浅い春(2010.2)

 

伊勢 真一

 


もう春の足音が聴こえて来た…
と思ったら、後ずさりするように寒波。
お天道さんはそう甘くはない。
「まだ来ぬ春」と人は言う。
鼻ミズをすすりながら、空を見上げる。

ここのところは、週末には上映、という予定が続いている。
「風のかたち」が中心だが、先週末の大倉山映画祭では
「白い花はなぜ白い‐哲ちゃん・映像作家‐」も上映した。
「白い花…」はほとんど観られていない作品だが、なかなかの傑作だと
あらためて思った。「凄み」のようなものを感じた。
誰も誉めてくれないから、自分で言わなくちゃね。
昨年完成させた作品にはもう一本「ゆめみたか‐愛は歌・田川律‐」があり、
これもいいんだ…自惚れ屋だと思われるかもしれないが、
いいものはいいのだから。

「風のかたち」「白い花はなぜ白い」「ゆめみたか」、
自作だからどれも可愛いい、というのはもちろんだが、
どれも傑作だと思う。
「いのち」を見つめよう、という柔らかな眼差しに触れる
生き生きとした時間が息づいている。

「風のかたち」を観て頂いた詩人・谷川俊太郎さんが寄せてくれた
感想の一部を紹介したい。

「みんないつかは死ぬ、という言葉の先に
そのいつかの先は?という
問いかけがあっていいと思う。
ありきたりの既成宗教の答ではない
知恵深い答が、世界中のさまざまな土地に
まだ残っているのではないか。
そして自分自身のパーソナルな答を探し続けるのも、
また生きることの多様な喜びのひとつ
ととらえていいのではないか。」

さすが、いいこと言うなぁ…
映画を映画として、ちゃんと観て、語ってくれると、
創る勇気のようなものが湧き上がってくるのだ。

毎年のことだが、映画祭や映画賞やベストテンの評価を知って
独りで頭に来たりする。
「まぁ気にするな、他人の評価ではなく、自分の評価の方が大事だ…」
と後輩には大人ぶった物言いをするけど、
クソッタレ!!と思い続けているのだ。
同時にワカッテタマルカ!!ともね。

「ユー・ガット・ア・フレンド」というキャロル・キングの名曲では
♪winter spring summer fall♪と歌っているから
英語圏では四季は冬からはじまる感じなんだ…と
教えてくれたのは「ゆめみたか」の主人公・田川律さん。

「浅い春」、悔しまぎれに、
もう一度、空を見上げる。