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「毎日が金曜日」
編集:太田拓、更新:2012年10月22日

英語と日本語の違い

1.言葉の意味の広さ

英文和訳の仕事にも随分なれてきました。
そのせいか、英語と日本語の違いについて考える機会が増えました。

英語と日本語では言葉の意味の広さに大きな違いがあります。
例外は固有名詞の場合で、たとえば、「Mt.Fuji」には「富士山」以外の訳はありません。固有名詞の場合は、英語と日本語が1:1に対応しています。

固有名詞以外の普通名詞、動詞、形容詞、前置詞などの場合は、一般に1つの英単語に該当する日本語は3〜4個あります。
たとえば、「assumption」という英単語を見ると、工学系の仕事をしてきた僕には、まず「仮定」という日本語が浮かびます。その次に浮かぶ訳としては「前提」です。しかし、それ以外にも「思いこみ」という訳もあります。「仮定」と「前提」とは似ていますが、ニュアンスが微妙に違います。「思いこみ」は、語源が同じくらい、はわかりますが、「仮定」とは相当の開きがあります。1つの英語に対して複数の日本語が対応する例は、前置詞や動詞でも同様です。
つまり、固有名詞以外では英語と日本語とは1:3〜5程度の対応があり、英語の単語はそれだけ1つの言葉の持つ意味の範囲が広い、ということができます。
日本人の頭では「メモ」「紙幣」「音符」は全く異なる概念ですが、アメリカ人は「note」1語でこれら3つの概念を理解します。
日本人とアメリカ人の頭の構造は、一体どう違うのでしょうか。

2.細やかな日本語と大雑把な英語

この現象を、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器に例えると、アメリカ人は8ビットで信号を変換し、日本人は12ビットで変換する、というようになります。ビット数が多いほど、現象を細やかに捉えることができますが、その分、CPU の処理量が増えます。
次の2枚の画像は、AD変換におけるビット数の違いを示す例で、右の画像は左の画像の表示ビット数を減らしたものです。一般に表示ビット数を減らすと細部が見えなくなります。

このように日本語と英語は、物事を表現する細やかさの面で大きな違いがあり、それが日本人の思考や行動様式や文化にも影響を与えていると考えることができます。
たとえば、野草は、アメリカ人にとっては雑草の類ですが、日本人にとっては天ぷらや七草粥の貴重な食材になります。
また、最近注目されている和食や、日本の製造業の品質の高さ、サービスの良さなども、その根本原因は日本語の細やかに考える思考様式が元になっているのかもしれません。

水森美苗さんの「日本語が滅びるとき」によれば、表意文字としての漢字と表音文字としてのひらがなとカタカナの3種類の文字を使うのは日本語だけで、日本語は世界の言語の中で確かに特異な存在のようです。
つまり、日本人が元々特異な存在だ、ということではなく、生まれてから日本語を話すことによって、特異な思考をするようになっていくということのようです。

今回は、日本語と英語の単語の持つ意味の広さの違いについて考えてきました。
日本語は、物事を細やかに考える性質があり(処理するビット数が多く、細かい現象を見やすい)、それが細やかな配慮を得意とする日本の強みにつながっています。
一方、英語は物事を大雑把に捉える性質があり(処理するビット数が少なく、基本的な現象を見やすい)、細やかな思考に欠ける代わりに、根本的な原理の発明につながり易いとも言えます。実際、科学分野で世の中を変革するような発見の多くは、欧米人によってなされています。
最近、文科省はグローバル化に対応するためとして小学校から英語を教える方針のようですが、日本語を疎かにしてグローバル化(英語化)を進めると、日本の本来の強みを失うことになりかねません。
(2012-10-22)
(★2015-9-10一部書き直し)



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