title
「毎日が金曜日」http://www2.odn.ne.jp/fridays/
編集:大田拓、更新:2018 年 12 月 14 日

水彩画について考えてきたこと(2)


1.色調の統一

僕たちの周囲はさまざまな色で満ち溢れています。そこで、目の前に広がる風景を見たままの色の構成で描くと(もっとも、見たままには描けませんが)、必ずしも見る人を引き付ける絵にはなりません。それは、さまざまな色を無秩序に配置しただけでは、無秩序以上のものが生まれないからです。
そこで、無秩序な色の世界から脱して、心地良い絵に仕上げるには、ある程度色調を統一することが必要です。
色調を統一する方法ですが、その程度に応じて3つに大別できます。
強い統一
これは絵具の数を極力限定した描き方で、端的な例としては水墨画があります。水墨画では黒だけを使用して、濃淡を使い分けることで物体を表現するため、色調は自動的に統一されます。水墨画ほど極端な例ではありませんが、使用する絵具の数を極端に絞った(たとえば、2、3色)水彩画を描く人がいます。絵の展示会で、時々、色の種類が非常に少ない絵を見ることがありますが、ハッとするほど、引き付けられることがあります。
ただし、これはその絵の周囲に、多くの色(ほぼ無秩序に近い)を使った絵が多いため、色の種類の少なさが際立って見えるだけのことであって、もしも展示会のすべての絵がこのような絵ばかりであったら、おそらく退屈極まりない展示会になることでしょう。
中程度の統一
絵具の種類を 7 〜 10 個に絞って描くと、なんとなく色調が統一された感じの、心地良い絵になります。プロの水彩画家にこの種の描き方をする人が多いようです。こういう絵の描き方をする人はパレットの色の種類が少ない(10 色程度)ので、分かります。
ただし、こういう描き方をする画家の絵は、たとえば、緑色なら常に同じ緑色になるため、季節感を強く表現するのは難しいようで、どの絵も似た感じの絵になることが多いようです。
弱い統一
風景画を描く楽しみの一つに季節感を表現することがあります。同じ緑でも、春の緑、夏の緑、冬の常緑樹のくすんだ緑など、大きな違いがあります。こういう違いを無視して、いつも似たような緑で樹木を描く人もいますが、僕は、そういう絵はちょっとつまらないな、と考えています。
季節感を出しやすいのは樹木の表現で、微妙な樹木の色合いで季節感を表現するのですから、パレットに 20 色くらい用意しておいて、微妙なところで色調を統一します。
また毎回 20 色全部を使うのではなく、その状況に応じて実際には 10 色くらい使って描くようです。
一例として樹木の緑の話をすると、同じ季節の同じ樹木でも、日の当たっている部分と日陰の部分では異なる緑になります。こういうところにどういう緑色を使えばよいかこれまでは試行錯誤の繰り返しでした。最近試している方法は、青を基調色として固定し、それにさまざまな黄色を組み合わせて、さまざまな緑色を表現する、という方法です。
具体的な例では、青にはたとえばプルシアンブルーだけを使用し、黄色をイエローライト、イエローオーカー、ローシエンナ、バーントアンバーなど使い分けて微妙な緑色を区別します。また深い緑色が欲しい場合は、同じ青をベースにして、補色関係の橙色を使用して黒身を加えています。

この話は、良い悪いではなく、好みの問題です。
季節感あふれる素晴らしい風景画を描く代表に王軍先生がいますが、王軍先生の真似はできません。

2.遠近感

遠近感は風景画の中で重要な要素の一つです。
遠近感が乏しくとも素晴らしい絵もありますが、一般には遠近感のある絵の方が見る人を引き付けます。
僕たちは色の濃い物体が遠くにあっても、それが遠くにあることを認識できます。これは風景を 2 つの目で 3 次元的に見ているからです。しかし絵は本来 2 次元で、遠い近いなどの自分からの距離を表す 3 次元情報を持たないため、遠くにある色の濃い物体を濃い色のまま描くと、一般には遠近感の乏しい絵になります。

そこで「省略と強調」で、遠近感を強調することが重要です。
具体的には、遠くにある色の濃い物体は、見た色よりも薄く描き、近くの物体を濃く描きます。遠くにある物体を薄く描くことにより遠近感が強調され、深みのある絵になります。
また遠くの物体を薄く描くだけでなく、ぼやっと描けば、遠近感はさらに強調されます。 この「ぼやっと描く」には、Wet 技法を使いますが、これは後述。

3.色を塗る順序

風景画を描く場合、一般には遠景から塗り始めます。
たとえば、空を塗って、遠くの山並みを描いて、その手前にある近くの丘を描いて、、、、というようにです。
これまでは、このやり方で大体は成功してきたのですが、水平線の向こうに見えるビル群などの場合、最初に塗ると、基準がないので、どうしても色が濃くなってしまいます。
水彩画の場合、薄く塗るのは簡単ですが、濃く塗るのは簡単ではありません。遠景を濃く塗ると、近景をそれ以上に濃く塗る必要がありますが、それができないため、結果的に遠近感の乏しい絵になることがあります。
それで最近は、塗る順序を逆にして、どうしても薄く塗りたい個所は、前景の物体の色を基準にして、後で塗るようにしています。
最近、横浜の港の絵を描くことが多いのですが、この方法で成功しています。
(2018-12-14)



【ホームに戻る】