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編集:大田拓、更新:2020 年 1 月 30 日

最近の出来事から(2)


1.横浜市長の説明会

2020 年 1 月 20 日(月)夜 7 時から、横浜市旭区でのIR誘致に関する説明会を聞いてきました。
最寄り駅から旭区公会堂まで歩きながら、土日の昼間にやってくれたらもっと多くの市民が聞けるのに、なぜ平日の夜に開催するんだろうと思いました。聞きに来る市民が多くならないように平日の夜にやるのかもしれないな、と勘ぐれば勘ぐることもできます。

約 500 人収容可能な公会堂はほぼ満席で、司会は元TVアナウンサーの渡辺真理さん。
彼女は横浜市民とのことですが、IRへの賛否は言わず、公平な司会業に徹していました。

林市長の説明内容は、2019 年 8 月の市の説明内容から少し変えています。
静岡大学の鳥畑教授から批判されたような、突っ込まれそうな部分の説明は省き、推進側に都合のよい説明を強調していました。
たとえば、なぜIRが必要かですが、水道管などのインフラが劣化しており、今後広範囲でその対策を行う必要があるがお金がない。横浜は大企業が少ないので法人税は元々多くない、今後の少子化で横浜の市民税は不足していく、さらに東京、大阪、名古屋などに比べてインバウンド(訪日外国人)が少ない。だからIRが必要なんだ、というストーリーです。
説明では「なぜカジノが必要か」には答えないのですが、質疑応答の段階で「カジノがないと経営が成り立たない」と明言しました。
つまり、政府のIR推進法の内容では「稼働率の低い大規模なMICE施設を作って維持するには、収益力の高いカジノがないと、経営的に厳しい」ということです。

市長の説明会は横浜 18 区全部で行われる予定で、まだ半分くらいですが、どこの区でも同じような質問が出るのでしょう。「こういう質問にはこう答える」というシナリオができ上がっているように感じました。
たとえば、「なぜ市民の声を聞かないのか」という質問に対しては「選挙で選ばれた皆さんの代表である市会議員の意見を聞いています」という回答です。
しかし、これは詭弁です。なぜなら 2019 年 4 月の市会議員選挙時点では「IRは白紙で、市民の声を聞いて検討する」という説明であり、横浜市会の自民、公明の候補者は「まだ決まっていないから争点にはならない」という説明でした。こういう説明で選ばれた自民、公明が過半数を占める議会で「市会議員の意見を聞いています」「彼らは皆さんの代表です」と言われても誰も納得しないでしょう。
2020 年の 2 月〜 3 月にかけて、また説明会がありますから、質問する方も勉強してもっと核心を突く質問をする必要があります。

2.パシフィコ横浜のこと

MM線の「みなとみらい駅」から海側に 8 分ほど歩いた所に「パシフィコ横浜」があります。ここはヨットの形をした豪華なホテル(グランドインターコンチネンタルホテル)、東京ビッグサイトに匹敵する展示場、国際会議場などがセットになっている、いわゆるMICE施設になります。さらに 2020 年 4月には「パシフィコ横浜ノース」が完成し、国内最大のMICE施設になります。

既存のパシフィコ横浜のMICE施設部分は、現在稼働率が相当高く、「パシフィコ横浜ノース」の完成が待たれていたそうです。
パシフィコ横浜の敷地面積を概算してみると、1/5000 の地図上で 14cmX6cm の長方形と見なすことができるので、実際には 700m X 300m で、敷地面積は 210000 平方メートル、つまり 21 ha です。緑地部分(臨港パーク)を含めてもせいぜい 25 ha で、山下埠頭の約半分です。
横浜には既にこれだけの規模のMICE施設があるのに、なぜパシフィコ横浜の約 2 倍の規模の施設を山下埠頭に作るのでしょうか。 

パシフィコ横浜の場合、ホームページで見ると、民設民営の第 3 セクター方式と説明されています。その事業体(運営会社)は、(株)横浜国際平和会議場で、この会社には横浜市、神奈川県などが出資しています。
横浜市が筆頭株主(24.58%)で神奈川県が2番目(11.99%)の株主です。土地は横浜市が所有し、ホテルはホテルの専門会社が運営し、ホテル以外のMICE施設は(株)横浜国際平和会議場が運営しています。

参考までに(株)横浜国際平和会議場の社長は(2018 年 6 月から)「中山こずゑ」さんという女性です。入社は日産自動車ですが、林市長からよほど高く評価されていたのでしょう、その後横浜市に引き抜かれて、文化観光局長を勤めた方です。

僕は、「民設民営」とは横浜市や神奈川県は全く出資しないことを指すと思っていたのですが、これは素人の浅知恵で、横浜市や神奈川県が出資して、別の民間会社にやらせる形にしているだけです。
幸いここは利益を出していますが、もしここが破綻するような事態になれば、横浜市にも損害がでます。

3.IRの事業性に関する検討(1)

横浜市の 2019 年 8 月 22 日の資料では山下埠頭にIRを誘致することにより「民設民営で年間1000億円の税収増が見込める」と書いてあります。年間1000億円という金額は横浜市民の市民税の約 1/4 に相当する金額で、山下埠頭の 49 ha の土地を提供するだけで、これほどの税収増があるのなら、それは誰でもやってみたくなるでしょう。
しかし、話がうま過ぎるように思います。うま過ぎる話は要注意で、うまく行かずに横浜市が赤字を背負い込むだけの結果にならないか心配しています。

IR事業の構成に関しては、IR施設法で細かく規定されていますが、 (1)カジノ施設、(2)ホテル施設、(3)MICE施設、(4)その他の施設で構成されます。特にMICE施設ですが、従来のMICE施設をさらに大規模化したものが必要です。なぜ大規模なものが必要なのかIR施設法を作った政治家の皆さんに訊いてみたいところですが、林市長が認めたように「大規模過ぎるため稼働率が上がらず、MICE施設単独では経営が成り立たない」のは自明だそうです。そこで、カジノ施設と一体的に運用することで採算性を保証する、ということになっています。

そこで、「民設民営」の話になりますが、横浜市の出資が少額にとどまるなら、仮に破綻したとしても横浜市が大きな損害を被ることはありませんが、実際はどうでしょうか。
最終的にどのような事業構造になるかは、横浜市と事業者との話し合いの結果を待つ必要がありますが、たとえば、パシフィコ横浜と類似の下図のような事業構造が予想されます。

具体的に説明すると、IRを一体的に運営するIR統括会社(ここは横浜市、神奈川県その他が出資すると予想)があり、この会社はカジノ事業部門、ホテル事業部門、MICE事業部門、その他の事業部門で構成されます。土地は横浜市が所有し、カジノとホテルは専門業者が運営し、MICEとその他の事業はIR統括会社が運営するのでしょう。
ここで、IR統括会社にカジノ業者(たとえば、トランプ大統領と親しいラスベガスサンズなど)が出資するのかどうか、横浜市の出資額がどの程度になるか、などが興味があります。

2019年11月17日の朝日新聞に日本総研の藻谷さんが、TDL(東京ディズニーランドランド)に比べてアクセスの良くない山下埠頭に、TDLよりも多い年間4000万人が訪れる、という市の説明に疑問を呈しています。
また海外のカジノ事情に詳しい経済学者は、横浜市の試算(年間1000億円)はシンガポールの有名なカジノ(マリーナベイサンズ)の実力と比べても、3 倍ほど大きいと言っています。

僕は専門外ですが、素人なりに咀嚼して横浜市が赤字を背負い込む事態を避けたいと考えています。次回以降で、事業性の課題をもう少し詳しく検討していく予定です。
(2020-1-30)



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