―― 1998年9月27日 於 三省堂書店東京本店 ――
PM 2:52 都営新宿線神保町駅下車。雨の日曜日。肌寒い。ここは学生の街である。日曜日は通りのほとんどを占める古本屋はみな休みである。なのに歩く人は多い。不思議な街だ。PM 2:57 三省堂書店に到着。入り口のすぐ左手がサイン会会場である。長机には『夜明けまで1マイル』が山積み、そして生花。バックには金屏風。すでに準備は整っている。定刻まで3分しかないのに、村山由佳先生ご本人はまだいない。こちらにお並び下さーい!と店員が例によって汚い非常用通路を指さしているが、このままここで先生の着座を見守ることにしよう。
PM 3:04 定刻に遅れること4分。先生が歩いてらした。その前を、太った、やや濃い、ステージママといった雰囲気の女性が露払いをつとめている。あの女性はいったい何者だろう?マネージャーだろうか?
PM 3:05 村山由佳先生御着座。その左手に控えしはステージママ(?)。由佳先生のいでたちは、グレイの地に茶と白のアーガイルが入った、タートルネックで半袖のサマーセーター。長い髪をアップにまとめ、おくれ毛が色っぽい。ぽっちゃりした、著者近影でみるいつも通りのお姿であった。サイン会が始まった。
PM 3:08 列に並ぶべく、非常階段通路へ。2階、3階と列は続く。4階、5階を越えたところでようやく最後尾だ。
PM 3:15 この通路に並ばせるのはどうにかならないだろうか、三省堂書店さんよ。とにかく空気の流れが悪い。まわりは段ボールの山。人いきれで蒸し暑い。外気温と10度くらい差がありそうだ。肌寒い日だってのに、ここは立っているだけで汗が出る。列は動かない。
PM 3:20 まわりを見回すと圧倒的に若い(20くらいの)男性が多い。4人前に並んだ学生風の男は何故か、『夜明けまで1マイル』に、三省堂のライバル書店である書泉のブックカバーをして読んでいる。ちゃんとこの店で買って整理券をもらってるんだろうか。それにしてもある意味、度胸のあるやつだ。
PM 3:30 この場で『夜明けまで1マイル』を買い整理券を手にした人がどんどん並ぶ。それはわかっているのに、前もって整理券をゲットしておかねば安心できない、A型人間のわたしだ。
PM 3:40 ようやく1階まで下りる。4人ずつ1グループに分けられる。わたしは4人のうちの4番目だ、ラッキー。じっくり先生のお顔を拝見できる。セカンドバックから『夜明けまで1マイル』を、財布から整理券を取り出して備える。さあ、次だ。
PM 3:44 先生の御前に到着。例のステージママに整理券と『夜明けまで1マイル』を手渡す。整理券には氏名を記入する欄がある。他の3人はみなフルネームを記入しているがわたしは白紙である。「お名前はよろしいですか?」と、ステージママが営業スマイルで訊ねる。ここで少々悩む。戸籍上の名前をちゃんと書くべきか、それとも「エラソーニ」と書くか..もしかしたらわたしのことを知っているかもしれない。「いつも悪口をどうも」とか、皮肉を言われるかもしれない。結局、白紙のまま出すことにした。名前付きサインだと安っぽいし、あとで売れないから(うひ〜!)
PM 3:45 さてわたしの番だ。由佳先生、まずはこちらを見上げて「こんにちは」とニコッ。そしてサインを開始する。写真では白く見えるが、用いたペンはゴールドのラメ入りマジックである。そしてお互いに「ありがとうございます」と握手。なんともふっくらした、やわらかい手であった。(鴨川で農作業をしているくせに?)
![]()
村山由佳先生はとにかくやわらかな、にこやかな人であった。わたしの前の前の男が「これからも心に残る作品を書いて下さい」と言った。前の男は「誕生日が3日違いなんです」と言った(そんなこと言うことか?)。これらの言葉に気さくに応えておられた。わたしは..恥ずかしくて何も言えなかった。
PM 3:50 帰りは小降りになっていた。傘を差すほどではない。火照った頬に小糠雨が心地よかった。帰って、右手の温かな感触を忘れないうちに、『夜明けまで1マイル』を読むとしよう。