自身で原作するオリジナル長編アニメに対して、minori作品のオープニングは尺も短く自由度も高いために、個人的にはちょうど良いエクササイズになっています。逆にオリジナル作品のノウハウをminori作品に転用することも出来ますし、ゲームのオープニング制作というのは仕事の良いアクセントとなるんです。
ゲームの詳細はminoriのHPをご覧下さい。

■メイキング
以下、オープニングの制作過程を簡単にご紹介します。minoriのHPからはトレイラーや体験版がダウンロード出来るようです。

【絵コンテと完成映像/コンセプト】
a)コンテ b)コンテ c)コンテ d)コンテ
■映像コンセプト
<本編の物語以前、樹と少女たちの、互いにまだ気づかぬうちの出会いを描く。一方の樹は都会と決別して田舎へ向かい、一方の少女たちは変わらぬ日常を送っている。それぞれ、互いが未来において大切な存在となることをまだ知らずにいるが、その予兆は既に映像中に充ち満ちている。知らずにすれ違っていた駅のホーム、運命の赤い糸のように風に舞っていたリボン、気づかぬうちに同じ道を歩いていたし、同じ景色を眺めていた。樹の手に舞ってきた秋の綿毛は少女たちの手からこぼれたものだし、少女が無邪気に口に入れたナツハゼの実は樹がそっと触れたものだった。木造の校舎から聞こえてくる歌声に、樹は足を止めていたこともある。アパートの下でふと足を止めた少女は、樹が寝転がって聞いていたラジオの曲に耳を澄ませていた。これから出会うことになる大切な人の気配に、それぞれが気づかぬうちに触れていた。>

上に挙げたのは、オープニング制作のコンセプトとして書いたテキストからの抜粋です。実際に仕上がった映像とはディティールは異なりますが、ともかく、「はるのあしおと」という予兆に満ちたタイトルに相応しいオープニング映像を目指しました。どこまで分業にするか未確定のままスタートした「Wind」OPとは異なり、今回は作画は亜細亜堂、美術はゆうろさんとこんちきくんという豪華な体制が決まっていたので、彼らに具体的なイメージを伝えるべくある程度描き込んで彩色した絵コンテ・動画コンテを用意しました。絵コンテの拡大をラフレイアウトとして、以降の作業を分業していきました。
作業の順序としては、 (1)新海によるコンセプト・字コンテ→(2)天門さんによる作曲→(3)絵コンテ・動画コンテ→(3’)平行して監督の酒井氏による作詞→(4)亜細亜堂との作画打ち合わせ・ゆうろさんこんちきくんとの美術打ち合わせ→(5)FTPを介して新海がデータを受け取り、撮影・仕上げという過程になっています。なお、制作進行をminoriの結城さんが務めてくれたために、クオリティを保っての進行は非常にスムーズでした。

【3DCGも地味に使ってます】
a)ロケハン写真 b)3Dレイアウト c)合成画面 d)3Dレイヤーで
■公園のレイアウトに3DCGを使用
「はるのあしおと」OPでの3DCGの使い方は、今までの他のminori作品のOPに比べると非常に地味ですが(電車も葉も鳥も、地道に作画で描いてもらっています)、3DCGを全く使用していないわけではありません。例えばOP中程の公園のカットでは、きつめのパースに合わせてシーソーを動かすことが困難なために3DCGでシーソーの動きを含めたレイアウトを作成しています。
(a)は、参考用に実際のシーソーの動きをデジカメで録ってきた一コマ。
(b)は、公園のレイアウト用に作った3Dモデル。
(c)は完成直前の画面。トリミングやエフェクトを加える前の状態です。
■AfterEffectsの3Dレイヤーの使用
(d)は和の歩く俯瞰カット。ここでは、足元の地面と垂直に立っている柵を、AfterEffectsの3Dレイヤーで立体的に動かしています。ムービーをよーく見るとただのスライドじゃないのが分かる、という程度の効果しか出せなかったんですが(苦笑)。ちなみに、背景のスライドはエクスプレッションを記述して秒12コマ(秒24コマのムービーの半分のコマ数)に落としています。好みにもよりますが、滑らかすぎる3Dの動きはセルと馴染みにくい場合があると考えるからです。

【撮影(コンポジット)時の工夫いくつか】
a)悠のオリジナル b)完成画面 c)レンズフレア d)望遠レンズ
(a)キャラがアップになるカットでは、すべての輪郭線を個別に色トレスにしています。手間のかかる作業ですが、本作のようなキャラクター主体の映像ではそれだけの効果があった、と思っています。
(b)aの完成映像。ちなみに撮影はすべてAfterEffectsで行っています。スムージング(セルのギザギザの輪郭線を滑らかにする処理)には、Koji'sPluginsのsmoothを使用しています。
(c)おなじみのレンズフレア。インパクトを出すのに効果的で、かつ使い方も非常に簡易なソフトウェア処理です。それだけに工夫して使わないと、制作者的には恥ずかしい処理でもあります。このシーンでは、3重のレイヤーでフレアを個別にコントロールしています。
(d)静止画像では分かりにくいのですが、望遠レンズで撮影した空気の揺らぎを画面全体に加えています。余談ですが、「望遠レンズ」にしても「レンズフレア」にしても本来は実写での撮影に由来することであり、物理的なカメラの存在しない(手で描く)デジタルアニメーションにとっては必ずしも必要ではない要素です。架空のカメラを想定することでリアリティーを獲得したいという、お手軽な欲求だったり手段だったりもするんですよね。

a)
はしる
はしる
はしる
はしる
はしる
b)
カメラよぎる
カメラよぎる
カメラよぎる
カメラよぎる
カメラよぎる
c)
傘ひらく
傘ひらく
傘ひらく
傘ひらく
傘ひらく
【24fpsの映像】
「BSF」「Wind」のムービーは15fps(毎秒15フレーム)でしたが、「はるのあしおと」のムービーは24fps(毎秒24フレーム)で制作しています。2分弱の長さしかない本作のような短い映像では、全フレームにわたって細かなコントロールをしきることが可能ですし、それが短編の醍醐味でもあります。「はるのあしおと」オープニングは全2819フレーム、カメラやエフェクトをムービーの全長にわたって1フレーム単位で調整していきました。

(a)は画面奥に走っていく悠のカット。一瞬カメラが遅れて、悠の行く手を追ってパンしていきます。フォーカスがボケるコマを一瞬挿入して、作画の勢いを強調しています。実際のムービーでコマ送りして確認してみてください。
(b)は、カーブミラーをよぎる悠をカメラが追うカット。ミラーの中では冬だった景色が、カメラが追った先では春になっているという、タイトルを象徴するシーンです。カメラを大きく振るときにレンズフレアを明滅させています。
(c)は傘を開く悠。傘を開く直前にカメラをぐっと引き、作画の躍動感を強調しています。

<<<OtherWorksのTOPへもどる

<<<TOPへもどる

ご意見・ご感想はこちらまで:ccs50140@syd.odn.ne.jp