自主上映、海を越える2010.7)

 

伊勢 真一

 


紫陽花の季節です。

ちょうど東京が梅雨入り宣言をした頃から十日間ほど、
スイス・イギリスへ旅に出ました。
と言っても遊びはありません。映画「風のかたち」の上映です。
今まで映画祭では何度か自作の海外上映に立ち合ってきたのですが、
今回は自主上映…無謀なことを、という声も耳にしながら、
スイスで三ヶ所・イギリスで二ヶ所の上映を決行してきました。

結論から先に言えば、とても実りの多い旅でした。
映画祭での上映のような、お祭り的な賑わいがあるわけではないし、
映画通が集って議論を交わしあう雰囲気でもない。
それぞれの自主上映に集ってくるお客さんの、
映画に寄せる普通の眼差しが心地よく温かい。
私の好きな言葉で言えば「平熱のぬくもり」のようなものを
感じさせる上映会が出来たと思う。
反応は、ほとんど日本と同様。
いのちのこと、子どもたちへの想いは万国共通なのだと確信した。

スイスでは、学生時代の友人が中心になって音頭を取ってくれ、
イギリスでは、映画「風のかたち」を応援してくれているエーザイ
という企業の方々が全面的に協力してくれた。ありがたい。

映画の企画者であり出演者でもある、細谷亮太医師も旅の途中から参加し、
上映後のトークを私と二人でやった。
細谷先生は語学が堪能なのだが、私がまるで駄目なので、日本語で語り合い、
スイスではドイツ語、イギリスでは英語に通訳してもらい、これもなかなか好評だった。
「伊勢さんの喋りは通訳泣かせだから…」と言われたので、一生懸命、簡潔にワカリヤスク
語ることを心がけたら「とてもワカリヤスかった。やれば出来るじゃない」
と細谷先生に冷やかされてしまった。

いつも頭で考えるより先に喋り始め、喋りながら考え始めるという語り方なので、
自分でも何を言いたいのか、わけがわからなくなってしまうこともしばしば…
映画はよかったけど、上映後の監督トークが冗漫だと厳しい指摘を受けることも度々ある。
更に時々は、映画もワカラナイとか冗漫だと言われるから、
かなり本質的にそおいう人間なんだな、私は…
そんな自分でずっと生きてきたんだから、勘弁してもらおう。

帰国してすぐに北海道上映。
札幌、北広島、苫小牧と三ヶ所での自主上映についてまわった。
ワカリニクく、冗漫かも知れない、映画「風のかたち」はしかし、大好評であった。

ヨーロッパでも、北海道でも、ヒメジオンの白い花が気分よさげに風に揺れていた。