trados
「毎日が金曜日」
編集:太田拓、更新:2020 年 1 月 14 日


(右上に飛行機が見える場合は、画面の幅を縮めてください)

翻訳業を辞めました

1.翻訳業のストレス

2009 年から続けてきた英文和訳の翻訳業を 2019 年末で辞めました。
定年退職後に翻訳業を初め、丸 10 年続けました。この 10 年間で、毎年ほぼ 25 万ワード(no machi 換算)翻訳しましたから、x 10 年で 250 万ワード翻訳したことになります。これがどれくらいの分量かは想像できませんが、定年退職後の時間の過ごし方として翻訳業は悪くなかったと思っています。
ただ、仕事が恒常的に続くので精神的に疲れること、現在 71 歳で目の疲れがとれないなど体力的にもつらいことが増えてきました。さらに専門分野が次第に変わってきて、仕事上の違和感が次第に大きくなってきたこともあります。
また Window 7 のサポートが 2020 年の 1 月に切れることも「辞める」きっかけになりました。続ける気持ちがあれば PC を買いかえればよいのですが、データの引っ越しが面倒ですね。
そういうことを総合的に勘案して 2019 年末に辞めました。

仕事は一般的に、翻訳会社からメールできます。毎朝メールをチェックして、依頼があると、翻訳内容を確認せずに、スケジュール面の確認だけで仕事を受けていました。
内容を確認してから(=ファイルを開いてから)(受けるかどうかの)返事をするような時間的余裕はなく、長年取引のある会社が「彼ならできる」と信頼して依頼してくれたのですから、基本的にはそういうやりかたを続けてきました。おそらく、他の翻訳者もそういう仕事の受け方をしていると思います。

ただ最近は、ファイルを開いてから「断れるものなら断りたい」と思う仕事が増えてきました。理由はさまざまです。
「英語以外の面でのストレスが大きい」仕事も結構ありました。同じクライアントでも、製品の説明の場合もあれば、(英文が非常に難しくなる)契約文言の場合もあります。
最近は、医療分野の仕事が増える傾向があります。一般に専門的な用語は事前に用語集として与えられることが多いのですが、「その分野に独特の言い回し」などは、専門外の場合は自信を持って翻訳することが難しいので、つらい仕事になります。ある癌治療薬の翻訳では「自分が何をしている不明」なまま納品したこともあります。
翻訳ソフトの問題もあります。最近の傾向として「翻訳者が使いやすい」ソフトよりも「翻訳会社が使いやすい」ソフトが多く使われるようです。これは翻訳会社から指定されると、翻訳者はそれを使わざるを得ないからです。機能の乏しいソフトで翻訳するのはつらいもんです。

2.翻訳ソフトウェアの変遷

翻訳業を始めた当時は Trados が全盛で、このソフト1本を使えればよかったのですが、Trados が SDL 社に買収され、バージョンアップが頻繁に繰り返されるようになってから、翻訳ソフトを取り巻く環境が大きく変わってきました。
つまり、さまざまな翻訳ソフトが出現し、翻訳者はそれらを使いこなさなければ仕事を回してもらえない状況になってきました。
僕の場合は、次の 3 系統のソフトを使っていました。
(1)SDL Trados Studio 
(2)Wordfast 3 + Wordfast 5
(3)Traslation Workspace
使用料金は、(1)は買い取り、(2)は 3 年間で約 3 万円のライセンスですが、Wordfast 3 のライセンスで Wordfast 5 を使えます。(3)は月々 10 ユーロの引き去りです。

使いやすさについてですが、LionBridge 系のソフトである(3)は、使い勝手が一番良かったと思います。 その大きな要因は原文と訳文が上下に表示されるため、目の移動が少なくてすむことにあります。また、Fuzzy match 文の場合、上下表示のために、違う個所が一目でわかる点も大きな特長です。
(1)と(2)は原文と訳文がテーブル形式で表示されるため、目を横方向に移動してチェックする必要があり、使い勝手が良いとは言えません。
(1)は自分で用語集をつくることができるメリットがありますが、タグを原文から訳文にコピーして貼り付ける機能がないので、タグの多い文章の場合は面倒です。
(2)はあまり使いやすいソフトではありません。Wordfast 5 はTMや用語集が自動的にリンクされるので、自分で設定する必要がないという点は評価できますが、特に用語を認識する機能が劣っています。たとえば「communicate」と「communication」の区別ができません。毎回、「お前、頭が悪いなあ」と呟きながら仕事をしていました。

これ以外にもいろいろ改善してほしい点はありますが、それらをいちいち並べ立てたところで、反映される可能性はほぼゼロですから、これ以上書きません。

3.Google 翻訳その他

この1、2年のことですが、Google 翻訳をよく使うようになりました。
タグを含む文章は苦手のようですが、タグを含まず、あまり長くない文章の場合は訳文をそのまま使えることもしばしばです。1人助手がいて、自分は「校正者」のつもりで仕事をすればよいので楽です。ただし、あまり長い文章の場合は、構文を適切に把握できないようで、まともな日本語にならないこともあります。人間が能力を発揮できるのはこういう場合だけです。
このため、産業翻訳に関しては必要な翻訳者の数が相当減ることは間違いないでしょう。

翻訳業を 10 年やって、自分の英語力はどこまで伸びただろうか、と時々考えます。
自信を持って言えるのは、「英文を読んで、構文をパッと掴む能力(またはセンス)が高くなった」ことくらいでしょうか。
in、on、 with、for などの前置詞の訳し方ですが、「翻訳メモリー」というソフトの仕組みのおかげで、詳しくない分野でもそれらしく翻訳はできますが、結局のところは、「その分野に非常に詳しくないと適切に翻訳することはできない」が結論です。

(2020-1-14)



【ホームに戻る】