反射原稿スキャナによる
 大判フィルムのスキャニング 
はじめに

数年前、フィルムスキャン機能付きスキャナを購入しようとしたところ、殆どが35mmフィルムのみ対応となっている有様でした。ブローニーなどは、ちょっと高級目のフラットベッドスキャナだけ。大判にいたってはハイエンド機(しかも、発売からだいぶ経ってる)のみ。
それから時は過ぎ、フィルムスキャンの状況はますます…悪くなろうにももう底打ち。相変わらず大判のスキャンは中々出来ないので、ブログとかに晒すにはプリントして貰って、反射原稿としてスキャンするしかありません。たいへんです(経済的に)。
そんな折、「フィルムスキャナじゃなくても、普通のスキャナとライトビューワあればスキャンできるぜ!」と言う情報をゲットしたので、早速試してみました。

あ、本文中の画像はクリックで拡大できます。念のため。

用意するもの

反射原稿スキャナ
ライトビューワ
画像処理ソフト

反射原稿スキャナ、とは所謂「ふつうのスキャナ」のこと。フィルムスキャン機能がなくても、紙がスキャンできれば問題ありません。フラットベッドタイプでも複合機でも問題ないと思いますが、ライトビューアを乗せる必要があるので、ハンドスキャナやシートフィードタイプのスキャナでは無理だと思います。

ライトビューワの大きさは問いませんが、スキャンしたいフィルムのサイズより十分大きいものがよいかと思われます。
画像処理ソフトは、私が昔ッから使っている「Photoshop Element ver2」と、今回必要に迫られて「Gimp 2,8」を使用しました。モノクロ及びカラーポジならPhotoshop Element だけで作業は完結しましたが、カラーネガの処理にはGimp2が必要でした。

今回は、Epson GT-X820と、フジ カラーイルミネータープロB4、Gimp2.8を使用しました。

スキャンする

スキャン自体の仕方は簡単です。
スキャンしたいフィルムをスキャナのガラス面に直接置き
画像のようにスキャナの上にライトボックスを乗せ、
スキャンツールで、反射原稿としてスキャンするだけです。

注意点としていくつか
取り込み画像に埃が付くので、スキャナのガラス面をレンズクリーニング用の紙などの埃が付かないペーパーでそっと、しかししっかりと拭うこと。
フィルムのほうの埃は、普通のフィルムスキャンと同じようにブロアーで吹き飛ばす。この際、スキャナにポロポロ埃溢すとか間抜けな事をしないように。

埃処理は、大判になればなるほど大変です。印象としては、フィルムの埃取りにムキになるより、ガラス面に付いたのを重点的に落とした方が綺麗にスキャンできました。フィルム由来の埃は、よっぽどフィルムが埃まみれじゃない限り、ピンポイントのレタッチですみます。

さて、これでスキャンは終了です。取り込んだ画像は変な色ですが、がっかりするのはまだ早いですよ。

スキャン後の画像処理

スキャンしたデータは、フィルムスキャナなどでスキャンした際に自動で行われる処理を自前でやらないといけません。とりあえず、モノクロネガ、カラーポジ、カラーネガの三種のフィルムについての画像処理を次項より解説します。
モノクロポジ?知らん。
カラーポジの後処理

左図はスキャンしたままのポジ。まあ…うん、と言う感じです。なんか赤っぽいですね。

画像処理ソフトで「自動レベル補正」したのが右。ああ、これならまあまあです。ブログに載せる程度ならいいんじゃないでしょうか。
クリックすると原寸になりますが、水面にちょっとスキャンむらみたいなのが出ているのが気になります。縮小すると見えないんですが。
さて、カラーポジの処理は、レベル補正だけで何とかなりました。簡単ですね。ポジの原版をみつつ、色々試してみてはいかがでしょうか。8x10がこんなにお手軽にスキャンできるんですよ。
 

 

 

モノクロネガの後処理

モノクロネガのフィルムをスキャンしてそのまま出したのが左画像。ポジのとき同様、やはり赤味が増しています。
そこで、ポジの処理同様「自動レベル補正」をかけたのがこちら。ああ、これはもうネガっぽいですね。
最後に、「階調反転」でネガポジ反転をすれば、この通りモノクロ写真です。
モノクロも、カラーポジ同様に簡単な処理で何とかなりました。あとはコントラストをいじるなり、埃取りのスポッティングに精を出すなり…。
 

 

 

カラーネガの後処理

カラーネガをスキャンしたそのままの画像。うんまあ、普通のカラーネガですね。さて、ここから色つきのちゃんとした画像にしないとならないのです。
ネガなので、モノクロの時のように反転すればいいんじゃない?と思われましょうが、カラーネガフィルムの性質上、そう単純には行かないのです。
カラーネガフィルムは、光をRGBの三原色に分けて感光しているのですが、その感光レベルがRGBそれぞれで異なっているため、まずはそれを同じレベルにそろえてやる処理をしなければなりません。ちなみに、カラーポジフィルムは、RGBの感光レベルは同じという事になっているので、スキャン時の余計な偏りを排除するだけで良かったのですね。
まずは、gimpを立ち上げます。gimpは結構ややこしいソフトなので、今回は使う機能に限定して解説します。
ファイル→インポート、でスキャンしたネガ画像を取り込みます(先述の図のようになります)。
取り込んだら、色→色要素→チャンネル分解を選択。レイヤーに分解するにチェックを入れて実行してください。またこの際、スキャンソフトによれば「Epson RGBですがどうしますか」的なことを尋ねられますが、「はい」でOKです。
色分解すると、画像のようなモノクロのレイヤーが作成されます。画面右端の「レイヤー-ブラシ」のところに、RGB各成分ごとのレイヤー(赤チャンネル、とかいうやつ)が出来ていると思います。
さて、いよいよ色補正の開始。
「赤チャンネル」をクリックしてから…
モノクロ画像のほうウィンドウから「色→レベル」を選択し、色レベルの調整を行います。左図が赤成分の入力レベルグラフです。大雑把な説明ですが、赤の要素があるところに棒が立つわけですね。赤味が強いと棒が長くなります。棒がないところは赤味がないって事ですね。 で、これ、随分左に偏っています。これを0(一番左) 255(一番右)の範囲に収めるのが目的です。今も収まってるじゃない?と思われましょうが、赤のない領域が随分しめていますし、右端の山は多分ノイズなので、これらを切り捨てるのです。
まず、グラフの下の右端にある△をつまみ、左側へスライドさせます。グラフの左の山の、右裾野(図参照)にあわせましょう。
今回、左端はぴったりグラフが来ているので調整の必要はありませんでしたが、もし左端にも空白やノイズ的なものがあったら、メインの山の裾野まで▲を右にスライドさせてください。
調整が終わったらOKを押してください。

赤チャンネルの調整が終わったら、緑と青のチャンネルについても同様に行います。レイヤーのそれぞれの色のチャンネルをクリックした後、同じ手順で調整してください。

三要素ぶんの調整が終わったら、その結果を元に戻します。「色→色要素→再合成」を選択してください。もとの(カラーネガのスキャン画像)に、調整した色情報がもどされます。この際、邪魔だからと言ってもとのカラーネガスキャン画像のウィンドウを閉じてしまうと、エラーが出て処理されません。
ジャーン!……あれ。
いやまだ焦るのは早い。これはカラーネガですからね。「色→階調の反転」を選択すると…
これこの通り、きちんとした陽画になります。
この画像だと、ちょっとまだ緑被りしているかんじですが、この辺は、先のRGB各成分のレベル補正で変わってきますので、何度もトライアンドエラーしてください。
おわりに

カラーネガだと随分手間がかかる感じですが、でも大判がお手軽にスキャンできるというメリットの方が十分あります。フィルムスキャナはこの先段々絶滅に向かっていくでしょうが、普通の反射原稿スキャナがなくなるとも思えないし、ライトビューワは…まあLED電灯とかを工夫したらいけるんじゃないかな。
フィルム撮影はやってみたいけど、ブログに載せるのに専用のスキャナとかいるんでー、と躊躇っている方にとって、これが少しでもハードルを下げてくれたらなーとか思っております。あ、でもそういう人たちは35mmメインかな。だとしたら普通にスキャナー買えば機能が付いて…ついてますよね?まだ

 

 

 

 

 もどる