被告 第一準備書面

平成15年6月11日

抜粋


2、第2項「原告について」
 (2)同項(2)「組合活動」について

  イ、同項(2)@について
    概ね認める。

  ロ、同項(2)Aについて
    「事実上被告会社が指名したに等しい10名の立候補者について現場の
    乗務員間で票割がなされた」たことを除き、概ね認める。
    そのような事実はない。

  ハ、同項(2)Bについて
    前段については、「被告会社運転車両部部長若林 常夫氏は、2002年
    9月30日付け文書で、乗務員に対し、自覚を持って厳正な執務を励行す
    るよう呼びかけた(甲2)。原告は、これに対し、同年10月23日付若林 
    部長宛て手紙で、ミスの頻発は労働条件低の低下による疲労が原因と
    考えられること、乗務員のみに責任を負わせるのではなく、会社全体で 
    考えるべきであるとの意見を表明した」ことは認めるが、その余は否認し
    ないし争う。
    被告会社は、昨今の利用客の減少傾向のなかで事業を存続していくた 
    めに、平成14年4月をもって運転士、車掌の1日あたりの乗務時間(実 
    ハンドル時間)を伸ばす業務効率化を実施した。その結果、原告の所属
    する京都線の平均実ハンドル時間は、効率化以前は3時間54分であっ
    たが、効率化後は4時間21分となっている。ただし、民間鉄道会社の使
    用者団体である日本民営鉄道協会の平成14年4月の統計によれば、こ
    の効率化後の実ハンドル時間は、大手民営鉄道会社15社の中で標準
    以下の乗務時間であり過密といえない。
     後段については、「被告会社では、このようなミスの場合、謹慎2日間 
    の再教育と言う処分が通例であった」「10月27日から2週間にわたる研
    修を義務づけられた」という点を除き、概ね認める。
    被告会社では、本件のように停止位置を過走するミスを起こした場合、 
    原因分析や今後の対策を含めて再教育を行っているが、再教育は(懲 
    戒)処分ではなく、また、再教育に要する期間はケースバイケースであ 
    り、2日間とは限らない。また、被告会社では「このようなミスの場合、謹
    慎二日間の再教育という処分が通例であった。」という事実はない。

第2、同第2「無効な配転命令」について

 1、同第1項「前提事実を欠く配転命令」について

  (1)同項(1)について
    「配転命令」という点を除き、概ね認める。
    「配転」とは、「配置転換」の略語であり、労基法等の労働関係法規にこ
    の言葉はないが、従業員の配置の変更であってしかも職種内容または
    勤務場所が相当の長期間にわたって変更されるものをいう。
    被告会社は、原告に対し、「運転士」としての職種変更は行っておらず、
    「運転士」の職種のまま、駅業務を命じている。このような場合、被告会 
    社は「配転」とは認識しておらず、「他職運用」であると認識している(乙 
    第一号証)

  (2)同項(2)について
    原告の「被告によれば、本件配転命令が発令された理由は次のとうりで
    ある。」との主張については、本件配転命令が発令された理由が@ない
    しBに限られる趣旨、あるいは@ないしBが主たる理由であるとゆう趣 
    旨ならば、否認する。
    被告会社が原告に対し駅業務を命じた理由は、原告が、後述のとおり、
    停止位置過走事故を起こし、また以前にも運転士としての勤務上の問題
    点、基本動作の不徹底、整容、規律の保持の問題とそれに対する注意
    指導への度重なる反抗的態度の問題があり、原告の運転士としての適
    格性に問題があったためである。

    イ、同項(2)@について
     「5通」「原告が書いたものとわかった」という点を除き認める。
     「5通」は「6通」が正しい。
     被告会社は、原告の筆跡と断定したのではなく、一連の文書の筆跡と
     原告の筆跡に付き、「同一人物による筆跡であると認められる」旨の鑑
     定結果を踏まえ、原告の筆跡の可能性が高いので、引き続き調査する
     としたのである。

    ロ、同項(2)Aについて、
     「原告の筆跡とわかった」という点を除き、認める。
     被告会社は、原告の筆跡と断定したのではなく、一連の文書の筆跡と
     原告の筆跡につき、「同一人物による筆跡であると認められる」旨の鑑
     定結果を踏まえ、原告の筆跡の可能性が高いので、引き続き調査する
     こととしたのである。現に、調査続行が不能となったため、この件に関
     して何ら処分することなく今日に至っている。

    ハ、同項(2)Bについて
     原告の「原告には、この疑惑を追及されたことにより精神的動揺がある
     ので、当分の間、高槻市駅サービスセンターの応援を命じる。」との主
     張については、駅業務を命じた理由が「疑惑を追及されたことにより精
     神的動揺がある」という趣旨ならば、否認する。
     被告会社が、原告に対し駅業務を命じた理由は、原告が、後述のとう
     り、停止位置過走事故を起こし、またそれ以前にも運転士としての勤 
     務上の問題点、基本動作の不徹底、整容、規律の保持の問題とそれ
     の対する反抗的態度の問題があり、原告の運転士としての適格性に 
     疑問があったため、処遇のありかたを見極める必要性があったからで
     ある。

  (3)同項(3)について

    原告の「原告は上記@のハガキも、上記Aの手紙も書いておらず、全く
    身に覚えのないことであった。」「原告は身に覚えのないことで、」「原告
    は身に覚えのないことで動揺もしておらず、乗務する自信はあるので」と
    の主張については不知、「2002年11月5日、原告は高橋係長、小林マ
    ネージャーから、いずれも原告の筆跡であることがわかった旨告げられ 
    た。被告は、原告に手紙を書いたことを認めるよう強要した」「11月14 
    日、原告は稲垣人事係長から「そのため明日から勤務から外す。その件
    を理解して戴きたい」と告げられた」「11月22日原告は、山中課長より 
    「高槻市駅サービスセンター応援を命じる」という本件配転命令を口頭で
    受けた」との主張については否認し、その余は概ね認める。
    平成14年11月5日、被告会社は原告に対し、「筆跡異同診断結果票」
    (乙第2号証)を示して、一連の文書の筆跡と原告の筆跡につき「同一人
    物による筆跡であると認められる」旨の鑑定結果を告げたに過ぎない。 
    「強要」の事実など一切ない。
    平成14年11月14日、稲垣人事係長は原告に対し、「現在事実関係を
    調査していて、乗務業務につけない状態であることを理解しているか。」
    と尋ねたのである。
    それに対し、原告は、「会社として乗せられないと言ってるのは理解でき
    る」と返答した。
    平成14年11月22日、山中課長は原告に対し「一旦、駅業務を命じる。
    これは業務命令である。明日(23日)から高槻市サービスセンターに出
    勤するように」と駅業務を命じたのである。

(4)同項(4)について
     争う。

     被告会社が、原告に対し駅業務を命じた理由は、原告が、後述のとう
     り、停止位置過走事故を起こし、またそれ以前にも運転士としての勤 
     務上の問題点、基本動作の不徹底、整容、規律の保持の問題とそれ
     の対する反抗的態度の問題があり、原告の運転士としての適格性に 
     疑問があったため、処遇のありかたを見極める必要性があったからで
     ある。原告のその後の処遇を検討している最中に、怪文書の件が明ら
     かになり、調査を行ったに過ぎない。なお、怪文書の筆跡は、客観的な
     鑑定所の結果に基づき、判断したもである。

   2、同項2項「労働協約30条3項の運用に違反する配転」について

    「被告会社と組合間で締結された労働協約には、組合員の転勤、職種 
    の変更もしくは出向に関して「本人又は組合が異議を申し出たときは、 
    会社は詳細に調査のうえ、公正に審議判断して、問題の円満な解決に 
    努力する」(労働協約30条の3項、甲4)との規定がある。」という点を除
    き、争う。
 労働協約30条3項の「問題の円満な解決に努力する」ことと、本人の同
    意を得ることは必ずしも一致しない。
    また、移動に本人の同意まで要しないことは言うまでもないが、本件のよ
    うに本人の業務上の適格性に問題があると判断される場合に、職種の 
    変更をともなわず乗務業務から一時的に外すことについては、公共交通
    の安全性に関わることであり、これも本人の同意を必要としていないこと
    は自明の理である。
    労働協約30条3項は転勤もしくは職種の変更を伴う場合であり、本件は
    それに該当しない。
    被告会社は、客観的な鑑定所の鑑定結果に基づき、原告に事実関係を
    確認している。すなわち、被告会社は日本文化科学振興会天野瑞明氏
    に鑑定を依頼している(乙第2号証)。平成14年11月5日、高橋係長は
    平成14年11月1日付け「筆跡異同診断結果票」(乙第2号証)を原告に
    示し、一連の文書の筆跡と原告の筆跡につき「同一人による筆跡である
    と認められる」旨の鑑定結果を原告に告げた。

  3、同項3項「不法な動機に基づく配転」について

   争う。

   原告の「被告会社においてこのような原告の言動を嫌悪する動機・目的か
   らなされたものである」との主張は事実に反する。
   被告会社は、運転士業務への適格性に問題があった原告を一時的に運 
   転士業務から外したのである。これは、列車運行の安全確保と職場の規
   律保持の必要性に基づく有効な業務命令である。

  4、同第4項について、

   争う。

 第3、同第3「乗務手当の請求」について

   争う。

   乗務手当は、乗務勤務に就いたとき、走行距離に応じてではなく、実ハン
   ドル時間応じて支給する手当てである。乗務勤務に就いてない以上、乗務
   手当は支給されない(乙第3号証「労働協約」第62条、乙第4号証「給与
   規定」第25条)
   なお、駅勤務になった場合でも、例えば一昼夜交代勤務手当が支給され
   れば、運転士と遜色ない給与水準となっている。

 第4、同第4「慰謝料」について

   争う。

 第5、同第5について、

   争う。



  まとめ。

 以上のとうり、被告会社が原告に対し運転士業務に就かせず駅業務を命じた
理由は、原告が、停止位置過走事故を起こし、またそれ以前にも運転士として
の勤務上の問題点、基本動作の不徹底、整容、規律の保持の問題とそれの対
する反抗的態度の問題があり、原告の運転士としての適格性に疑問があった
ため、処遇のあり方を見極める必要性があったからであり、被告会社の行為は
正当かつ有効である。
すなわち、被告会社は、運転士としての適格性に問題がある原告一時的に運
転士業務から外し、駅業務を命じたのであるが、これは列車運行の安全性確
保と職場の規律保持の必要性からも正当かつ有効なものである。
さらに、怪文書に関する調査の間、すでに原告は自ら起こした停止位置過走事
故により運転士業務に就いていなかったが、調査の間については原告の精神
的動揺が容易に予想できるため、その点からも運転士業務に就けることができ
なかったのである。
原告は乗務手当を求めているが、乗務手当は、乗務勤務に就いたとき、走行
距離に応じてではなく、実ハンドル時間応じて支給する手当てであり、会社から
運転士としての適格性を認められて実際に乗務勤務に就いてrいることが支給
条件なることは言うまでもない。原告については、停止位置過走事故により運
転士としての適格性に問題があり、その結果、乗務勤務に就けなかったのであ
り、乗務手当の請求権がないことは明白である。また、駅業務に就いている間
は、基準内の賃金について全く変更がなく、さらに、一昼夜交代勤務などの勤
務形態によっては運転士と同等以上の賃金を得られる場合もあり、他職運用期
間であっても賃金上の不利益は全くない。
よって、原告がこの間の運転士としての乗務手当を求めている点については全
く理由がない。また、運転士業務から外れている期間や一連の文書の調査の
期間についても被告会社が何ら不法な行為を行った事実もなく、原告の慰謝料
請求にも全く理由がない。
以上の次第であり、原告の請求はすみやかに棄却されるべきである。


      
裁判報告

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