「励まし」そして「お祈り」(2011.01)

 

伊勢 真一

 

 

新年早々に新作が誕生します。
映画のタイトルは「大丈夫。」

「大丈夫。」は小児科医・細谷亮太さんの口グセです。
診察を終えた病気の子どもたち一人ひとりに必ずそのひと言を添えて、励まします。
それは、40年来、小児がん治療の最前線で子どもたちの「いのち」と向き合い続けてきた、
細谷先生の自分自身への、励ましのコトバなのかもしれません。

先生と出逢ったのは十数年前の冬、小児がんの子どもたちのサマーキャンプをドキュメンタリーに
したいので協力して欲しい、という私へのプロポーズの席でした。
その夏、撮影スタッフとキャンプに参加し、「小児がんの子どもたちの7割から8割が治る
ようになっていること、しかし、その事実があまり知られていないことが、治った子どもたちの
生きにくさに繋がっていること」を知り、これは時間をかけてしっかり記録しなければ、
と呑気な私も本気になって映画創りに取組み始めました。
以来、企画者として出演者として大いに力になってくれた先生とは、
映画「風のかたち」を共に創った同志のような間柄です。

十年以上の歳月を経て、映画「風のかたち‐小児がんと仲間たちの10年‐」が完成したあと、
編集室には膨大な未使用の映像が残されました。
何しろ1000時間にも及ぶ映像を1時間45分にまとめたのですから…
その中でもほとんど使われなかったものに、先生へのロングインタビューがありました。
全部で20時間程の「いのち」を見つめたコトバたちです。
もうひとかたまり、私にはどうしても使い切ることが難しかったのが、
亡くなられた子どもたちを描いた映像の数々でした。

『朝顔の 花数死にし 子らの数』(喨々)

病気の子どもたちとの40年にわたる日々を綴った、細谷喨々(先生の俳号)の二冊の
句集をめくりながら「風のかたち」に続く姉妹作「大丈夫。」を創ろう、
という思いが湧き上がりました。
映画「大丈夫。‐小児科医・細谷亮太のコトバ‐」は、
「風のかたち」で語りきれなかった先生と私の思いが込められた作品です。
たとえ短い時間でも、子どもたちはその「いのち」を生き生きと充分に生きた、
そのことをもっともっと伝えたい、と考えたのです。

『鯉のぼり しなのたかしの 夢に泳げ』

「大丈夫。」は、些細なことにメゲて落ち込んでしまう癖のある私や、
映画を観る一人ひとりへの、励ましのひと言です。
それは、細谷先生のコトバを借りて、沢山の子どもたちの心が語りかけてくれている、
お祈りなのかもしれません。

「風のかたち」の弟分「大丈夫。」ぜひ観て下さい。
そして、応援してあげて下さい。

映画を観終えたら、貴方も誰か他の人に「大丈夫。」と言いたくなるにちがいありません。