『すみれの花の砂糖づけ』出版記念
江國香織先生サイン会レポート

―― 1999年12月11日 於 三省堂書店東京本店 ――


PM 2:45 厳しい寒さになるとの天気予報は外れ、陽気はやさしい。小小春日和の趣だ。神田古書店街ではただいま街路樹の整備中である。ただでさえ軒先にワゴンを出して売っている古書店街である。歩道の幅が半分ほどになり、とても歩きにくい。

PM 2:51 三省堂書店に着き、入口すぐ左を見ると、机、金屏風と、すでに会場の用意は万端だ。そして店員のハンドマイクの声。「整理券150枚はすでに完売となっております。」..開始前に完売であるとは珍しい。江國先生の人気の程がうかがわれる。

PM 2:53 入口ロビーでは「2000年カレンダーフェア」もやっており、人がすごい。野暮用を済ませておこうと2階の文庫本売場へ行くと、こちらも普段よりも人が多い。まさか江國人気がここまで、でもあるまいが。

PM 3:03 1階の会場に戻ると、すでにサイン会が始まっているようだ。しかし人出で、どこに江國先生がいるのか、みっ、見えない。3メートルほどの距離に近づいて、人の頭越しにやっと覗き見ることができた。が、どの人が先生だ?ピンとこない。

PM 3:05 最近長い髪を切られたらしく、そのせいもあって、イメージしていたお姿とは違っていた。髪は、ショート目でボンバー気味のソバージュで、色は茶か、光の加減では赤っぽくも見える。お召しは淡いグレーの前あきセーター。お顔は彫りが深く、切れ長で、そして色がとても白い。現代的なお嬢様って感じだ。

PM 3:12 お姿を網膜に焼き付けたところで、いつもの階段通路に並ぶことにする。さてどこまで列は続いているのか、2階、3階、と上ってところで「整理券と書籍を拝見できますか?」と店員に呼び止められたので、わざわざバッグから取り出して見せる。意図は分かるが、お客様に対して少し失礼な気が..。6階まで上がったところでやっと最後尾であった。息が切れた。年かなあ、と暗く思ったところに、すぐ後ろに着いてきた若い女性が「あ〜疲れた」とひとりごちてくれたので、気が助かった。さてファン層であるが、やはり女性が多い。それも圧倒的に20代の若い女性が多い。

PM 3:40 列が進み、3階まで下りてくることができた。けっこう順調じゃないかと時計を見たらすでに30分が経っていた。ふたり前の女性は、学校のレポートか?コピーを熱心に見つめている。すぐ前の女性は『すみれの花の砂糖づけ』を読み終えてしまったようだ。うしろの女性は携帯液晶ゲームをやっている。そのうしろで、階段に座り込み頬杖をついていた女性が大きなあくびをした。

PM 4:00 ジャスト4時。1階まで下りてきた。前にはあと7人。

PM 4:03 わたしの前にはもう誰もいない。「お次の3人様どうぞー」の声がなかなか掛からない。どきどきしてきた。唇が乾く。「おつぎ・・」きたっ!最後まで聞かずに飛び出す。

PM 4:04 整理券と本を先生の隣の係員に渡す。整理券の指名欄は空白。「お名前はよろしいですか?」とまた訊かれてしまった。無記名でサインを頂戴するのは失礼に当たるであろうかと実は臆しているのだ。名前を書いてもらったほうが嬉しさは上かなあ。でも箔がないと思う。

 極細の黒のサインペンで、隅っこに小さくサインをするところが、なんとも江國先生らしい。「ありがとうございます」のお言葉を頂いた。静かな、風のような、心に沁み入るお声であった。そして切れ味のある笑顔..。

PM 4:10 そのあとしばらく見ていたら、江國先生の知り合いの男性がいた模様。知り合いに話される江國先生は、とてもきゃぴきゃぴしていた。やはり現代風だ。

PM 4:15 三省堂裏の自販機で缶コーヒーを買い、緊張で乾いたのどを潤してから、駅への道を歩いた。歩きながら、なぜかクリスマスソングを鼻で歌っている自分に気付いて、照れた。


(写真はずいぶんと赤く写ってしまった。撮るたびにいつも新しいデジカメを買おうと思うのだが。なにせデジカメ創成期に手に入れたカシオGV-10Aですから。)