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編集:大田拓、更新:2019 年 11 月 25 日

水彩画について考えてきたこと(5)


1.絵の大きさについて

水彩画を初めて 7 年、いくつかのグループに加入して風景スケッチを楽しんでいます。展示会は年に 4 回ほどあります。
ほとんどの人は 10 号以下の作品を出品しますが、たまに 20 号を出品する人もいます。
狭い会場で、わざわざ 20 号作品を出品する人は何を考えているのだろうと、疑問に思うこともあります。

一般に、「大きな絵を描ける人は上手い人」という考えがあるようです。
たとえば、日展では(詳しくは知りませんが)、一定以上の大きさでないと受け付けてもらえないそうです。確かに未熟な人や初心者には大作は描けません。
日展のような本格的なものでなくとも、横浜でも水彩の大作だけの展示会があり、僕も見に行きます。特に水彩画の場合、大きく描くのは波打ち問題や絵具を均一に塗る難しさがあることを知っているので、水彩画の素晴らしい大作を見ると、技術面も含めて感心します。
しかしその一方で、この程度のモチーフを、こんな大きな紙に描く意味は何だろうと感じる作品もあります。

僕は絵の大きさは「胃袋の大きさ」のようなものだと考えています。胃袋の小さな人に多くの料理を与えたら消化しきれないし、胃袋の大きい人にはそれに見合った内容の料理が必要です。
つまり、なんでも大きく描けばよいのではなく、要するに、紙の大きさに見合った「量と質」のコンテンツでなければならない、と僕は考えています。
ただし、実はこの「質」に関する判断が難しいのですが。

2.AI に絵を見てもらう

最近は AI (人口知能) がさまざまな分野で人間に脅威を与えつつあります。最近 BS で観たのですが、ルーベンス (?) が描いた絵を AI に多数見せて学習させ、ルーベンス流で人物画を描かせたところ、その作品は 4000 万円で売れたそうです。

一般に「良い絵をたくさん見ると良い絵が分かるようになる」という言葉の意味はなんとなく理解できます。僕たちは子供の頃から美術館に通い、主として西洋人による「良い絵」を沢山見てきました。そして現在はそういう蓄積の上に立って、「あの絵は良い、この絵はちょっと」など判断しています。あの絵が良くてこの絵が良くない理由は、誰も言えません。各種の展覧会で入賞するかどうかはその展覧会を牛耳っている大御所の気持ちや感覚で決まっています。
僕は AI でのプログラミングのことは知りませんが、AI が判断するプロセスはまさにこのような方式だそうです。「良い絵を沢山見せて学習させる」と、AI が多数の絵の中から「良い絵」を選ぶようになるんだそうです。「摩訶不思議」ですが、実際にできるそうです。

将棋や囲碁の世界では人間が勝てないレベルに AI が進化しており、 AI で勉強した若手の台頭で大きな変化が起こりつつありますが、絵画の世界でもいずれ AI の影響が出てくるのではないでしょうか。
AI が人間に替わって絵を描いてくれるかどうかは別にして、その分野の大御所の目に留まりやすい (つまり入賞しやすい) 絵はどちらか、などの判断をしてくれるソフトが、いずれ登場しそうな気がします。

3.良い絵を描くには

スケッチ会の幹事は大変です。僕も経験がありますが、どこを選ぶかによって参加者数が大きく変わることがあります。一般に、行ったことのない、珍しい場所の場合は参加者が増え、良く知っている場所の場合は参加者が減る傾向があります。
スケッチ場所はどこでも良いわけではなく、季節感のある風景画を描けるように、幹事は季節に応じて場所を決めるのですが、良く知っている場所の場合、「あそこは何度も行ったから今回はやめておこう」という人もいるようです。
幹事の苦労も知らないで、いい気なもんだな、と思うこともありますが、個人的な感情は抜きにして、「あそこは何度も行ったから今回はやめておこう」というのは勿体ない考えだと思います。
(以下の内容は以前に書いたものと一部重複しています)

どのような場合に良い絵が生まれるのか、考えたことがありますか。
1 回行っただけでは、絵ハガキ的な風景しか見えません。
その場所を何度も訪れ、その風景を繰り返し見ることにより、そこに隠れている美しさ (Hidden Beauty) が見えてきます。
また同じ場所でも季節が変われば印象も変わってきます。たとえば、日本大通りの場合、黄色く色づいたイチョウ並木は絶品ですが、春や夏の青々したイチョウ並木も美しいものです。さらに同じ風景でも見るアングルや構図を変えることによって、従来と一味違う絵ができたり、新しい発見があったりします。
その場所を何度も訪れ、その風景を繰り返し、または違うアングルで見ることが良い絵を描くことにつながります
隠れている美しさが隠れている傑作 (Hidden Masterpiece) になる可能性もあります。
「あそこは何度も行ったから今回はやめておこう」という考えは絶対にとらないでください。

4.宮ケ瀬スケッチ

昨年は 10 月末に八ヶ岳にスケッチに行ったのですが、今年は八ヶ岳に出かけるチャンスを逃してしまいました。
台風 15 号と 19 号の影響で中央高速が長期間通行止めになったこと、通行止めが解除されてからも前線が列島に居座り続けて晴天が続かなかったことなどが理由です。
11 月中旬以降に晴天が続くようになりましたが、もう(八ヶ岳は)手遅れでした。

横浜市内でも秋の訪れが年々遅くなっています。そして風景画を描いているため、秋の訪れの遅れを痛感しています。たとえば、日本通りのイチョウ並木は、11 月 21 日時点で、まだ少し黄色くなりはじめた程度で、とても「秋のイチョウ」と呼べる状態ではありません。
それで八ヶ岳に行く代わりに、11 月中旬、仕事の合間を見て、神奈川県西部にある宮ケ瀬湖に数回出かけました。
次の絵は宮ケ瀬湖の「水の郷」というビジターセンター近くで、湖を左に見ながら(終わりかけの)紅葉を描いたもの。

次の絵は同じく宮ケ瀬湖ですが、別の場所から「虹の大橋」を描いたものです。
この日は曇りの予報のため出かけたのですが、途中で降られました。
今年はどうもツキがなかったようです。

(2019-11-25)



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