渋谷の女子高生が噂通りに殺されていくハードエンタメ。グーである。主人公刑事の疲れたパパさんぶりにしんみりとした味がある。そして女性陣の描き方がみんな生き生きしている。悪役の女社長も魅力的だし、ピンク髪のジョシコーセーすらかわいいし、なにより主人公とペアを組む名島警部補がも〜おかわいい。ぶっちゃけわたしの理想です名島さん(ぽ)。なお、この荻原浩さん。前職がカタカナ広告業で、コメディからハードな話まで書ける。ちょうど奥田英朗と同じだ。作風も似ているし、うまさも甲乙つけがたい。ところでこの小説の終わり方は、ほんと問題作ですなあ。
若年性アルツハイマーがテーマの話だ。心が痛い。泣ける。小川洋子『博士の愛した数式』の、リアル版といった感じである。悲しくも感動的なエピソードがいっぱい出てくるが、特に印象的だったのが、だんだん症状が進み、物を忘れてゆく夫(主人公)のために、妻が、病気の治るブレスレットを買ってきた場面。夫のために、宗教グッズにまで手を出してしまった妻を、誰が責めらりょうか。遠藤周作の名作短編『夫婦の一日』を思い出した。病気がテーマの小説は、希望で終わらせるのか、絶望で終わらせるのか、終わらせ方が難しい。そしたら、こうきたかあ。うーん、素晴らしい。山本周五郎賞受賞。
いまさらタイムスリップものもあるまい?と馬鹿にしながら読み始めたら、面白かった。現代のフリーターが戦争中へ、かたや戦争中の航空兵が現代へ、とするアイデアは陳腐なれど、書き方によってはいい話になるのだなあと感心した。いきなり戦争に巻き込まれてしまった悲しみ。かたや戦争にとっくに負けたことを知ってしまった悲しみ。時代とは残酷である。それぞれの悲しみを、あたたかさとユーモアで包んでくれていて、非常にすらすら読みやすいエンタメに仕上がっている。何度も涙がじわっとしちゃったし、もうちょっとだけ重さがあれば、非常に好きだった。(→誤植情報)
久々に荻原浩の巧さを実感出来た。たった一文で社会を風刺する巧さ、台詞ひとつで人物の性格を浮き上がらせる巧さは健在だ。宗教に騙される人間と、宗教で他人を騙す人間ではどちらが不幸なのかを、たっぷり堪能あれという感じだ。残念ながら中だるみ感が強く、せっかくの上下巻のボリュームを活かし切った出来とは言えない。作者自身が途中で書くことに飽きちゃってる様子がありありだ。せっかくページ数があるのだから、仲村と龍斎の過去をもうちょっと描いて、ふたりの人間性を掘り下げてくれれば良かったのにと思う。しかし終盤はまた巧い。終盤に意外性を持ってくるあたり、初期の荻原浩にあったサービス精神が復活している。(→誤植情報)
市井に生きる小市民らの哀しさをおもしろおかしく描いた作品集。ひとこと、「巧い」。どこから読んでも笑えて愉しめる、金太郎飴のような一冊だが、特に注目は『犬猫語完全翻訳機』だろう。なんとこれSFであり、かなり出来が良い(続編の『正直メール』はこの本の中では正直いまいちだけど)。次はいっそ、一冊丸ごとのSF長編を書いてみたらどうだ荻原浩さんよ。
荻原浩は抽斗の数が多いなあ。今回はまるであさのあつこが書くようなヤングアダルトな世界。オトナ的な視線で少年の成長を描いた、ひっじょーに優等生的な小説に思う。あまり優等生的な出来ゆえ、ひっじょーにいい話なのに、感動できるまでには至れなかったのが残念だ。あと、毎度のことながら、荻原浩はラストのひとひねりがすごい。まったく予想していなかった面白いラストが今回もやってきた。
『噂』系のハードな話だ。犯人捜しに活躍するのは、中二の時以来、四年ぶりに集まったクラスメートたち。いいなあ。これも青春だ。つくづく思ったのは、少年時代に於ける、四年という時間の長さ。濃さ。四年も経てば、ある者とある者は同棲してもう子供が産まれるし、ある者は青春の夢破れ進路に悩むし、そして四年前にいじめを受けていた者の恨みは...。怖さや意外性に関してはもうひとつな話なのだが、テーマの扱い方がいいと思う。みなさん、いじめはやめましょう。
旅芸人一家のドタバタ人情話。浅田次郎的な世界だ。浅田次郎の『きんぴか』や『プリズンホテル』に比べると、やはりちょっと年季が足りない。前半は要らない。しかし後半はうまい。興行の仕方や「客いじり」のコツなど、旅芸人の裏側をとてもよく調べて書いている。この詳しさ。シロウトさんとは思えん。肝心な、家族の絆がなあ..。この家族はどうしてうまくいってないのか。導入部たる前半の書き方がいまいちなのが、最後まで響いちゃっておる。
ちょっとホラーな短編集。掃き溜め(駄作ばかり)の中に鶴(大傑作)が一羽だ。鶴とは、表題作の『押入れのちよ』。浅田次郎の『鉄道員』以来、幽霊もので大泣きしてしまった。荻原浩の描く、人間の悲しみに、われは泣く。『押入れのちよ』のみに感動できれば、この作品集は十分であろう。残りの短編はみな、『押入れのちよ』を引き立てるための噛ませ犬だってことで、はいなるあんさー。
合格点をあげていいのか、微妙なところ。笑いのツボ、泣きのツボはいいものがあるのだが、それを実現するテクニックがちょっと..。話が盛り上がってないうちに、いきなり泣きの場面がきたりする。とりあえず、飽きずに楽しめる話であることは確かだ。このひとは、もうちょっと慎重に、中身を練ってから書いた方がいいんじゃないかな。実にもったいないよ。この小説では見あたらなかったが、語句のミスも多いし。チェックできない編集さんがだらしないな。
ありがちな会社コメディーである。特に良くもないが悪くもない。ストーリー展開も予想の範囲内なので、自分の予想が当たるか考えながら読むと楽しいかも。つまはじき社員たちの苦悩を描いていながら、実際はとてもあり得ないおめでたい世界の話なわけで。ま、コメディーですからね。荻原浩の作品だとわかってなかったら、ひいちゃってたかも。
短編集。どれも基本的にはユーモアがあって笑える話だが、最後にほんわり、じーんとさせてくれる。感想は一言、「巧い」だ。荻原浩の巧さはもうちょっといい方向に進んでくれないものかなーと残念に思う。「巧い」ばかりの人畜無害な話は物足りないでござるよ。
小さなマイホームに夫と子供と住むごく普通のママの裏の顔はスナイパー、って話。アイデアはとてもいいし、上手な話だと思う。しかし筆者が男性だからか、ママ(主婦としての主人公)の描き方がステレオタイプに過ぎる気がする。料理のシーンがかなり出てくるのだが、どの料理もあんま美味しそうに思えない(笑)。筆者はちゃんと料理をするひとなのかなあ?表紙のピンク色と、栞紐のピンク色が、おそろいになっているのは綺麗だね。
銀行員としていじめられ続けた男の第二の人生(タクシードライバー)話なのだが。素朴な疑問。銀行ってほんとにこんな非道い業界なんだろうか。さすがに小説は大袈裟?同世代の男の気持ちを書かせたら荻原浩は完璧だと思う。完璧すぎるゆえ、この本の場合、人生後ろ向きな主人公の姿勢が理解できちゃって、読んでいるとどんどん鬱になってくる。小説を楽しむどころじゃない。ちょっといかんですよこの主人公は。
超イナカな村が町おこしをする。非常にありがちなコメディーである。特におもしろくもない。と言って完全に切り捨てるのも可哀想。うまさはあるのだ。文章はじつに読みやすくてうまいし、ところどころにおしゃれなエッセンスが散らばっている。それらがこなれずに、ドタバタなだけのコメディに終わってしまっている。デビュー作としてはこんなものなんだろう。がんばれ。小説すばる新人賞受賞。
コメディーとして、ひと癖もふた癖もある登場人物を出してくるのはわかるとしても、それにしても見事にムカつく登場人物ばっか。まったく仕事をしない地方公務員に、オタクなクリエイターに、自分中心の劇団員に、ヤンキーの大工。笑えねえ。話自体も、なんだか読みにくくて、ちっともおもしろくないぞ。しかし、ラスト付近だけは、がらっと作風が変わって、じつに美しい、いい話になっているんだから、なんなのだろうこれは。油断ならない作家さんだ。
悪い話ではないのだが..。荻原浩らしい、うまいなーと思わせてくれるところが皆無だった。話のアイデアはいい。類人猿ボノボとの会話実験をしている研究所が舞台の感動ミステリー。ボノボのバースディ君はとてもかわいくていいんだけど、(バースディ君の描写に心血を注ぎすぎたあげく?)人間たちに魅力がない。主人公とヒロインたちの関係がしっかり描けてないから、事件の真相を聞かされても、ふーんなんだそれ、って感じ。東野圭吾じゃないんだからさ。これじゃだめだよ荻原くん。
漂流コメディーということになろうが、笑えない。命にかかわるサバイバルというネタを、冗談で書いて欲しくなかった。特にムカつくのが、漂流しているのに全く真剣味のない、部長と副社長(読者をムカつかせるほどのダメ人間な描きっぷりが上手いと言えば上手いけど)。さすがに後半になると段々とシリアスになってくるが、それにしてもダラダラダラダラと、話に山が無いこと。飛行機が墜落しました、漂流しました、無人島でサバイバルしました、以外の何も無い。南の島に戦友の慰霊にやってきた仁太のじっちゃんなんて最も素晴らしい人物なのに、ちっとも活躍させていないのも間違いに思う。
おもしろいのは最初だけだった。はじめの、ハードボイルド探偵とバーテンダーの会話には、こんな見事な台詞が出てくる。「運は大切にしたほうがいいよ。運と湯沸かしポットさえあれば、たいていの場所で生きていける」。しかしそれから中盤は、地味なペットちゃん捜しの様子を、なんでずっと読まされなきゃいけないかなあ。ハードボイルド探偵が、ダイナマイトボディの女だと勘違いして秘書に雇ってしまった婆さんが今作品の売りみたいなのだが、この婆さんのキャラがどうもいけない。いけすかない。嫌らしい。ぜんぜんかわいくない。最後に泣かせようとしたって、中盤ですっかり飽きてしまったから、ダメっすよ。
幼稚園「ひまわり園」の園児と老人ホーム「ひまわり苑」の老人の交流を描いた長編ということになろうが、中身が余りに軽すぎ。老人の描写はともかく、幼児の描写にすごく無理があるし。ようやく「事件」が起きて話が面白くなるのは400頁過ぎであり、そこまでの400頁の内容の無さには、ほとほと腹が立った。本書で読むべきなのは、後半の片岡さんのアジ演説だけだ。(→誤植情報)
荻原浩に純文学は無理だよ。ストーリーテラーとしての荻原浩の才能は稀有のものと大いに認めるけど、スカして純文学風に書いたこの作品集は、ただ暗くてテンポが悪いだけの代物。疲れた中年男の愚痴に未来はなく、読み終えての余韻もない。
描かれる家族像があんまりありきたりのステレオタイプで、笑ってしまった。田舎に引っ越して自分だけが張り切るお父さん、生活の不便を文句言うお母さん、携帯電話さえあればあとは無関心の姉に、都会ではぜんそく持ちだった弟、ボケたふりしてるお祖母ちゃん。箸にも棒にも掛からない展開に、毒にも薬にもならない結末。どうやら荻原浩の才能はもう枯渇したようだ(最近の作家では長持ちしたほうだ)。座敷わらしがいてくれたおかげで家族が仲良くなれるってのは、ちょっと違うと思う。
短編集の体裁はしているが、実はオムニバス長編というか。まったくの企画倒れでしょこれ。時代を超えたエピソードがいくつもブツ切れで挿入されるのだが、どう繋がってくるか不明だし、またどれも似たようなエピソードで盛り上がりがない。とことん地味なところがいちばんガンかも。新しい小説を書こうとする筆者の意気込みだけは買う。
『明日の記憶』 光文社 (327P \1500)
★★★★☆
『僕たちの戦争』 双葉社 (428P \1900)
★★★☆☆
『砂の王国(上・下)』 講談社 (計:786P \3400)
★★★☆☆
『ちょいな人々』 文藝春秋 (266P \1524)
★★★☆☆
『四度目の氷河期』 新潮社 (459P \1800)
★★★☆☆
『コールドゲーム』 講談社 (376P \1700)
★★★☆☆
『母恋旅烏』 小学館文庫 (445P \714)
★★★☆☆
『押入れのちよ』 新潮社 (293P \1500)
★★★☆☆
『誘拐ラプソディー』 双葉社 (408P \2000)
★★★☆☆
『神様からひと言』 光文社 (388P \1900)
★★★☆☆
『さよなら、そしてこんにちは』 光文社 (244P \1500)
★★★☆☆
『ママの狙撃銃』 双葉社 (355P \1600)
★★☆☆☆
『あの日にドライブ』 光文社 (294P \1500)
★★☆☆☆
『オロロ畑でつかまえて』 集英社 (225P \1400)
★★☆☆☆
『メリーゴーランド』 新潮社 (341P \1700)
★★☆☆☆
『さよならバースディ』 集英社 (299P \1600)
★★☆☆☆
『オイアウエ漂流記』 新潮社 (460P \1700)
★★☆☆☆
『ハードボイルド・エッグ』 双葉社 (393P \1600)
★★☆☆☆
『ひまわり事件』 文藝春秋 (495P \1800)
★★☆☆☆
『月の上の観覧車』 新潮社 (257P \1500)
★★☆☆☆
『愛しの座敷わらし』 朝日新聞出版 (435P \1800)
★☆☆☆☆
『千年樹』 集英社 (299P \1600)
★☆☆☆☆