植物に含まれる芳香成分精油について
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 植物から水蒸気蒸留で得られる揮発性成分を精油と総称し、通例、分子量は小さく極性の低い(疎水性)様々な物質の混合物である。水蒸気蒸留で分離できるのは精油が水と共沸するからである。英名をessential oilと称するように芳香があるので食品香料や化粧品香料として広く利用される。一般にはその原料の名を冠してオレンジ油、ハッカ油などと呼称することが多い。下表に日本薬局方に収載する精油を挙げる。精油に含まれる化学成分は主に次の2系統に大別される。
   (→主な精油成分の構造式はこちらへ)

精油名 基原植物 部 位 成 分
ウイキョウ油 ウイキョウFoeniculum vulgare(セリ科Apiaceae)
トウシキミIllicium verum (マツブサ科Schisandraceae)
果実 Anethole
オレンジ油 食用柑橘(Citrus)属諸種(ウンシュウミカンなど)(ミカン科Rutaceae 果皮 l-Limonene
ケイヒ油 Cinnamomum cassiaC. verum(クスノキ科Lauraceae 樹皮、葉,小枝 Cinnamaldehyde
チョウジ油 チョウジSyzygium aromaticum(フトモモMyrtaceae Eugenol
テレビン油 マツ(Pinus)属諸種(アカマツなど)(マツ科Pinaceae 材、生松脂 α-,β-Pinene
ハッカ油 ハッカMenta canadensis var. piperascens(シソ科Lamiaceae 全草 l-Menthol
ユーカリ油 Eucalyptus globulusなど同属近縁種(フトモモ科Myrtaceae) Cineole

1.フェニルプロパノイド系精油成分

 チョウジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油の主成分はオイゲノール(Eugenol)、アネトール(Anethole)、ケイヒアルデヒド(Cinnamaldehyde)なるシキミ酸経路で生合成される簡単なフェニルプロパノイド系物質である。オイゲノールは医薬品として口腔内殺菌薬、虫歯の鎮痛などに用いるほか、バニリンの製造原料とする。アネトール、ケイヒアルデヒドは製剤用賦香料などに用いる。因みにケイヒアルデヒドは香辛料として広く用いられるシナモンの芳香成分である。

2.テルペノイド系精油成分

 精油成分は低分子量でなければならないので、精油成分として存在するテルペノイドとしては極性の低いモノテルペンやセスキテルペンに限られる。オレンジ油の主成分はl-リモネン(Limonene)であり、いわゆる柑橘類の芳香成分である。リモネンは製剤用賦香料、食品賦香料、化粧品賦香料など広く利用される。柑橘類の果皮を圧搾して得られる油分にはリモネンが約90%含まれる。このように比較的安価に得られる沸点の低い炭化水素であるので、近年では環境にやさしい天然有機溶剤としての利用も高まりつつある。そのほか、ハッカ油に30~40%含まれるl-メントール(Menthol)は、芳香性健胃、駆風、局所刺激薬(うがい用、リニメント剤など外用)、香料(薬用、食用、たばこ用)として広く利用されるが、近年では化学合成品が主流となりつつある。アカマツなどマツ科Pinus属諸種の松脂を水蒸気蒸留して得られるのがテレビン油であるが、主成分はα-ピネンを始めとするモノテルペン炭化水素である。テレビン油は皮膚刺激薬として外用するほか、塗料の溶剤として広く用いられる。ユーカリ油の主成分はシネオール(Cineole)であり、消炎、清涼、防腐用に用いられるほか、最近では蚊などの虫除けローションとしても用いられる。イネ科レモングラスにはシトラールという鎖状モノテルペンが高含量で含まれ、香料として用いられる。