『落花流水』出版記念
山本文緒先生サイン会レポート

―― 1999年10月31日 於 神保町ブックフェスティバル ――


PM 2:58 地下鉄神保町駅を降りると、それまで穏やかに照っていた陽が陰り、涼しい秋の陽気になっていた。きもちが悪い。少し足がふるえている。文緒先生に会える。会う。会ってしまう。くそお、会わにゃならんのか。嬉しくもあり、恥ずかしくもあり、2日前から臆しっぱなし。指先が冷たいのは秋風のせいだけではない。アドレナリン過多のせいだ。(「文緒先生」ではあまりにこっぱずかしいので、以下「フミねえ」とさせていただこう。なれなれしくて御免、フミねえ。)

PM 3:00 年に一度の神保町ブックフェスティバルの真っ最中である。古書店街と平行するすずらん通りには、各出版社のワゴンや屋台がいっぱい。人が多くて、売り物をのぞき見るのもままならぬ。

PM 3:12 人混みをかき分け、三省堂書店に到着。入口ロビーの特設売場はこれまた人で、立錐の余地もない。どうにか一階常設売場にたどり着き、電話予約しておいた『落花流水』整理券付きをゲットする。整理番号は99番であった。落ち着かないので、サイン会の前にトイレに行っておこう。しかし情けないことにチョロッとしか出ない。このまま手を洗わないで握手してやろうかな、なんてアホなことを考えて、ひとりニヤリとする。少し余裕が出てきたようだ。(ちなみにちゃんと洗ったよん。)

PM 3:20 さてサイン会開始まであと40分ほど。所在なく、三省堂の回りをぐるぐる歩く。会場になるはずの、すずらん通り駐車場スペースの舞台の上では、体格よさげな女性がひとり、いささか時代遅れなメッセージフォークソングをアカペラで歌っている。何者だ?プロなのか?あまりぐるぐる歩いて、バターになったら困るので、すいてる裏道の自販機前で煙草を吸って一休みする。

PM 3:28 フォークソングショーが終わったようだ。サイン会の札が掲げられ、早くも数人がステージ横の駐車場に並び始める。わたしは別にゆっくりしていよう。ステージ前に用意された観客用の椅子(20脚ほど)に腰掛けて待つ。

PM 3:40 椅子に座っていると、後ろを歩く人たちの会話がよく聞こえてくる。「山本文緒ってだれ?なにを書いた人?」「これだけ並んでるんだから、有名な人なんじゃない?」とか、「顔だけ見ていこうか」とか、「あっ、山本ヒロフミがサイン会やるんだ(←誰だそれ?)」とか。

PM 4:05 定刻を遅れること5分。フミねえのご登場。お召しものは黒のブラウス。開き気味の胸元にネックレスがキラリ。ちっちゃくてぽっちゃりして、なにを隠そう、中学の時に好きだったYさんにそっくりなんでドキドキしてしまった。さてここでまた、後ろを行く見物人のセリフをひとつ。「キレイな人だねー」だってさ、フミねえ!司会の女性が2、3のインタビューを行ったあと、さあいよいよサイン会の始まりだ。

PM 4:30 わたしはまだ椅子に座ったまま。100人以上の列は、フミねえがひとりひとりにこやかに話しかけ丁寧にサインをしてくれてるので、なかなか進まない。係員が時計を見て、列の人数を数え始めた。まさか途中で打ち切りになるのでは?と不安がよぎり、あわてて並ぶ。さて、列をなす人たちの男女比は半々ほど。女性は2、30代が多く、男性はやや上で、30から50代ほどと幅広い。

PM 5:00 予定終了時刻になった。が、やはりまだまだ終わらない。陽はすっかり落ち、肌寒くなってきた。フミねえはブラウス一枚で大丈夫かな?

PM 5:35 やっと順番がきた。『落花流水』と整理券を、ひかえし男性係員に渡す。整理券の指名欄にはしっかり「エラソーニ」と書いた。それを見た彼がニコッ。「ネットに書かれてますよね〜?」と親しげに話しかけてきたのにはビックリした。ぼくって有名人?

PM 5:36 フミねえと、ごた〜いめ〜ん!フミねえが喜んでくれた。すんげえ嬉しい。わかってはいたが、やはり気さくなねえやんだ。握手して、舞い上がりつつも会話ができた。テレるお褒めの言葉まで頂いちゃって(ホントはこっちが褒めにゃならんのだが)。話した内容は、ふたりだけの、ヒ・ミ・ツっ!なんてね。

PM 5:47 ハンドルを明かしてホントによかったと思う。最高の思い出と宝物ができた。お日さまマークがイカすじゃねえか。落書きじゃねえっつーの(笑)。金の落款がまたいいですなあ。地下鉄に乗っても、会話を思いだしてはニヤニヤ。頬がゆるんでしまう。だから帽子を深くかぶって、下を向いていた。フミねえありがとう。そしてネットの仲間のみんなも、ホントにありがとう。



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