八十八ヶ所(2010.10)

 

伊勢 真一

 

 

そお言えば、昨年の今頃から、映画「風のかたち‐小児がんと仲間たちの10年‐」
の自主上映は始まった。

そして一年。

先日の北海道・滝川市(難病の子どもたちのために建設中の「そらぷちキッズキャンプ」の拠点)
での上映で、八十八ヶ所目を迎えた。
細谷亮太医師と私とのトークは、両者ともほぼ刈り上げ状態の頭髪で、
まるで、お坊さんが二人壇上に並んでいるような雰囲気だった。
「風のかたち」の映画の中で、細谷先生が四国をお遍路しながら
「子供は死んじゃいけない人たちだから…」とつぶやく名シーンがある。
看取った子どもたち一人ひとりを記したノートをカバンに入れて歩き続ける
先生のお遍路は、多忙を極めていることもあり、まだ八十ヶ所をちょっと超えた位で、
映画の方が一足先に八十八ヶ所に辿り着いてしまったのだ。

映画に登場してくれた小児がんの子供達の中に
もう、遠くへ逝ってしまった子が数人居る。
10人のうち7人から8人が治るようになった、ということは
10人のうち2人から3人は、まだ治らない難しい病気なのだ。
映画の中では元気一杯に夢を語ったり笑ったりしている子供達のうち、
何人かはもう居ない…
でも逆に言えば、彼等は映画の中で元気一杯に生き続けている。

何だか、上映の一回一回が「お祈り」のように思うのだ。
病気を克服して、夢を叶えた子供達一人ひとりの…
生きることが叶わなかった子供達一人ひとりへの…
だから、映画「風のかたち」の八十八ヶ所上映に、私は想い入れをしたくなる。
仏教徒でもクリスチャンでもない、無信心でデタラメな奴だけど、
今回は思わず手を合わせたくなる上映活動なのだ。

撮影すること、編集すること、音を入れること…
映画を創ることは「祈り」に似ていると思う。
映画を観てもらうこと、上映することは
「祈り」そのものかも知れない、と時々思う。

10月に入って、三島市で1,000人程の高校生に、武蔵野市で600人程の中学生に
観てもらう上映会があった。
「学生諸君に、若い人たちに観てもらいたい。同世代の仲間達の映画として…」
と言いつのりながら、なかなか実現しなかったが、
ここへ来てようやくその流れが出て来た。

「生きること」「死んでしまうこと」「いのちのこと」を、
最もナイーブに受け止めることが出来るにちがいない、若い世代に
映画「風のかたち」を観てもらう試み、
ぜひ、力を貸して欲しいと思う。

風の音に耳を澄ませてみよう。
「風のかたち」が少し見えてくるかも知れない。