
F−14はアメリカ海軍のF−4ファントムUの後継機計画、VFXにより装備された機体である。しかし、そこに至るまでに米海軍には2つの戦闘機開発計画が存在した。このため、F−14はその2つの計画で開発された技術が盛り込まれた戦闘機でもある。
一つはF6Dミサイリアー計画で、当時推進されていた次期FADF(艦隊防空戦闘機)計画に基づいて1959年にアメリカ海軍がダグラス(当時)に開発契約を与えたもの。これは、XAAM−N−10 イーグル長射程AAMを搭載する、艦隊防空専用の亜音速戦闘機を開発するプログラムだった。しかし、単一任務の機体を空母に載せることの非効率性を国防総省から指摘され、1960年12月には計画はキャンセルされてしまった。このため、海軍では代替案として迎撃任務だけではなく、戦闘/攻撃にも使用可能な高速、大搭載量、長航続性能を持つ次期FADFの検討を行うこととなった。
しかし、1961年にアメリカ政府は、装備兵器の費用対効果を重視する方針により、空軍で当時検討されていたTFX(次期戦術戦闘機)計画と海軍の次期FADFの統合を指示した。これにより開発されたのがジェネラル・ダイナミックス(当時)F−111で、海軍型はF−111Bと呼ばれた。F−111Bでは、F6Dで採用予定であったイーグルAAMに代えて、ヒューズが新たに開発するAIM−54 フェニックスAAMと、AN/AWG−9 レーダーFCSの組み合わせを装備することになった。
F−111Bは7機(開発試験機 5機、量産型機 2機)が作られて開発試験が行われたが、艦載戦闘機としては重量過大で、エンジンのコンプレッサー・ストール等の問題も発生したため、1968年7月に装備計画はキャンセルされることになった。アメリカ海軍はこの決定を歓迎し、キャンセル直前の6月21日には新艦載戦闘機であるVFXの提案要求書を各メーカーに提示した。そして、 1969年1月15日にVFXとしてグラマンのモデルG−303Eが採用され、F−14の正式名称が与えられて開発が開始された。
F−14は12機の開発用機が作られることとなり、その初号機は1970年12月21日に初飛行した。そして、1972年10月がから量産型F−14Aの部隊配備が開始され、1973年7月から最初の実戦飛行隊としてVF−1“WOLFPACK”とVF−2“BOUNTY HUNTERS”への引き渡しが開始されている。以後、F−14はアメリカ海軍の主力艦上戦闘機となり、各空母航空団に2個飛行隊ずつ配備されることになった。また、海軍からのRF−8Gクルーセイダー艦上偵察機の退役に伴い、2個飛行隊のいずれかが戦術航空偵察ポッド・システム(TARPS)を搭載し、戦術偵察任務を担当することとなった。
F−14は、主翼の後退角が20°から68°の間で変化させることができる可変後退翼を採用している。これに加え、超音速時に発生するピッチ軸周りの安定性の低下に対処するため、主翼付け根のグラブ部に引き込み式のグラブ・ベーンを設けている。
可変後退翼は、低高度から高高度までの高速性能と短距離離着陸能力、そして大きなペイロード/レンジを同時に実現できる。しかしその反面、機構が複雑で、重量も増加するという欠点がある。さらに、手動で後退角を変えるとなると、パイロットには新たな操縦操作が加わることになる。しかし、ある程度の重量増加はエンジン強化等、飛行性能の向上によりある程度は相殺できる。また、操縦の複雑化を招かないためにF−14ではMSPと呼ばれる、マッハ数に応じて後退角を変化させるコンピュータ制御の後退角制御装置を採用した。
このMSPは、CP−1146/A セントラル・エアデータ・コンピュータにより主翼の後退角を制御するもので、自動モードでは飛行高度と気圧高度の変化を検知して常に最適な主翼を最適な後退角にセットする。また、もう一つBOMBモードというものもあり、こちらはあらゆる速度域において後退角を55°にせず、速度がマッハ0.8を超えると自動的に後退角を増加させる。これら2つの自動モードF−14は、常に最適な性能を発揮できる機体外形を取ることができる。なお、故障時の対策として、手動操作によるバックアップ機構も有している。
もう1つのF−14の特徴は、AN/AWG−9 レーダーFCSとAIM−54 フェニックス長射程AAMの組み合わせによる、長距離同時他目標処理能力である。AN/AWG−9は、パルス・ドップラー方式とモノパルス方式を組み合わせたレーダーで、長距離用のパルス・ドップラー捜索モードでは、戦闘機程度の小型目標(RCS 5u)なら最大115nm(約213km)で探知できる。そして、捜索中追跡(TWS)モードでは、同時に24個の空中目標を90nm(約167km)で探知し、このうち任意の6目標に対してフェニックスAAMによる同時攻撃を行うことができる。この場合の最大射程は52nm(約96km)となっている。
また、パルス・ドップラー単一目標追跡モードでは、複数目標に対する同時攻撃はできないが、最大追跡距離が延伸され、フェニックスAAMで62nm(約115km)先の目標へも攻撃できるようになる。また、モノパルス単一目標追跡モードに切り替えると、最大追跡距離は49nm(約91km)に減少するものの、正面を横切る目標でも見失わないという利点を有している。
1991年からはAN/AWG−9に新しいソフトウェアが組み込まれて、 通常爆弾を使用しての対地攻撃も可能になった。さらに現在では、MCAP改修(後述)によりレーザー誘導爆弾の携行能力も付与され、戦闘爆撃機としての能力を高めている。
エンジンは、生産455号機まではプラット&ホイットニー製のTF30−P−412Aであったが、それ以降は改良型の−414Aに換装された。−414Aの最大推力は、−412Aと変わらないが、信頼性と整備性が向上している。さらに、558号機以降はエンジンがジェネラル・エレクトリック製のF110−GE−400にエンジンを換装した。このエンジン搭載機はF−14Aプラス(後にF−14Bと改称)と呼ばれ、さらに電子機器をアップデートした機体はF−14Dと呼ばれる。
F−14のエンジン換装は早い段階から計画され、1973年にはF−14原型7号機がエンジンをF401−PW−400(F−15/16が搭載するF100エンジンの海軍向け派生型。A/B推力12,745kg)に換装し、試験を行った。この機体はF−14Bと呼ばれる予定であったが、F401の技術的な問題とF−14の価格高騰に伴って、計画は中止となった。
しかし、その後ジェネラル・エレクトリック製F101DFE(B−1用が装備するF101エンジンの派生型)を装備することとなり、F−14Aプラスと呼ばれるF101DFE装備機が1981年から1982年にかけてテストを行っている。このF101DFEは、さらに改良が加えられてF110エンジンとなり、量産型F−14Aプラスでの採用が決まった他、空軍のF−15やF−16での採用も決まっている。F−14Aプラスの量産号機が1986年9月29日に初飛行した。このF−14Aプラスはその後、正式名称をF−14Bに改めている。
F−14Bは38機が新規に製造され、加えて32機がF−14Aからエンジン換装作業を受けている。
1996年6月からはF−14Bに対地攻撃能力を付与した多任務能力(MCAP)トムキャットの部隊配備も開始された。このMCAP機では、LANTIRN AN/AAQ−14目標指示ポッド(海軍ではAN/AAQ−13航法ポッドの運用はせず)を運用するための改修が施され、LANTIRNを携行しての対地攻撃任務が可能となった。また、航法装置にもGPS(汎地球測位システム)が追加されている。
F−14Dは、F−14Bで行われたエンジン換装に加え、レーダーFCSをAN/AWG−9の改良・発展型であるAN/APG−71にしたもの。これに合わせてミッション・コンピュータもAN/AYK−14になっている。レーダーの換装により、ルックダウン能力の向上、密集編隊に対する分解能の向上などが行われている。操縦席には新しい表示装置が導入された。さらに、機首下面にはAN/AXX−1 TVカメラ・セットに加え、赤外線捜索追跡装置(IRST)が装備された。また、後にはF−14A/Bと同様、MCAP改修が行われている。
こうしたF−14Dはまず2機がF−14Aから改修されて製作され、1990年2月9日に初飛行している。アメリカ海軍では当初400機以上導入する計画を立てたが、国防総省はこれを認めず、37機が新規生産され、18機がF−14Aから改修されたに留まった。これによりF−14は、1992年7月に最後の新造F−14Dが完成、1993年3月に改修型F−14Dの最終号機が完成して、生産作業を終了した。
| 全幅 | 19.54m(後退角20°) 10.15m(後退角75°) |
| 全長 | 19.10m |
| 全高 | 4.88m |
| 主翼面積 | 52.5u |
| 空虚重量 | 18,191kg |
| 最大離陸重量 | 33,724kg |
| エンジン | プラット&ホイットニー TF30−P−412A/414A |
| 推力 | 5,600kg(ドライ) 9,480kg(A/B) |
| 燃料搭載量 | 9,027l(機内)+1011l(増槽)×2 |
| 最大速度 | M2.34 |
| 実用上昇限度 | 15,240m |
| 戦闘行動半径 | 1,230km |
| 航続距離 | 3,210km |
| 乗員 | 2名 |
| 固定武装 | M61A1 20mmガトリングガン(弾数675発) |
| 搭載兵装 | AIM−9、AIM−7、AIM−54、AIM−120 各種爆弾等 |