春、肯定感(2010.4)

 

伊勢 真一

 


ボブ・ディランを聴きに行った。
とても、とてもよかった。
1970年代に初来日した時、聴きに行って以来だったが、
その時よりも更によかったように思う。
音楽はいいなぁ…
肯定感そのものだもの。

つい最近、先輩の映画人でベテランの編集者・熱海鋼一さんが
71才にして初の書き下ろし「ジョン・フォードを知らないなんて」を出版した。
10代のころから、好きで好きでたまらなかったジョン・フォードのことを
熱烈な愛情を込めて書いた痛快なノンフィクション…
全編、肯定感そのものといっていい映画本、傑作だと思う。

映画は誰もが気楽に観て、言いたいことを言える表現だ。
それは、いいことでもあると思うけど、誰もが評論家みたいなところもあって、
「あれはよくない、これはよくない…」
とすぐ言葉にしてけなしたがる人が多いような気もする。
批判出来ることが上等なこと、と勘違いしている理屈コキは
あまり好きじゃないな。

肯定感を持つには、例えば先回りして解釈するクセをやめることが
必要なように思う。
わかったつもりにならないこと、わからないことも含めて、
そのまま受け入れる勇気のようなものを持つこと…
創り手としての自分に引きつけて言えば、言葉に出来ないことがたんとあって、
そのヒリヒリした焼けつくような思いをこそ映像に託すことかな?

当り前のことかも知れないけど、ただ“好き”になる、
本当に“好き”になるということが、何につけ一番大切なんだ。

春です。
人類が誕生する、はるか以前から花を咲かせていたと言われる、
「シデコブシ」という、ほんのり淡い薄紅色の花を、岐阜県の小さな森で撮影してきました。
気の遠くなるような昔から生き続ける「いのち」のこと…

春、再生の季節。いつもに増して、肯定感に思いを巡らす。