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紹介

「原爆被害者2世の基礎現況と健康実態調査」報告概要


■目次■

紹介にあたって〜キムヒョンユルさんを追悼する
「韓国人原爆被害者と韓国人原爆2世患友の真相究明および名誉回復のための特別法の制定について」(キムヒョンユル)
「原爆被害者2世の基礎現況と健康実態調査」報告概要
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紹介にあたって〜キムヒョンユルさんを追悼する

韓国内の被爆2世(韓国原爆2世患友会)の闘いはついに韓国政府機関を動かして二世調査をかちとった。 韓国国家人権委員会の調査報告概要を紹介します。

闘いの中心で活動した被爆2世のキムヒョンユルさん(34歳)はこの5月29日死亡しました。母親は5歳のとき広島で被爆しました。キムさんは幼い頃から一度風邪をひくと1〜2カ月寝込など病弱でした。25歳のとき肺炎が治らないので血液検査をすると放射線障害の一つである「先天性免疫グロルブルリン欠乏症」と診断されました。その後も肺炎を繰返しながらも闘いの先頭に立ち、死亡する直前の5月20、21日東京で開催された国際会議に出席し訴えました。『韓国人原爆被害者と韓国人原爆2世患友の真相究明および名誉回復のための特別法の制定について』は、キムさんが5月21日に国際会議で配布し提起したものです。

被青同は彼の闘いを引き継ぎ核廃絶、被爆者解放・帝国主義打倒の闘いを全力でやりぬきます。

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韓国人原爆被害者と韓国人原爆2世患友の真相究明および名誉回復のための特別法の制定について

1.なぜ韓国人原爆被害者は広島と長崎にいたのか そして、韓国人原爆2世患友はなぜ存在するようになったのか

2.日本政府の「差別的な被爆者援護法」政策により、韓国人原爆被害者は人権蹂躙を「強要」されながら生きている

3.韓国政府「国家人権委員会」への陳情書の提出と原爆2世患友の健康実態調査

4 .韓国人原爆被害者と原爆2世患友の真相究明および名誉回復のための特別法<仮称>を求めて

2005年5月21日
「戦後60年」被害者とともに日本の過去清算を求める国際集会・東京会議

韓国原爆2世患友会・会長  金 亨律

皆さん、こんにちは

韓国原爆2世患友会の会長、金亨律と申します。

私の母は1940年に広島で生まれ、5歳の時広島で被爆しました。私は「先天性免疫グロブリン欠乏症[immunoglobulin deficiency with increased lgM]」という原爆後後遺症を病んでいます。この病気によって今まで20回以上にもおよぶ肺炎の再発、つまり「慢性閉鎖性肺疾患」に苦しんできました。現在は肺機能の80%以上が失われて残り20%程度で呼吸しており、日常生活にも多大な支障をきたしています(2003年7月にようやく呼吸器障害1級と判定されました)。

1 .なぜ韓国人原爆被害者は広島と長崎にいたのか そして、韓国人原爆2世患友はなぜ存在するようになったのか

 日本の不法な植民地収奪と侵略戦争により、300万名の韓国人は強制連行、拉致され、1日15時問以上の強制奴隷労働と日本軍「慰安婦」として人間以下の過酷な人生を強いられ、人権を蹂躙されつづけました。数多くの強制動員者のうち、ハプチョン[地名、慶尚南道]では植民地収奪により生活基盤を奪われた多くの農民が、生きるために日本(その大半が広島)に渡らざるをえませんでした。 そして、1945年8月広島で被爆するという悲劇にあい、苦痛に満ちた人生を歩むことになりました。広島と長崎で被爆した人々70余万名のうち、韓国人原爆被害者は7万名以上になります。韓国人原爆被害者は全被爆者の10%を占めているのです。7万余名の韓国人原爆被害者は祖国が解放されて故郷に戻りましたが、未曾有の原爆後遺症によって一生を病魔と貧困の中で送らざるをえませんでした。日本人と韓国人は同一の時空間で被爆しながら、日本政府の「差別的な被爆者援護法」政策により、韓国の原爆被害者はこの60年間差別と人権蹂躙にさらされる絶望的な人生を生きてきたのです。1991年韓国政府の発表によれば、原爆後遺症を病んでいる原爆2世患友は全国で2300余名に達するといわれます。[保健社会省傘下の韓国保健社会研究院、『韓国原爆被害者の実態調査』、1991年]

 韓国人原爆被害者1世の子女のうち、原爆2世患友は生涯原爆後遺症に蹂躙され、健康と生存権を法的に保障されないまま暮らしています。社会的疎外の中で病いと貧困は、彼らにも受け継がれました。こうした現実の下で、原爆被害者家族が経た精神的・肉体的・社会的苦痛は個人の問題ではなく国家・社会の問題であり、日本と韓国の市民社会が認識せねばならない間題なのです。

 特に、原爆後遭症に苦しむ2300余名の「原爆2世患友」がいる「原爆被害者家族」は、言葉では表わしがたい精神的・肉体的苦痛の家族史を各自が胸に抱きながら生きています。多くの原爆2世患友は病魔による将来への不安、誰も認めてくれない自らの病状への社会的無関心からくる疎外感にさいなまされています。「原爆2世患友」「原爆被害者家族」というレッテルは一個人一家族の力ではとうてい克服できない現実なのです。

 韓国人原爆被害者と原爆2世患友は、自分の意志とは関わりなく原爆後遺症に苦しむ原爆被害者になり、死よりも苦痛に満ちた人生を今も生きています。また、韓国人原爆被害者問題は1世だけでなく原爆2世、3世へと受けつがれた問題であり、様々な病気や障害に苦しむ原爆2世患友の問題は過去の歴史ではなく、現在の歴史であることを認識しなければなりません。

 なぜ多くの韓国人が他国である日本の広島と長崎で、前代未聞の悲劇である原爆にあわねばならなかったのか。しかも60年間にわたり、彼らは悲惨な苦痛に満ちた人生を「強要」され、人権を蹂躙されたまま生きてきただけでなく、その苦痛の集積が癒されないまま原爆2世患友までがさらに苦痛に満ちた人生を「強要」されねばならないのか。これらについての真相究明とともに人権と名誉の回復が絶対に必要です。

 なぜなら、様々な原爆後遺症に苦しむ韓国人原爆被害者と原爆2世患友問題の根源こそ、植民地時代に行われた日本帝国主義による植民地政策と韓国人への強制動員です。今こそ、未曾有の原爆後遺症のために苦痛に満ちた人生を生きている韓国人原爆2世患友の体を貫通する日本帝国主義の狂気の歴史に対する、正しい歴史認識が切実に求められているのです。

2 .日本政府の「差別的な被爆者援護法」政策により、韓国人原爆被害者は人権蹂躙を「強要」されながら生きている

 日本政府は、1957年「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(以下、医療法)」、1968年「原子爆弾被爆者に対する特別措置法(以下、特別措置法)」、そして1994年に「原子爆弾被爆者の援護に関する法律(以下、被爆者援護法)」を制定し、自国の被爆者35万余名には1957年医療法の制定から1998年まで累計で約2兆5千億円を投入してきました。そして、毎年原爆被害者向けの予算だけで2千億円を使っています。しかし、韓国人原爆被害者1世は1991年と1993年度にそれぞれ17億円、23億円で計40億円の基金を受けただけです。しかもこれは、「原爆被害」という特殊な状況におかれ、生涯を「原爆後遺症」に苦しんで生きねばならない韓国人原爆被害者にとっては、医療援護にも生活援護にもなりえない人道的基金にすぎません。

 韓国人原爆被害者は1945年に広島と長崎で被爆しましたが、60年間日本政府から「人権蹂躙」といえる差別的政策により、人間らしい生活を営めない悲惨な人生を生きてきました。日本人原爆被害者(1世)が「医療法」、「特別措置法」と「被爆者援護法」により医療援護と生活援護をうけて健康、治療、生活状態が改善されたのに比べ、韓国原爆被害者は「病苦と貧困の悪循環」に苦しみながら余生を送っています。

 そして、日本政府は広島と長崎を中心に原爆後遺症を専門的に治療できる原爆症専門の病院を建てるなど、「原爆治療専門システム」を構築してきました。また、「被爆者健康手帳」を所持している日本人被爆者(日本に居住する在日韓国人の原爆被害者や渡日できる韓国人原爆被害者を含む)は日本全国の病院どこででも高価な検査装置であるMRI、CTスキヤン、超音波検査などによる各種検査とガン治療、手術、入院を無料で受けることができます。また、原爆後遺症による病気の程度によって各種手当(毎月3〜15万円)を受けるなど、日本人被爆者に対する日本政府の被爆者援護政策は、原爆被害者自らが原爆後遺症を克服して自立できるように政策的かつ法的な支援策を行っています。こうして一般人のように日常生活を営み、正常な人生と家族を維持していけるように各種の福祉制度を充実させています(それでも十分とは言えませんが…)。

 一方、韓国人原爆被害者は原爆後遺症という未曾有に苦しみ続けていますが、韓国には原爆後遺症を治療してくれる専門の医療機関が1カ所もありません。こうした現実の中で、劣悪な健康状態は正常な生計活動を阻害し、家族全体が貧困に追いやられて「病苦と貧困の悪循環」に昔しみ、肉体的・精神的・経済的な苦痛にさいなまれて暮らしています。

 ここ60年間、このような日本政府の差別的で人権蹂躙といえる「被爆者援護法」政策と韓国政府の無関心と無視の狭間で、法的な保護なしに韓国人原爆被害者は放置されてきました。そして、その現実の下で韓国人原爆2世患友は原爆後遺症に苦しんできたのです。

3 . 韓国政府「国家人権委員会」への陳情書の提出と原爆2世患友の健康実態調査

 様々な原爆後遺症に苦しんでいる韓国人原爆被害者と原爆2世患友は、韓国政府の無関心の下で放置され、捨てられた存在でした。しかし、苦痛に満ちた人生を強要する国家権力の暴力と人権抑圧から自らを守るため、2003年8月「韓国原爆2世患友会」と「原爆2世患友共対委(共同対策委員会)」は「国家人権委員会」に生存権保護と人権回復のための陳情書を提出しました。こうして2004年8月、韓国政府は約60年後に初めて韓国人原爆被害者1世、2世に対する実態調査を実施することにしたのです。

 2005年2月14日「国家人権委員会」は、「原爆被害者2世の基礎現況および健康実態調査」を公式発表しました。公式発表によれば、原爆2世は同年齢の一般人に比して貧血、心筋梗塞・狭心症などの慢性疾患と憂鬱症、精神分裂、各種のガンなどに苦しんでいることがわかりました。全国の原爆2世1226名に対する郵便での設問調査の結果、男性の場合は貧血が88倍、心筋梗塞・狭心症81倍、憂鬱症65倍、ゼンソク26倍、精神分裂症23倍、甲状腺14倍、胃・十二指腸潰瘍10倍、大腸ガン8倍などでした。女性の場合も同じく、心筋梗塞・狭心症が89倍、憂鬱症71倍、乳房良性腫瘍64倍、ゼンソク23倍、貧血21倍、精神分裂症18倍、胃・十二指腸潰瘍16倍、肝ガン13倍、白血病13倍、甲状腺疾患10倍、胃ガン6倍などでした。

 また、原爆被害者1世1092世帯の子女4090名に対する情報分析の結果、すでに死亡した299名のうち、過半数の156名が10歳未満で死亡し、彼らのうち死亡の原因さえわからない人が182名(61%)に達しました。生存する原爆2世のうち先天性奇形児や先天性疾患があると応答した人は19名(0.5%)でした。 そして、原爆被害者1世1256名の場合、一般人に比して憂鬱症は93倍も高く、白血病や骨髄腫のようなリンパ・血液系のガンは70倍に達しました。また、貧血は52倍、精神分裂症36倍、甲状腺疾患21倍、心筋梗塞・狭心症19倍、胃・十二指腸潰瘍13倍などと調査されました。

 この「国家人権委員会」の公式発表で表れたように、今回の実態調査に応じた原爆被害者1世、2世は一般人に比べて高い疾病発生率であり、日本政府の原爆被害者1世、2世に対する実態調査と変わらない結果となっています。

4 .韓国人原爆披害者と原爆2世患友の真相究明および名誉回復のための特別法<仮称>を求めて

 2005年4月12日「韓国原爆被害者協会」「韓国原爆2世患友会」「原爆被害者と原爆2世患友の問題解決のための共同対策委員会」などの原爆被害者団体と市民社会団体と、民主労働党のチョ・スンス議員らは国会を訪問して、「韓国原子爆弾被害者と原子爆弾2世患友の真相究明および名誉回復のための特別法<仮称>」の制定を要求する請願書を提出しました。

 韓国人原爆被害者と原爆2世患友は、この60年間不当な国家権力によってアイデンティティと人間性を否定されてきました。韓国人原爆被害者と原爆2世患友は様々な疾病や障害により、人問として正常な生活を営むことができず、常に健康と将来に対する不安を抱えながら、社会的・経済的な貧困と疎外の中で暮らさざるを得ない現実にさらされてきたのです。

 あらゆる疎外を味わいながら悲惨な暮らしをしているのに、人間として最低限の人間らしさも維持できないように「強要」するのが国家権力です。人間の尊厳を自ら守れないまま、「人権」が蹂躙されたままの人生を強要することは、不当な国家権力の暴力です。様々な疾病と障害をもった原爆被害者は、死よりも苦痛に満ちた人生が誰かに代わってもらえるはずもないので、原爆2世患友と原爆被害者家族自らが解決していかなければならない絶体絶命の危機的状況にあります。

 1945年8月アメリカの原爆投下という人間性の否定はもとより、さらに日本帝国主義の侵略政策と軍国主義、皇民化教育が人間性を否定し、その侵略政策を美化して狂気の歴史を作り出しました。その狂気の歴史は清算されないまま60年間維承されており、様々な原爆後遺症に苦しむ韓国人原爆被害者と原爆2世患友の悲惨な苦痛に満ちた人生には、こうした不当な国家権力による人間性の否定に基づく暴力と人権抑圧が内在化されているのです。

 いかなる国家権力も悲惨な人生を強要することはできません。日本の広島と長崎で被爆して耐えがたい苦痛に満ちた人生を強要され、自らの意志とは関わりなく原爆被害者として生きなければならないのが韓国人原爆被害者です。特に、原爆2世患友を生み育てた母親として、女性として最低限の幸福すら味わえないまま、涙ながらに生きる韓国人原爆被書者の女性、彼女たちすべてが不当な国家権力の犠牲者なのです。

 今こそ、韓国人原爆被書者と原爆2世患友の傷痕は癒されねばなりません。ここ60年間の韓国人原爆被害者と原爆2世患友の悲惨な人生に対し、国家と社会が今こそその傷痕を癒し、解決しなければなりません。つまり、韓国人原爆被害者と原爆2世患友の真相究明と名誉回復のために努力しなければならないのです。

 今後、韓国の国会で制定されることになる特別法では、様々な原爆後遺症に苦しんでいる韓国人原爆被害者と原爆2世患友に対する悲惨な人生をこれ以上強要しないように、法的な生活援護と医療援護が保障されるべきです。そして、核兵器の残酷さを後世に記憶、継承し、これ以上核兵器の脅威から私たち自身の人権を自ら守っていきながら、人権による平和、人権のための平和が持続されるように努力していかなければならないのです。

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「原爆被害者2世の基礎現況と健康実態調査」報告概要

国家人権委員会
/ソウル特別市中区乙支路1街16今世紀ビル10階
/電話02-2125-9771送信02-2125-9779
/言論広報担当者:ユン・ソラ
(報道資料)
2005年2月14日(担当:人権研究担当官室 李パルレ2125-9741)

人権委、国家機関として初めて原爆1世、2世の実態調査

‘原爆1世、一般人より憂鬱病93倍、造血系統癌70倍多く発病’

‘原嬢2世死亡者の中で10歳末溝が52.2%、過半数が原因不明・未詳’

 国家人権委員会(委員長崔ヨンド)は、2004年8月から12月までの5ケ月間、原爆披害者2世に対する基礎現況と健康実態を把握するために、人道主義実践医師協議会に依頼し、「原爆被害者2世の基礎現況と健康実態調査」を実地しました。国内外の資料によると、1945年原爆で被害を被った韓国人は約7万名余り(推定値)で、この内1万名余(1世2,300人余り、2世世7,5OO人余り、1世は韓国原爆被害者協会登録者基準で、2世は推定値)が、現在韓国に生存していると推定されます。

 今度の調査は、原爆被害者2世の現況と健康実態を把握することによって、原爆被害者の健康上の問題と医療的な解決方案を用意し、社会的な共感帯を形成してより根本的で長期的な国家政策を樹立するための基礎資料を提供しようとして遂行されました。本調査は、

△原爆被害者1世・2世を対象にした健康関連郵便アンケート調査(l世1,256人、2世1,226人)
△一部被害者たちに対する健診(1世223人、2世49人)及び深層インタビュー(2世4人)
△原爆被害と関連した日本と韓国の支援制度に対する検討
などを通じて、被害者自身とその家族たちの健康と関連した多様な問題を把握することに焦点を置きました。調査結果の主要内容は次の通りです。

1.原爆被害者1世の健康実態

 慶南狭川地域に居住している一部原爆被害者1世(223名)に対する健診結果(血圧など17個項目)を、「対照群」(2001年度国民健康栄養調査を通して比べることができる一般国民)と比べた結果、弛緩期血圧、肝酵素、AST/ALS、血液要素[or尿素]窒素などは原爆被害者1世集団の数値が高く、へマトクリット、空腹時の血糖、クレアティニン測定値は低く現われました。

 また、郵便アンケート調査分析(1,256人)を通して明らかになった原爆被害者1世たちの疾病罹患状態(疾病が発生する程度)と2001年度国民健康栄養調査‘対照群(一般国民)’の疾病擢患状態を比べ、‘標準化罹患比’(対象群を基準にする時、分析集団の疾病発生程度を比率で現わした数値)を計算しました。その結果、一般国民に比べて原爆1世代で、憂鬱症がもっと多く発生し(93倍)、その次に白血病や骨髄種のようなリンパ・造血系統の‘悪性新生物(癌)’(70倍)、貧血(52倍)、精神分裂症(36倍)、甲状腺疾患(21倍)、心筋梗塞症や狭心症(19倍)、胃・十二指腸濱瘍(13倍)、喘息(9.5倍)、子宮癌(8.7倍)、胃癌(4.5倍)、脳卒中(3.5倍)、糖尿病(3.2倍)、高血圧(3.1倍)などの順序で現われました。一方、大腸癌、肝臓癌、皮膚癌、肺癌などの標準化罹患比は統計的に大きな意味がないと分析されました。

2.原爆被害者2世の健康実態

 原爆被害者1世の郵便アンケート調査を通して、子女たちの性別、生死可否などの基本情報を充点に提供した1,092世帯の子女4,080人を分析しました。その結果、原爆被害者2世の中で7.3%の299人が死亡したことが確認されたが、これらの死亡時の年齢は10才未満(52.2%)が最も多かったです。また、死亡原因では、原因不明や未詳のケース(60.9%)が最も多く、感染性疾患(9.4%)、事故死(8.0%)などの順に現われました。一方、現在生存している原爆被害者2世3,781人の内、先天性奇形と先天性疾病があると報告されたケースは19人(0.5%)で、この内、精神遅滞が7人(0.2%)で最も多く、脊椎異常4人(0.1%)、骨関節奇形2人(0.O5%)などがその後に続き、ダウン症候群、心臓奇形、先天性免疫グルロブルリン欠乏症、先天性黄疸、小耳症、兎唇などは各1人ずつ報告されました。

 この外にも、全国に散在している原爆被害者2世に対する郵便アンケート調査も行いましたが、応答者の中で本人の生年月日、性別などを正確に記載した1,226人のアンケート紙を分析しました。その結果、原爆被害者2世の男性が自ら報告した疾病の場合は、同じ年齢帯の一般国民に比べて、貧血88倍、心筋梗塞狭心症81倍、憂鬱症65倍、喘息26倍、精神分裂症【ママ】23倍、甲状腺疾患14倍、胃・十二指腸潰瘍9.7倍、大願癌7.9倍、脳卒中6.1倍、高血圧4.8倍、糖尿病が3.4倍高いことが調査されました。一方、肝臓癌、胃癌などの標準化罹患比は統計的に大きな意味がないと分析されました。

 一方、原爆被害者2世の女性達の場合は、心筋梗塞狭心症が89倍、憂鬱症71倍、乳房良性腫瘍64倍、喘息23倍、貧血21倍、精神分裂症18倍、胃・十二指腸潰瘍16倍、肝臓癌13倍、白血病13倍、甲状腺疾患10倍、胃癌6.1倍、脳卒中4.0倍、糖尉病4.0倍、高血圧が3.5倍高く現われ、乳房癌、子宮癌などでは統計的に意味ある差が現われませんでした。

 また、2004年11月3日から11月15日まで大久邱赤十字病院で原爆被害者2世49人(患者と把握された者を一部含む)を対象に健康検診(血圧など20項目検査)と共に深層面接(47人に対して個人の疾病歴、経済的状態、家族の支持を含む社会的関係など面接)を実施しました。その結果、健康検診項目の中で収縮期血圧、コレステロールなどで、原爆被害者2世集団が、対照群(一般国民)に比べて高く現われました。一方、深層面接結果応答者の中では筋骨格系疾患(18人)、全身脱毛・掻痒症・湿疹などの皮膚疾患(9人)、精神疾患(5人)を抱えていている人が多く、応答者の42.5%が職業がないと答え、一部応答者たちは、「差別が怖くて、原爆被害2世という事実を隠すとか、結婚などで困難を経験する」と明らかにしました。

 このような結果を見る時、原爆被害者2世も原爆被害1世と同じく、一般国民に比べて相対的に健康状態が劣悪であり、社会的に阻害された生活を送っていることが見られます。

3.日本の原爆被害者に対する支援実態調査

1994年日本政府は披爆50周年に臨んで既存の「原爆医療法」(1957年制定)と「原爆特別措置法」(1968年制定)を包括して、原爆被爆者に対して軍人及び軍属の援護に準する国家補償の精神により、「被爆者援護法」を制定しました。

 これによって、日本では被爆者の健康管理と生活向上、福祉増進のために国家が幅広い支援ができるようになり、被爆死亡者の遺族に対しても国家慰労金の性格の特別葬祭費を支給するようになりました。この法によれば、被爆者の国籍と関係なく韓国人被爆者もその受恵対象になることができます。

 しかし、現在日本では原爆被害者子孫に対する影響を研究・調査する次元で、原爆被害者2世に対する健診が行われていますが、1世とは異なり、原爆被害2世に対する政府レベルの具体的な援護対策や法律はありません。ただ、一部地方自治体(埼玉県、東京都、神奈川県、岡山県、山口県)が該当地域に居住している原爆被害者2世を対象に医療支援や健康管理を行える条例を制定して施行しています。

4.韓国の原爆被害者に対する支援実態調査

 原爆被害者の韓国人と関連する既存資料を調べた結果は、次の通りです。

 1973年12月慶南狭川に日本の市民団体である核兵器禁止平和建設国民会議の支援を受け、原爆被害者診療所を設置したのが韓国で原爆被害者を対象にした最初の支援事業だと見られます。

 韓国教会女性連合会が、1977年ソウルのセブランス病院で在韓被爆者無料治療支援事業を展開しました。

 韓日両国は、1979年6月25日在韓被爆者医療援護事業として、被爆者の渡日治療、韓国人医師の渡日研修、日本人医師の韓国派遣など三つの原則で合意しましたが、この合意内容の中で実行されたのは被爆者の渡日治療だけで、これすら毎年60人ずつ2ケ月間の制限的治療の水準で施行されました。結局、この事業はその実効性に対する異見によって、1986年11月2日中断されました。

 1989年韓国で全国民保険制度が始まり、政府は被爆者に対して本人負担金の内50%を負担する措置を取りました。

 盧泰愚大統領の1990年日本訪問を通して、両国政府が韓国人原爆被害者のために40億円規模の支援金拠出に合意し、国内原爆被害者たちに対する福祉事業の規模が多少拡大しました。しかし、日本政府は「支援金拠出は、戦争に対する日本の責任を認めて賠償するのではなく「人道主義的見地」から支援するもの」と主張しながら、韓国政府ではなく大韓赤十字社を相手の当事者にし、支援金を支払って執行を委託しました。一方、1996年には日本側の支援金の一部と政府支援金で、狭川原爆被害者福祉会舘が建立され、原爆被害1世たちの療養施設として運営されています。

5.実態調査の意味及び今後の計画

 今回の実態調査は、原爆被害者2世の健康問題に対して、国家機関としては初めて実施したという点に大きい意味があります。原爆による被害はいまだに科学的に充分に究明されえていませんが、本研究結果から、原爆被害はその特性の上1世だけではなく2世以降にまで及ぶ可能性が相当部分存在することが明らかになりました。したがって、原爆被害問題に接近するためには、原爆被害者1、2世に対する疫学調査及び分子生物学的・遺伝学的調査などが実施されなければならないでしょう。人権委は今後政府レベルで、2世以降にまで及ぶ健康上の被害問題に対して、より総合的で精緻な調査が行えるようにする一方、原爆被害者の健康権保護及び福祉のための政策を多角度に検討する予定です。

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