緑の風と青い光

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<<1・アキとミキ<<
 「わたしは風、…小麦畑をかけ抜ける緑の疾風…。」アキが言った。

 「わたしは光、…湖面を切り裂く青い閃光…。」ミキが続いて言った。

 13歳になったばかりのアキとミキは、いつものようにサポートスーツの翼を広げ、広い小麦畑の上を滑空していた。

 2人の巻き起こす風圧で、緑の小麦の苗がさざ波のように波打つ。

 「今日も風が心地いいねえ。」
 アキのヘルメット上部の「巣穴」からレナル・モモンガのモルが顔を出してしみじみと言った。

 「でも、ミキ、そろそろ家へ帰ってお手伝いをしないと、おかあさんにまた怒られるわよ。」
 同じくミキのヘルメットの「巣穴」からレナル・モモンガのメルが言った。

 「メルはあいかわらずこうるさいな。少しくらい遊んだって、すぐ帰れるさ。」

 「何言ってんのよ。あんたのAGのコントロールがあやしいから、こんな心配をしなきゃならないこと、分かってんの!?」

 「誰のコントロールがあやしいって!?」モルがむきになって叫んだ。

 「まあ、まあ、ふたりとも、けんかしないで。」アキが言った。

 「もう家が見えてきたわよ。」ミキが続いて言った。

<サポートスーツAG型とAB型のフライトモード>
 緑色のAGと青色のABは色以外は同型のサポートスーツ。
 フライトモードでは翼を展開し、滑空できる。
 脚部のコンプレッション・エンジンで、空気を圧縮し、間歇的に噴出して推進する。

 アキとミキは、まもなく自宅近くのガレージ前にふわりと着陸すると、ヘルメットとコントローラーを収納し、ベルトをはずしてサポートスーツを脱いだ。

 モルとメルはヘルメットの巣穴から抜け出すと、それぞれアキとミキの肩に飛び移った。

 「今日のおやつは何かなあ。」アキが言った。

 「クッキーだよ、たぶん。…でもまた焼き過ぎて焦げてなければいいけど…」ミキが続いて言った。

 「良く焼けて、板みたいにかたいのがいいけどね。」とモル。

 「あんたの好みなんか、聞いちゃいないわよ。」とメル。

 おやつは固めのクッキーだった。2人と2匹がガリガリとかじっていると、母親が台所から顔を出して言った。
 「ねえ、あんたたち、あしたはおとうさんが帰る日だから、早く宿題やっちゃって、部屋の中かたずけてちょうだい。」

 「ほい」異口同音に返事する2人。

 「ついでに部屋に飾る花をつんできていい?」

 「いいけど、寄り道するんじゃないよ、アキ。」

 「やだぁ、おかあさん、あたしミキだよ。また間違えている。」

 「え?今のはアキじゃなかったの?」

 「いま言ったのはミキだよ。こっち!」アキがミキを指さして言った。

 「そう…?ほんとにあんたたちは見分けがつかないねえ。」

 アキとミキはクッキーをかじるふりをして互いに舌を出した。

<左:ミキとメル。右:アキとモル>
 アキとミキは一卵性双生児。容貌・体格・性格が全く同じで、好んで同じ服を着る。
 両親でも見分けがつかなくなる時があるが、どうやら時々入れ替わっているらしい。
 モルとメルは補助神経系を埋め込んだレナル・モモンガ。
 サポートスーツAG型とAB型のプラグ・ユニットでもあり、人語を解し、話すことができる。
 2人は宿題を早々にすませると、部屋をかたずける前に家を飛び出し、サポートスーツを装着した。

 メルとモルが乗り込むとともにヘルメットが頭にかぶさり、翼が展開した。
 そして地平線まで広がる小麦畑にむかって、飛び上がった。

 2人の父親はこの広大な小麦畑の管理人兼技師で、今は各地に点在する農耕ロボットの点検と調整をするために1ヶ月がかりの旅に出ていた。

 2人のサポートスーツも父親が自作したものだった。

 「おとうさんが帰ってきたら、モルの頭の調整もしてもらわなくっちゃ。」とメル。

 「メルの性格をなおす方が先じゃないのか。」とモル。

 やがて2人は小麦畑の海の中に島のように突き出た丘についた。
 この丘の上には三色の花をつける野生の植物が群生していた。

 アキとミキは丘の上におりたって夢中で花をつみ始めた。
 メルとモルは「巣穴」から体を半分出し、ヘルメットの上に寝そべってひなたぼっこをしていた。

 しばらくして突然丘全体が影に包まれた。

 驚いて空を見上げるアキたち。
 彼女らの頭上に、いつのまにか、巨大な飛行物体が太陽をさえぎって浮遊していた。

 

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