びっくり人間大集合だなこりゃ。ゴムマリ人間やナメクジ人間や、全身から血ィ噴き出す女らが死闘を繰り広げる。見せ物小屋の弁士のような語り調が雰囲気をさらに盛り上げる。リアルな小説など糞食らえ。この奇想天外さこそフィクションの醍醐味であろう。で、奇想天外でいながらストーリーの骨格が実にしっかりしているから素晴らしい。おもしろくて、ニヤニヤが止まらなかった。そして最後は感動すらできちゃうし。
思ったほどおどろおどろしい怖さはない。魔界転生衆と闘う柳生十人衆の明るさと友情が味わえて、山田風太郎作品の中ではむしろ「さわやか系」であると思う。天草四郎や宮本武蔵といった歴史上のヒーローを生き返らせて話を盛り上げる、こんな手法もあったのだなあと感心する。柳生十兵衛、かっこよすぎ!柳生十兵衛と宮本武蔵の一騎打ちが読めるなんて、プロレスでいったら力道山とアントニオ猪木の試合みたいじゃないか。なお本書はオマケとして山田風太郎と菊池秀行の対談が収録されている。風太郎翁が自作品をどう評価しているかがわかって興味深し。(→誤植情報)
生きて晩飯を食うのもあと千回くらいだろうとの心境で書かれた随筆。糖尿病やパーキンソンなど老人病が次々と襲ってきて、冷静に考えると随分悲惨な内容なのだが、そこは怪人・山田風太郎のこと。笑えるんである。生死を達見した様子が素晴らしく、飄々として粋であり、『徒然草』現代版のように風流であり、まったくイケテル爺さんなんだ。いい歳の取り方をしてるなあと敬服いたしました。(→誤植情報)
山田風太郎、恐るべし。馳星周や花村萬月が山田風太郎に心酔しているらしいが、うべなるかな。山田風太郎の発想は常人のものじゃない。忍法やどかり(胎児を他の女の腹に移動させる)や、忍法羅生門(胎内の嬰児が、相手の男根を掴んで離さない)なんてものを考えてしまう山田風太郎恐るべし。
伊賀忍者と根来忍法僧の死闘。この本の難点その1は、主人公の笛吹城太郎が、特になんの技も魅力も持ってない男ということだろう。難点その2は、根来の忍法僧7人が、これまた特徴なく、7人ともおんなじに見えるとこ。ちなみにこの忍法帖シリーズ、タイトルと中身はあんま関係ないことにようやく気付いた。だって伊賀の笛吹城太郎は一切忍法を使ってないもの。エログロなストーリーのわりにはけっこうすんなり楽しめる話だとは言っておこう。
『魔界転生(上・下)』 角川文庫 (計:1002P \1486)
★★★☆☆
『あと千回の晩飯』 朝日新聞社 (299P \1700)
★★★☆☆
『くノ一忍法帖』 講談社文庫 (336P \571)
★★★☆☆
『伊賀忍法帖』 講談社文庫 (405P \629)
★★☆☆☆