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編集:大田拓、更新:2020 年 5 月 13 日

コロナ後の世界


1.パンデミックリスク

現在世界中を襲っているコロナ禍がいつ収束するかは分かりませんが、一日も早く収束することを願いながら、コロナ後の世界がどうなるか考えています。
コロナ後の世界の全体像は、浅学非才の僕の能力をはるかに超えるので分かりませんが、最低限、次のことは言えるでしょう。
9.11の同時多発テロ以後、テロリスクが、現在においても人々の行動や経済活動に大きな影響を与えています。
これと同様、変異した新手のウイルスは今後も発生する可能性があるため、コロナ後の世界でも相当の長期間に亘ってパンデミックリスクが人々の行動や経済活動に大きな影響を与えるようになるでしょう。
この数十年、世界は自由貿易の推進によって経済発展してきましたが、これにパンデミックリスクに起因するブレーキがかかります。そして経済活動や社会活動の一部の領域においてパンデミックリスクが高いが故に、排除される(または消滅する)ものが出てくるでしょう。

思いつくままに具体例を見て行きましょう。
まず、言えることは今後はグローバル化が縮小する、または過度なグローバル化が是正されるのは間違いないということです。
今回、マスクや医療保護具がいつまでたっても入手できないのは、生産を中国に大きく依存していたからです。
したがってこの騒動が収束した後は、必要不可欠な医療保護具は最低限国内で生産する体制に移行していくでしょう。医薬品は日進月歩していますから、原油のように備蓄すればよいというものではありません。

食料も医療と同様に重要です。
今後地球温暖化や人口増加のせいで食料不足が起こる可能性は十分あります。世界中の国々で食料を奪い合う事態になれば、マスクと同様に、各国は自国民への食料確保を優先し、他国への食糧の輸出を制限するでしょう。
日本に牛肉や穀物を輸出したがっているアメリカだって、非常時になれば日本を助けてくれる保証はありません。日本は食料自給率が低すぎます。いざという時に困らなくて済むよう、日本はもっと自国の農業を保護する必要があります。
この観点から、TPP(環太平洋経済連携協定)において、一部の見直しは必須になるでしょう。
具体的には、輸出入の関税を一律に低い値に誘導するのではなく、安全保障上必要な物品には「安保関税」ともよぶべき特別な関税を上乗せして、日本人が生きて行く上で必要な農産品や医薬品の産業を保護する必要があります。

モノづくりも今回のコロナ禍の影響を大きく受けています。これは言うまでもなく、部品生産の供給網を世界中に広げ過ぎたからです。しかし規模が大きいため、マスク生産を国内生産に切り替えるように簡単には進みません。国内生産比率は少し高くなるでしょうが、それだけでは絶対量が足りませんから、パンデミックリスクを最小にするように、グローバルチェーンの輪を適切なサイズに変更または縮小していくでしょう。

インバウンド(訪日外国人)に過度に依存する観光政策も見直しが必要です。
この数年間、訪日外国人が日本の観光地を専有するような姿をテレビで見てきましたが、日本の伝統や文化を餌にして、先人の遺産を食い潰しているようで、僕はどうもこの風景になじめませんでした。
インバウンドに大きく依存する観光政策は、パンデミックリスクが高いということが、今回の騒動で良く分かりました。外出自粛要請の影響で窮地に追い込まれたホテルや旅館には気の毒ですが、収束後は、インバウンドよりも国内旅行者に重点を置く本来の姿に戻ってほしいと思っています。

2.アベノミクスの終焉と横浜市政

日本は既に人口減少時代に突入しており、経済政策においても成長が続かないことを前提にした政策が必要です。「便利さ」の代名詞であったコンビニで、昨年頃から24時間営業を止めるという話が出ていますが、これは遅すぎたものの、時代の節目を示唆する象徴的な出来事です。
一極集中の東京ですら、2020年を境に人口減少に転じると予測されています。したがって、政府は何年も前に、拡大政策から転換するべきでしたが、異次元緩和と称して市場に大量に資金を投じて経済成長を追い求めてきました。「1%」なんて、科学技術の世界なら誤差範囲の数値ですが、「1%成長した」なんて安倍政権は自画自賛してきたのですから、あきれるばかりです。
アベノミクスは、量的な拡大(成長)から次の時代へと戦略を切り替えるべき時代の最中にありながら、時代の変容に目を瞑って拡大路線をひた走りに走ってきたのですが、コロナの影響で遂に終焉を迎えます。

横浜市政はアベノミクスと歩調を合わせるように拡大路線を走ってきて、政策転換を行うタイミングを逸したまま、今日を迎えています。
2019年11月に横浜ハンマーヘッド(新港埠頭ビル)が完成した当時、横浜港に同時に4隻(5隻?)の客船が着岸できるようになったと市長は自慢げに話しましたが、今後はそれほど多くの客船が横浜港に同時に入港することはありません。 横浜港でのクルーズ船内の感染騒動で、クルーズ船の危険性が明白になったため、客船の寄港はどこの港でも、今後はあまり期待できません。
またパシフィコ横浜ノースは国際展示場が不足するとの見込みに基づいて拡張された施設であり、拡大路線の典型ですが、展示会、特に国際的な展示会のニーズは今後急減し、コロナ後はこれらの施設の使用は、国内用展示会などに相当程度制限されるでしょう。
横浜市はまた、神奈川芸術劇場や県民ホールがあるにも関わらず、ヨーロッパの劇場に匹敵する世界規模のオペラ劇場も造ろうとしています。採算をとるのが難しく、運営に多額の税金を投入する必要がある施設を作ることに、なぜ固執するのでしょうか。
横浜市はIR誘致資料で、今後の人口減による税収減を心配していますが、本当に心配なら、若い人たちがもっと横浜に住みたいと思ってくれるように、子育て支援など、地道な政策を積み重ねる必要があるのではないでしょうか。
林市長は箱ものに代表される派手な政策を好み、地道な政策は肌に合わないようです。

3.コロナ後の世界におけるIR誘致の意味

現在、横浜市はコロナの影響に関わりなくIR誘致を進める姿勢を崩していませんが、いろいろな面で影響はさけられません。
まず、昨年末から始まった市長説明会ですが、2020年5月時点でまだ6つの区で説明会が終わっていません。 僕は旭区の説明会に参加しましたが、あれは「三密」状態の典型的なものですから、コロナ禍が収束するまで開催できません。
来年1月から7月までに国土交通省へIR誘致計画を申請するようですが、コロナ禍の中でそれまでに18区全部での説明会を終えることが果たして可能でしょうか。「全区で説明する」は、市長が約束したことですが、まさかオンラインで「説明した」ことにし、しゃあしゃあと申請するのでしょうか。先の選挙に引き続いてまた「うそつき」と言われますね。でも「うそつき」批判にはもう慣れっこかもしれませんが。

昨年8月22日に発表された横浜市の説明資料では、横浜はインバウンドが少ないから税金収入が少ない→インバウンドを増やすためにカジノを作る、となっています。
つまりインバウンドを増やすことはIR誘致の大目的だったはずですが、コロナ後の世界で、従来のようにインバウンドが大挙して日本を訪問してくれる事態は期待できません。つまり、カジノを作る当初の大目的が崩れています。
さらに、カジノはパチンコと同様にパンデミックリスクが高いので、(国により)敬遠されるかまたは入場者を限定せざるを得なくなり、横浜市の税収増につながるほどの利益は上がらなくなるでしょう。

IR整備法ではカジノ、ホテルに加えて大型のMICE施設の設置が義務付けられています。このMICE施設は、パシフィコ横浜や東京ビッグサイトなどをはるかに凌ぐ大きさで、大き過ぎて稼働率が上がらないようなものが必要です。稼働率が上がらないので、収益率の高いカジノで経営をなりたたせる構造です。
これは世界の経済情勢が今後も拡大を続ける、との想定の下で作成された政府による案です。
コロナの後、世界経済が大きく落ち込むことは確実です。そしてこの経済の落ち込みは一時的で、数年後に再び以前と同じような拡大が続く、と予想するは一人もいないでしょう。 コロナの影響は一時的なものではなく、世界の経済活動や人々の行動様式に大きく影響を及ぼすでしょう。

従来の延長の拡大路線から次の時代の路線に切り替えるべき時代がきていることは誰の目にも明らかです。
経済状態が大きく変わりつつある中で、大き過ぎて稼働率が上がらない大型のMICE施設を山下埠頭に作れば、パシフィコ横浜と共倒れになるのは明らかです。こういう状況を無視して大型のMICE施設を作るのは、太平洋戦争末期に戦艦大和や武蔵の製造に固執した旧日本軍と同じ発想です。 旧日本軍は戦争の主役が戦艦から飛行機に移行しつつある中で、大和や武蔵などの巨艦にこだわり続けてアメリカに敗れました。

国交省はコロナ後の世界を見据えて、「IR整備法」を廃案にするべきでしょう。
政策の大きな転換が必要な時期にコロナウイルスの問題が発生したことは、僕には神の意思のように思われるのですが。
(2020-5-13)



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