(this and that of cheese)

チーズは砂漠で生まれ牧場で育つ チーズはいつどこで、どんな人たちによって作られ始めたか…これにはいろんな説があり、はっきりとした記録や資料は残っていません。
モンゴル生まれともいわれていますが、今のような製法は紀元前3000〜4000年ごろに中近東で発見され、牧畜の盛んな小アジア(現在のトルコ)からギリシャを経てローマに伝わり、ヨーロッパに広がっていったと考えられています。
ラクダが作った最初のチーズ?! 「砂漠を旅する商人が、羊の胃袋を干して作った水筒に山羊の乳を入れ、ラクダの背中に積んで砂漠を歩いていた。夕方になってその乳を飲もうとしたところ、水筒の中からは透明な水と白い塊が。おそるおそるこの塊を食べてみたところ、それはかつて味わったことのない、とてもおいしいものでした。」これは、アラビア民話の中に登場するチーズ誕生の物語。胃袋のレンネットで乳を固めるとという原理は、現在のチーズ作りと同じ。チーズは長い旅の途中で偶然にした、自然からの贈り物だったのでしょうか。
ヨーロッパのチーズはイタリアから ヨーロッパではワインや料理と同様にチーズもまたイタリアが、フランスよりも遥かに長い歴史を持っています。最初は北イタリアのロンバルディア地方につ伝えられたという説が有力で、そこからフランスをはじめヨーロッパ各地へ。現在のパルミジャーノやペコリーノなどの原形となった、保存性の高い硬質チーズは、古代ローマ軍の長期にわたる遠征の際の貴重な食料として、大きな威力を発揮したと考えられています。
チーズ王国フランスの誕生 ローマ西ヨーロッパ侵攻によってフランスに伝えられたチーズは、この国の起伏に富んだ地形と風土にはぐくまれ、個性豊かな数多くの名品を「各地で生み出します。チーズ作りに適した気候と自然環境にも恵まれ、やがてフランスは世界有数のチーズ王国へと発展。時代の変化にもかかわらず、フランスには今もなお、1000年、2000年といった古い歴史を持つ伝統的なチーズがたくさんあります。
アジアのチーズはモンゴル発 チーズのルーツがモンゴルにあるという説はかなり有力ですが、モンゴルで作られていたチーズは現在のように乳を発酵させるのではなく、加熱や酸の添加によって凝固させるタイプのもの。古代からモンゴルでは遊牧民が活躍し、紀元前3世紀ごろにはあらゆる家畜の乳でさまざまな乳製品を作っていたといわれています。モンゴルには、昔ながらの伝統的な方法で作られるチーズが、今も数多くあります。
古代日本における幻のチーズとは 日本でチーズは作れたるようになったのは明治時代ですが、それまでチーズと全く無縁だったわけではありません。奈良時代の遺跡から発掘された木簡には、酥(そ)というものが朝廷に献上されたという記録があります。酥はモンゴルのチーズとほぼ同じ製法の乳製品で、6世紀ごろ仏教とともに中国や挑戦半島から伝えられたもの。平安時代には不老長寿や強精に効果があると、貴族階級の人々に珍重されますが、鎌倉時代に入ると、これら乳製品の記録は途絶えれしまいます。酥はいわば、古代日本の幻のチーズ。
日本で最初にチーズを食べた人 一度は日本の歴史から姿を消したチーズが、再び現れるには江戸時代の中ごろのこと。今のようなチーズを日本で最初に食べたには、徳川5代将軍綱吉だったのだそう。8代将軍吉宗の時代には、インドから贈られた乳牛3頭を、現在の千葉県嶺岡牧場で飼育し、やがて白牛酪というバターを作るようになります。9代将軍家重のころには、オランダからチーズを輸入するようになったといわれています。
「醍醐味」の語源はチーズにあり 深い味わいや本当のおいしさを意味する「醍醐味」という言葉は、どうやらチーズから生まれたようです。仏典の涅槃経には、「牛より乳を出し、乳より酪をだし、酪より生酥を出し、塾酥より醍醐を出すが如し醍醐最上にして、もし服者あれば衆病みな除かる」とありますが、酪とは乳を煮たもので、これを煮詰めて熟成させたものからできる醍醐、つまりチーズのこと。この醍醐は最上の味で、万病を取り除くといっています。これが、醍醐味の語源なのだそう。
日本チーズの夜明け 日本でチーズが作られ始めたのは、1875(明治8)年、北海道開拓庁七重勧業試験場にて。しかしこれは試作どまり。本格的に製造が開始されたのは、昭和にはいってからのこと。北海道製酪販売組合連合会(現在の雪印乳業)が、スプレットタイプのチーズを瓶詰にして発売。1932(昭和7)年にはチーズ専門工場を設立し、生産開始。同じころ明治乳業もプロセスチーズの量販を始めます。しかし、一般的に広く普及するには至らないまま第2次世界大戦にと突入。チーズにとっても暗い時代を迎えることとなります。

【参考文献:ERIOシリーズ 日本放送出版 vol.13 チーズ】