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「毎日が金曜日」
編集:太田拓、更新:2015年7月27日


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「be a driver」の意味について

1.「be a driver」の意味(1)

最近、マツダが「be a driver」というフレーズをテレビや新聞の広告に使っています。「最近」と書いたのは僕がこのフレーズについて気になり始めたのが最近ということで、広告自体はずっと以前から行われていたようです。 ともかく、このフレーズの意味がよく分かりません。
自動車会社の宣伝ですから、「driver」と言えば運転者のこと。命令形のフレーズですから、直訳すれば「運転者であれ」になります。
「運転者であれ」とはどういうことでしょうか。

意味が通じない場合は省略されている単語に気付かないことが多いので、省略されている重要な単語に僕が気付かないのかもしれません。
そこでいろいろ考えてみたのですが、たとえば、「be a good driver」ならどうでしょうか。これなら「マナーの良いドライバーになってください」のような解釈ができますが、僕はそれほどマナーが悪くないので、マツダからそんなことを言われる筋合いはありません。
また「be a mazda driver」ならどうでしょう。これなら「マツダの車に乗ってください」と解釈できますが、広告としてはピントがずれています。「マツダの車を買え」という前に、マツダの車がどれほど素晴らしいかを説明して視聴者がマツダの車を買いたくなるようにするのが筋でしょう。

2.マツダの技術開発

この英文フレーズの意味についてもう少し検討する前に、マツダの技術について少し触れておきましょう。
マツダと言えばスポーツカーの「ロードスター」くらいしか知らなかったのですが、数年前から素晴らしい技術を発表しています。
ただし、以下は僕が新聞や雑誌で仕入れた範囲の知識で、詳細まで正しいとは限りません。細かい点での間違いは大目に見てください。

数年前、マツダは「stop/start engine」を発表しました。
これは一般には「アイドリングストップ」として知られていますが、交差点の信号待ちでエンジンを一時停止することにより、ガソリンの消費量を減らすものです。 赤信号になったらエンジンを停止し、青信号になったらエンジンを再起動して発進することは、運転者がその気になれば、手動でできます。
しかし、手動でエンジンを起動して発進すると、どうしても1秒以上かかるそうです。 信号待ちの車が数台ならそれでも構わないのですが、信号待ちの車が数十台になったら、それぞれの遅れが積算されて、交通渋滞を引き起こします。 また、手動で行う場合は、「面倒くさい」ということで全員がアイドリングストップするとは限りません。
そこで、マツダの新技術になりますが、これはエンジンを再起動する時間を短縮するために、エンジンの各気筒が最も再起動しやすい位置に来た時点でエンジンを停止します。ここがマツダの特許だそうで、詳しいことは知りませんが、エンジンの各気筒の位置をセンサーで監視していて、ブレーキを踏んで速度がゼロになったら、各気筒が一番再起動しやすい位置に来た時点でエンジンを止めます。そして、ブレーキから足を外したら、自動的にエンジンを再起動し発進しますが、マツダの特許なら0.3秒で発進できるそうです。

このように、この技術はエンジンを止めるところにポイントがあるので、「start/stop engine」ではなく「stop/start engine」と呼ばれています。
この技術により、燃料消費量が3%程度削減されるそうで、地球の環境保護という面からマツダは大きな貢献をしました。最近はマツダ車だけでなく、他の会社の車にも採用されています。
それゆえ、マツダは生産規模では日産やホンダには劣りますが、技術革新の面からはトヨタに次いで素晴らしい会社だと僕は認識しています。

3.「be a driver」の意味(2)

このような最近のマツダの新技術を念頭に置いた上で、もう一度「be a driver」の意味について検討してみましょう。
自動車会社の宣伝文句のため「driver」を運転者と解釈しましたが、drive は「駆動する」意味で、したがって driver の本来の意味は、物事を前に進める牽引者を指します。
マツダはハイブリッド車や電気自動車のような流行を追うのではなく、従来のレシプロエンジンに、新しい視点からの技術を加えることによって燃料消費量を減らす技術を開発したわけで、このフレーズは、実はマツダの技術陣のプライドを暗に示しているのかもしれません。つまり、マツダは今後も新技術の牽引者であり続けますと、(命令形ですから視聴者に対してではなく)マツダの社員に対してアピールしているのかもしれません。

しかし、英文和訳を職業にしている僕(と言っても僕の英語力は大したことはありませんが)が、じっくり考えてこういう結論に達したわけですから、一般の視聴者がここまで深く解釈してくれるかは不明です。
その意味からは、このフレーズは成功とはいえません。
大金を投じた宣伝が、視聴者に正確に伝わらないのですから、はっきり言って失敗でしょう。

4.「be a driver」の意味(3)

今年のプロ野球のオールスター戦はマツダの提供で行われました。野球の合間のコマーシャルでは、マツダの車が颯爽と走っていき、その画像の上に「be a driver」のフレーズが映りだされました。
このシーンを見ながら、「マツダは今後も新技術の牽引者であり続けます」は考えすぎで、どうも違うなと感じました。コマーシャルの映像からは、「マツダの車はこんなに快適です」と言いたいように感じました。つまり、「環境に優しいマツダ車で快適に運転しましょう」くらいの意味かもしれません。
それなら「be a comfort driver」です。これなら何とか意味が通じるでしょう。
マツダの社員の皆さん、考え直してみてはいかがですか。
(2015-7-27)



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