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第4話 南極説について

(1)

 年も改まったことですので、そろそろエンジンをかけて、本番モードで行きたいと思います。

 アトランティス南極説というのは、ベストセラーになったグラハム・ハンコックの『神々の指紋』によって非常によく知られるようになりました。したがって、すでに多くの方々もよくご存知だとは思いますが、もともとわりと古くからあった考え方で、1950年代後半ごろ、中世航海地図(ポルトラーノ)を研究していた米海軍水路部の海図専門家、アーリントン・マレリー大佐、さらに、米国ニューハンプシャー州のキーン州立大学で科学史を教えていたチャールズ・ハプグッド教授が、<ピリ・レイス1513年地図>などの解析から、アトランティス南極説の可能性を推論していたようです。
(イギリスの作家コリン・ウィルソンの『アトランティス・ブループリント』によると、ハプグッド自身は南極説ではなく、ピリ・レイス地図に描かれたブラジルの沖1000キロほどのところにある大きな謎の島―今は存在せず、セント・ポール島という岩礁が海面に顔を出しているだけ―こそが、アトランティスだと考えていたようです。)

 南極説の一番の特徴は、なんといっても、人類の生存はおろか、樹木も育たない厳寒の大地、氷に閉ざされた南極大陸が、なぜアトランティスなのか、というところにありますね。
 そもそも人間が住めない土地に、なぜ太古の文明が存在したのか――。
 南極説はこれを「南極は移動した」という考え方で説明します。
 1万数千年前の南極大陸は、現在のように極地にあったのではなく、もっと温暖な地帯にあった。ところが、地殻移動という地球規模の現象で、現在の位置まで急激に移動した!
 現在は2〜3キロもの厚い氷床に覆われた南極大陸が、かつては文明を育む温暖な地域にあった、しかも、急激に移動した――
 えー!本当?と、誰でも思ってしまいますね。

 この地殻移動という考え方は、前述のハプグッド教授(1982年に交通事故で死去)の独創によるもので、現在は、ハプグッドの考え方を継承するカナダ人の研究家、ランド・フレマスがアトランティス南極説を唱えています。
 ハンコックの『神々の指紋』によると、世界のあらゆる海底は今では地図化され、もはやどこにも大きな陸地が沈んだような形跡はないが、南極大陸だけはアトランティスの可能性がある!ランド・フレマスの意見を知って、それに気づいた、ということです。
 ハンコックさんは、ハプグッドとフレマスのふたりの考え方に乗っかったわけですね。

 さて、ハプグッド教授の地殻移動というのは、地球表面の地殻だけがズルッと滑るような現象だそうです。「オレンジの皮が、内部はそのままに、一度にずれるようなもの」で、そういう現象が実際に起きるというのです。
 「南極大陸はかつて、現在より3200キロほど北方にあり、南極圏の外の温暖な地域に位置していた」が、1万4500年ほど前、突然、地殻移動が起こり、1000年から2000年かけて現在の位置に移動した。
 ハンコックやフレマスは、このように説明しています。
(ハプグッドは、紀元前1万1000年〜1万年にかけての1000年間、としているようです。)

 こんな現象が本当に起きるのかどうか、というのがまず重大な疑問です。
 また、地殻移動が本当かどうかという問題と、アトランティスが南極に存在したかどうかは、本来、別問題でもあるんですね。
 でも、南極説というのは、アトランティスそのものの議論よりも、むしろ、この地殻移動の方に論点が移っているような感もあります。もう少し南極説に付き合ってみましょう。(2006年1月9日)


(2)

 アトランティスは南極大陸にあったのか――
 地殻移動のような現象が本当に起ころうが、起こるまいが、アトランティスは南極大陸に存在したとは思えない、と私自身は考えるのですが、それはしばらく置きまして、ハプグッドやフレマスの考え方には、かなり興味深いところもあるんです。

 地質学では一般に、2億5000万年くらい前の地球上には、パンゲアというひとつの巨大な大陸だけがあり、それが次第に分裂して移動し、現在のような姿になった――
 まあ、このように考えられていますね。

 その後の地球の姿を、もう少したどってみますと、
「1億年くらい前には、赤道あたりにチチス海という暖かい大海があり、北の大陸(ローラシア大陸)と南の大陸(ゴンドワナ大陸)とを隔てていた。この海からすべての海にむかって、暖かい海流が流れ出していた。
 南の大陸には、現在のアフリカ大陸や南米、インド、オーストラリアや南極大陸などが含まれていた。ところが、南北ふたつの大陸はやがて分裂して移動を始め、アフリカ大陸、アラビア半島、インドがユーラシア大陸にぶつかった。
 一方、オーストラリア大陸と南極大陸はひとつながりのまま南の方に移動し、今から5000万年くらい前、ふたつに分かれた。その頃から冷たい海流が南極をめぐるようになり、これによって南極大陸に冷気が閉じ込められるようになった。南極大陸の氷床はそこから発達を始めたのではないかという意見もある」
(参照:エンカルタ百科事典ほか)

 大体、こういうことのようです。
 南極大陸は何千万年もかけて現在の位置に移動してきたと、ふつうは考えられているようです。
 これが大陸移動説とか、プレートテクトニクスという考え方で、地球の表層は十数枚のプレートでできており、それらがぶつかり合ったり、もぐりこんだりしている。その動きは、年間で数センチの規模とされている。
 ところが、ハプグッドやフレマスの考えでは、地球の活動はプレートテクトニクスだけではなく、地殻がズルッと滑るような事件も起きるという。しかも、わずか1000年か2000年の間に、3000キロも南極大陸が移動するという。これが事実なら、とんでもない事件ですね。


 ちょうど今から10年ほど前、ハンコックさんの『神々の指紋』が日本でもベストセラーとなり、大きな評判になっていた頃、私はある科学雑誌で古代文明のページを担当していたのですが、編集部でもハンコックさんの本が話題になり、「うちでも特集企画として、大洪水をやってみようか」という話になりました。
 地殻移動の可能性は本当のところはどうなのか?それを知りたかったんですね。
 そこで、何人かのスタッフが分担して、地質学、惑星科学、考古学などの研究者に取材して、『神々の指紋』に述べられているようなことは本当なのかどうなのか、と聞いて回ったのです。ところが、結果は、「一笑に付された」といった感じでした。
 特に、「地殻移動」については、そんなことは起こりえないというのが専門家たちのはっきりした態度でした。常識的には地殻移動なんてあり得ない、ということらしい。それが地質学の一般的な考え方のようです。

 ですが、地質学の歴史というのは、そもそもA・ウェーゲナーの大陸移動説そのものが、20世紀初めにはまったく相手にされず、完全に忘れ去られたのち、数十年も経ってやっと復活して認められたという面もあるわけです。
 地球の歴史というような大きすぎるテーマには、まだまだ謎や不明なところがたくさんある。氷河期がなぜ起きるのかというメカニズムなども、まだよくわかっていないといわれていますね。現在の考え方はそれとしても、将来には、どんな思いがけない説が主流になっているかもわからない。
 実際のところ、地球の歴史というよりも、人類の文明の歴史くらいのスパンでも、まったく予想もできなかった事件が起きていた可能性だってあるかもしれない。

 たとえば、古代ギリシアの歴史家、ヘロドトスの『歴史』には次のような奇妙な記述があるのです。

「これまでの本書の記述は、一般のエジプト人および祭司たちの語ったところに従ったものであるが、それによって明らかになったことは、初代の王から最後に王位に就いたヘパイストスの祭司に至るまで、341世代を数え、(略)合計は1万1340年となるが、この間神が人間の姿をとって現われたことは一度もないという。(略) またこの期間中、太陽が4度その正常の位置より外れて昇ったという。現在太陽の沈んでいる方角から昇ったのが2度、現在昇っている方角へ沈んだのが2度あったというのである。しかも、エジプト国内ではその際に何の異常も起らず、陸や河からの収穫物、病や死に関する事柄にも影響は全くなかったという」
(巻2・142 松平千秋訳 岩波文庫)

 なんと、太陽が西から昇ったことがあるという!
 同じくプラトンも、問題のアトランティスについて述べた『ティマイオス』の冒頭付近で、こんなことを語っています。

「かつて太陽(ヘリオス)の子パエトンが、父の車に馬を繋いだものの、これを父の軌道に従って駆ることができなかったために、地上のものを焼きつくし、自分も雷に撃たれて死んだという、この話は、神話の形を取って語られてはいるが、その真実のところは、大地をめぐって天を運行するものの軌道の逸脱と、長期間をおいて間々起こる、大火による地上の事物の滅亡のことにほかならない」
(種山恭子訳 岩波プラトン全集)

 このような記録がけっこうあるわけです。
 エジプトやギリシアだけではなく、中国や、インド、南米、北米など、ほとんど世界中の民族には、予想もしなかった大異変とか、天変地異の記憶があるようです。どうも人類のなかには、そんな記憶が残っているらしい。でも、いったいそれがどんな事件だったのか、今でもまだよくわからないんですね。(2006年1月11日)


(3)

 このような記録のうち、ヘロドトスの記述について、もう少しみてみようと思いますが、ヘロドトスによれば、
「この期間中、太陽が4度その正常の位置より外れて昇ったという。現在太陽の沈んでいる方角から昇ったのが2度、現在昇っている方角へ沈んだのが2度あった」
ということです。
 エジプト人やエジプトの祭司から聞いた話として、そんなことがあったというのです。

「現在太陽の沈んでいる方角から昇ったのが2度、現在昇っている方角へ沈んだのが2度あった」
 これは、東から昇り西に沈むはずの太陽が、じつは西から昇り東に沈んだ時期が2度あった、という意味ではないかと思います。
「太陽が4度その正常の位置より外れて昇った」
ともいうことですから、太陽の昇る方向は、東→西→東→西→東、と4回変化した。
 おそらく、そういうことを言っているのだと思います。

 ただし、ヘロドトスの記述は歴史的な事実を伝えているのか、あるいは、話を空想的に盛り上げているだけなのか、真実のほどがわかりません。ですから、まったくのホラかもしれない。そんな可能性も十分あるわけです。
 しかし、もし仮に、ヘロドトスが何かの真実を伝えているのであれば、東から昇って西に沈むという太陽の運行にも、じつは異変が起きる可能性がある、ということになりますね。
 私たちには常識以上の大前提である「太陽は東から昇る」という真実も、ひょっとしたら、真実でないときがあるのかもしれない。

 まあ、あまり考えたくないことですが、ヘロドトスによれば、「太陽が西から昇り東に沈んだことも2度あった」という。
 しかし、太陽が西から昇る、とはどういうことなのか――

 これはまず、地球が上下さかさまにひっくり返ったような事態が考えられますね。宇宙には上も下もありませんから、上下さかさまになるという表現は変ですが、北極を上に、南極を下に考えた場合、上下がさかさまにゴロンとひっくり返れば、たぶん、太陽は西から昇ることになる。そうなるのではないか・・・。
 私としては、まず、そう考えてみたのですが、これはどうも違うらしい。地球が上下さかさまにひっくり返ってみても、地上から見るかぎり、太陽の昇る方向は変わらない。そうなのではないか、と思います。(北半球でも、南半球でも、太陽が東から昇ることに変わりはありませんから)

 むしろ、太陽が西から昇るのは、地球の自転の方向が逆になるような事態ですね。現在とは逆方向に地球が自転を始めれば、間違いなく太陽は西から昇ることになる。
 そういうことが起こり得るかどうかはともかく、回転する方向が逆になれば、地上から見る太陽は西から昇り東へ沈むことになる。
 パニックになりそうですが、そういうこともあるかもしれない。

 よく「地球の磁場が逆転する」というようなことが言われますね。
 地球は北極と南極を軸に自転しているわけですが、磁極の北極と南極は地理上の北極や南極とは少しずれていて、必ずしも自転軸の上に位置していない。しかも、少しづつ動いていて、たとえば北磁極は、ハドソン湾のあたりにあったり、グリーンランドのあたりにあったりする。
 さらに奇妙なのは、地球の磁場は完全に逆転することがあるらしい。磁極の北極と南極が逆転するそうです。古地磁気学からそれがわかっていて、平均して20万年に1度くらい磁場の逆転が起こるらしい。その動きが始まると、だいたい数千年をかけて逆転するそうです。
 余談になりますが、地球の磁場は現在は少しづつ弱まっているそうで、あと1000年か2000年したらゼロになるともいわれていますね。

 地質学の世界では、そんなことがいろいろと言われています。
 私は地質学や惑星科学の専門家ではないし、その方面の詳しいことはわかりませんが、あくまでも素人考えでいえば、磁場が逆転するとは、まさに地球の自転方向も逆になるのではないか、と考えたりもするわけです。――以下、次回。できれば明日。
(2006年1月13日)


(4)

 地球の磁場が逆転する――、磁極の南極と北極が入れ替わる。といっても、これは20万年に一度くらい起きる事件で、しかも、それに要する時間は数千年といわれています。規則性や周期性もほとんどないそうです。
 ここから考えてみると、ヘロドトスがいうような1万年くらいの間に、太陽の昇る方向が4回も変わるようなことは、ありそうもない。そんな短期間に磁極がくるくると逆転を繰り返したり、自転方向が変わるようなことはありそうもない。(磁極の逆転が、そのまま地球の自転方向の変化になるかどうかは、まだわかりません・・・)。
 しかし、宇宙や太陽系に何か突発的な事件が発生して、そんなことがあったかもしれない。
 ヘロドトスがわざわざ書き残しているくらいですから、そのような可能性まで完全に否定することはできない。このあたりは何ともいえないところかと思います。

 また、地球の自転方向が変わる――などということも、ふつうはありそうもないことですが、しかし、私にはちょっと気になっていることがあるのです。
 ずっと以前、占星術に凝っていたことがありまして、その方面のいろいろな本を読んでいたとき、ある専門書のひとつに、どうも奇妙なことが書いてある。
「古代エジプトの初期の時代には、どうやら星座の動きを逆方向に見ていたようだ」
 そのような話があったのです。

 そのまま引用させていただくと、次のようなものです。
「ごく最近になって、サイドリアル占星学の大権威者、シリル・ファガンが、エジプトの初期の占星学を研究しているうちに、古代のエジプト占星学における室区分は、12室区分法ではなく8室区分で、しかもドデガトポスのように室区分の順序は時計の針と反対回りにカウントされていたのではなく、時計の針と同じ方向にカウントされていた、といいだしたのである。このファガンの占星学におけるコペルニクス的転換は、世界の占星学研究家の間に大波紋を呼び・・・」(『現代占星学』植田訓央著 P70)

   ここでは、専門的な内容に立ち入る必要はないでしょう。このなかの「時計の針と同じ方向」だの、「反対方向」だのというのは、現代の星占いなら、おひつじ座→おうし座→ふたご座、という方向で見ていくのに、古代エジプトでは、おひつじ座→うお座→みずがめ座、と逆方向に見ていたらしいと、この大権威者はいい始めたらしい。そういうことらしいのです。

 これは何か、地球の自転方向というようなことにも関係するかもしれない。地上から見上げる星空の動きが逆であれば、黄道12星座も現在とは逆の動きになる。つまり、おひつじ座→うお座→みずがめ座、という方向で進む。
 ヘロドトスの記述を覚えていたものですから、そのあたりがわりと気になったわけです。太陽の昇る方向が逆だった時代の影響が、まだ古代エジプトの初期の時代には残っていたのではないか・・・。そんなことを考えたりしました。しかし、それ以上のことは、私にはわかりません。

 ずいぶん変な方向に話が進んできましたが、いずれにしても、私たちが予想もしないようなことが過去に起きていた可能性はあるに違いない。

 ところで、磁極の移動ということに関連していえば、最近では、ポール・シフトという考え方をする人たちもいますね。
 ポール・シフトとは、地球の自転軸そのものが移動(傾斜)する現象だそうで、地球の磁場だけが変わるのではなく、地軸の変化も同時に起こり、地球の回転軸(自転軸)が傾斜する、ときには大幅に変化する、というようなことらしいです。
 地球の回転軸が変化するとは、またものすごい考え方ですね。

 これはしかし、ハプグッド教授の「地殻移動」の考え方とどこか似ています。地球がゴロンと傾いてしまう、いわば、北極と南極を軸に回転していた地球が、まったく別の軸で回転を始める。両極が移動するという点では、ポール・シフトと地殻移動は、結果としては同じかもしれません。
 ハプグッド教授の地殻移動では、1000年から2000年で南極大陸が3200キロも移動するという、まあ、現実には起こり得ないような現象を想定していますが、ポール・シフトは、ひょっとすると、もう少し可能性はあるのかもしれない。
 最後の氷河期である2〜3万年前のヴェルム氷期には、ヨーロッパの北部や北米大陸では、大きな氷河や氷床の発達が見られますが、寒いはずのシベリア東部には、あまり氷河が発達した形跡がないといわれています。このような氷河期の謎も、あるいはポール・シフトで説明できるのかもしれない。
 しかし、このポール・シフトという考え方――、実際のところはどうなんですかね。(2006年1月14日)


(5)

 よく知られているように、地球は太陽を回る公転面にたいしてまっすぐに立って自転しているのではなく、約23.5度傾いた軸で回転しているそうです。この自転軸は約2万6000年の周期で円を描いて動く。いわゆる歳差運動ですね。
 地球の自転軸の両端は、いうまでもなく北極と南極です。自転軸と地表が交わるところが南極点であり、北極点となるわけです。厳密に観測すれば、この南極点や北極点も安定はしていないそうですが、その変化はごくわずかなもので、無視しても差しつかえはない。地球は両極点を軸に回転していると考えてよいようです。

 で、地球の形はというと、やはりこの回転の影響から(遠心力なんでしょうね)、両極方向の半径の方が赤道半径よりも短く、上下に押しつぶした楕円球の形をしています。極半径の方が、赤道半径よりも20キロほど短いのですね。
 さらに、もっと地球の形を細かく調べると、北極の方には突き出し、南極では窪んでいるそうです。極端にいえば、イチゴのような形ですね。イチゴの先端の尖った方が北極で、ヘタのある方が南極。宇宙から見た地球の写真は、ほとんど完全な球体に見えますが、厳密にいうと、そういう形になっているようです。

 これは南極大陸には地球全体の90パーセントといわれる巨大な氷が乗っており、その重さで地球を押している。そのために、南極の地形は地球全体から見ると窪んでいる。
 それに対して、北極には陸地がなく、氷山が海に浮かんでいるだけですから、地球そのものへの重さはかからない。したがって、北極方向に地球の形は突き出している。おそらく、こういうことになるんだと思います。

 まあ、あれやこれや本や百科事典なんかで仕入れた知識では、そういうことらしいです。
 地球の形は、極半径が赤道半径よりも短く、北極方向に突き出し、南極では窪んでいる。これはつまり、両極を軸に回転しているために、長年かかって、こんな形になったものでしょう。
 すると、いったいどれくらいの時間をかけて、現在の地球の形は出来上がったのか?それがポイントになりますね。現在の自転軸は、どれくらいの期間にわたり続いているのか――
 専門家ではないので、私には力学的な計算はできませんが、地質学的な年代を考えても、よいのではないでしょうか。おそらく、数百万年というような造山運動のレベルではないでしょうか。(一番長い時間を想定すると、プレートテクトニクス理論で、南極大陸が現在の場所に移動してきた数千万年前から、ということになるでしょう・・・)
 少なくとも、私たちが今、問題にしているような人類の文明史のタイムスケール、1万年前とか、あるいは、せいぜい5万年前、10万年前という時間幅ではないでしょう。ホモ・サピエンス、私たち新人が登場して以降くらいは、間違いなく地球は、現在の南極と北極を軸にして回転してきた。そう考えてよいのではないですかね。
 つまり、自転軸の両極はその期間は移動していない―― 

 同じような話で、南極大陸の氷床が形成され始めたのは、いったいいつごろか?という議論がありますね。 これは南極からアイスコアを採ってきて、調べたりしています。
 従来は、南極の氷床ができ始めたのは、南極大陸が現在の位置まで移動してきた数千万年前くらいから、と考えられていたようです。ところが、20世紀末ごろには、南極横断山地の氷河堆積物を解析した結果、300万年前くらいではないか、という説が出てきたり、もっと最近では30万年前とか、10万年前というような説もあるようです。
 データが不足していて、どうもまだはっきりしたことはわからないようなんですね。
 太古の地球環境も、現在と同じような気象だったかどうかはわからないので、不明な点もあるのでしょう。

 しかし、南極の氷床のコアサンプルについて、わりと最近の新聞報道などでは、次のように書いてあります。

「国立極地研究所と東北大学の共同研究グループが35万年分の大気を閉じ込めた南極の氷を分解したところ氷河期が訪れる周期と二酸化炭素(CO2)濃度が増減する周期がほぼ一致し、最近になってCO2濃度が急に上昇していることが明らかになった。これまでロシアのポストーク基地で掘り出された氷を使って同様に研究成果が報告されていたが測定精度や氷の純度に問題があるとの指摘があり、南極にある日本の観測拠点「ドームふじ」で採れた純度の高い氷を使った追試が待たれていた。」
(1999/12/25日本経済新聞夕刊)

 これをみると、少なくとも南極の氷は35万年くらいの時間は経っている、と考えられているわけですね。おそらく、その期間の南極はやはり氷に閉ざされていた――

 (追記 その後、「ドームふじ」の氷床は深さ3000mの岩盤まで採取され、氷床の年代は72万年前という結果が出ている。

 両極方向で上下につぶれた地球の形と、南極の氷のコアサンプルというふたつのケースから考えてみると、南極大陸はかなりの期間にわたって現在の場所に位置していると考えてよいのではないか、と思えます。南極点と北極点、つまり地球の自転軸も、ほぼ同じ場所にあった――、そう考えるのが自然ではないか、と私は思いますね。
 ハプグッド教授が考えたように南極大陸が3200キロも移動してきたり、ポール・シフトによって両極が移動するようなことは、少なくとも私たちの文明史のタイムスケールでは起こっていない。

 あえて例外的なケースがあるとすれば、宇宙的なアクシデントなどが起こり、ごく短期間に(数年間とか数十年間)、重力や磁場の異変や、地球の軌道、自転軸、自転方向など、地球のシステムが大混乱したあと、また元の正常な状態に戻る・・・(ヘロドトスが書き残しているような)、そんな事態があったとすれば、古地磁気学のデータにも残らない事件はあったかもしれない、とは思います。

 しかし、アトランティスに関していえば、アトランティスが南極に存在した可能性はまずあり得ない。地質学からみたとき、そう判断するしかないと思います。(2006年1月15日)


(6)

 ふー、これでやっとアトランティスの話に戻ってきました。

 私は、アトランティスが実在したに違いないと思っている人間ですから、本当ならアゾレス諸島でも、南極でも、アトランティスの可能性があるのならば、大いに期待したい。いくらでもその可能性を追求したい。それは他のどの場所でも同じなんですが・・・。
 しかし、悲しいかな、アゾレス諸島でも、南極でも、あるいは他のどの場所でも、アトランティスの証拠というようなものは発見できない。可能性はあっても、現実には何の手がかりもない。痕跡のようなものすらないんですね。
 これは何かが根本的におかしいのです。

 「地殻移動が本当に起ころうが、起こるまいが、アトランティスが南極に存在したとは思えない」と、前に述べましたが、それはなぜかといえば、アトランティスの痕跡が南極だけにしか残っていないなんておかしいと思うからです。
 もしアトランティスが南極に実在したのならば、その周辺にも何かの遺跡がないとおかしい。アフリカ南端の喜望峰とか、ラテンアメリカ南端のパタゴニアのあたりとか、あるいは、オーストラリアのタスマニア島とか、ニュージーランド南島あたりですね、そのへんにアトランティスと関連づけられる遺跡がないというのが、かえって不思議です。
 もっといえば、世界のいろんな場所にアトランティスの痕跡があって当然だと思えます。極端にいえば、アトランティス層と呼べるような地層が地球に残されていてもよいはずなんですね。

 これはアゾレス諸島でも、どこでも同じです。北米大陸でも、グリーンランドでも、アイルランドでも、あるいは、サハラ砂漠でも、ゴビ砂漠でも、アトランティスがどこに眠っていようが、その痕跡はもっと広範囲に残っていてよいはずだ。そう思うのですが、そんなものは見つからない。これはやはり何かが根本的に違うのじゃないでしょうか。

 じつは私自身ももっと以前は、アトランティスはまだ見つかっていないだけで、海の底か、地上のどこかに眠っているはずだと考えていました。今でもやはりそう思うところは現にあるのですが、しかし、長年考えてみて、かえって疑問を感じ始めたところもあります。今は存在しない、海に沈んだアトランティス島にしか、アトランティス時代の遺跡がないのはどうもおかしい、と、そう思い始めたわけです。

 プラトンがいうには、アトランティスは今から1万2千年ほど前に存在した高度な文明で、外国の多くの地域とも交流を持って栄えていたという。アトランティスは大西洋上にある大きな島で、ヨーロッパや地中海だけでなく、反対側のアメリカ大陸とも交流していた。これは地球規模の大きな文明圏が形成されていた、といってもよいでしょう。

 プラトンの記述をどこまで信頼するかについては、さまざまな態度があります。根本のテキストとして、すべてを受け入れるという態度もあれば、自説に合うところだけを引っ張ってくる研究者もいます。あるいは、架空の話として、まったく信じない人もいる。
 私自身についていえば、じつはプラトンの記述を何から何まで信頼できるとは思っていません。細部はむしろ、あまり関係ない。
 今から1万2600年前という年代だって、正しいかどうかわからない。場所だって、大西洋かどうかわからない。アトランティス王国の中身については、尚更わからない。
 しかし、私たちには知られていない未知なる文明が、有史以前の遥かな時代に存在したが、今は海の底に沈んでいる――、それが大事だと思うんですね。プラトンが書き残したアトランティスの根本はそこにある。
 何か未知なる高度な文明がかつて存在した――、それで十分ではないでしょうか。
 年代をいうなら、1万年前でなくとも、数万年前くらいの範囲で捉えておいてもかまわないし、場所だって大西洋だけではなく、地球上のあらゆる場所を考えればいいんじゃないか、そう思います。
 いわば、有史以前の未知なる古代文明の総称として、「アトランティス」という名前があればいいわけですね。

 そのような文明がかつて存在したが、地球的規模の大異変によって、地球上から姿を消してしまった。アトランティス人も、アトランティスの遺跡も、すべてなくなってしまった。数万年くらいの間だったら、そんなことがあったかもしれない。
 そう思ってはみるのですが、他の地域にまったく同時代の遺跡がないというのは、やはりおかしい。そこに行き着くわけです。
 一方で、アトランティスを思わせる神話や伝説があり、あるいは、ピラミッドやポルトラーノなど、非常に不可解な遺物が残っている。これは、どういうことだろう――。(2006年1月21日)




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