恥のかたまり(2011.07)

 

伊勢 真一

 


『白い花はなぜ白い』という三年ほど前に作ったドキュメンタリー映画の主人公は、
二十代の頃から腐れ縁のようにつるんでた映像作家・渡辺哲也だ。
哲也こと哲ちゃんはけっこうな物知りで、
ボタンを押すと答えが返ってくるように教養があって、
わからないことはよく哲ちゃんに聞いたものだ。
植物が好きだった彼は、花の名前も実によく知っていて、
花を見るとすぐに名前を言える奴だった。
まるで無教養な私は悔しまぎれに
「名前なんてどうだっていい。美しいと思えるかどうかが大事なんだ…」と言って
酒を呑むとからんだものだ。
ある時、「哲ちゃん、白い花はなぜ白いんだ?」と聞いたら、珍しく口ごもり
「うん、それがよくワカラナイんだ…調べてみる」と言った。
それからしばらくして、その答えを教えてくれないまま
哲ちゃんは遠い所へ逝ってしまったのだ。

哲ちゃん亡きあと、無教養な私のこのところの先生は
小児科医の細谷亮太先生(聖路加国際病院副院長)だ。
哲ちゃん同様に私より一つ先輩。
『風のかたち』『大丈夫。』という近作は、共に細谷先生と創った映画というつもりでいる。
この一、二年は上映の場で二人でトークという機会も多く、
その度に色々なことを教えてもらっている。
ある上映会のトークで、私が「グリーフケア」のことを「ブリーフケア」と言ってしまったら、
すかさず「伊勢さん、それはグリーフケアだと思います」とたしなめられた。
私は、うっかり口走ったのではなく、ずっと「ブリーフケア」だと思い込んでいたのだ。
あぁ恥ずかしい…
でも、「グリーフ」と「ブリーフ」は切ない人生を感じさせて、つながっていなくもないか?
そんな風に思うのは私だけか。

数えたらキリが無いほど、この手の無教養が故の恥はかいてきている。
「恥」多き人生、「恥」にまみれた人生なのだ。
もっとも、映画を創ること自体、何だか恥ずかしいことのようにも思う。
自意識過剰で言っているのではなくね…
自信がないからかな?
「監督!」なんて大きな声で言われると、
「スミマセン!!」と応えてしまいそうになる。
私の場合、一本一本の作品それぞれが「恥のかたまり」のようなものか。

春先に完成した映画『大丈夫。ー小児科医・細谷亮太のコトバー』の上映が
各地のミニシアターと自主上映会でジワジワと動き始めている。
この夏は富山・金沢での上映が不思議に多く、
まず、7/30(土)アイザック小杉文化ホールで13時30分から『風のかたち』の上映、
8/6(土)〜8/19(金)金沢シネモンドで10時15分から『大丈夫。』『風のかたち』
『ゆめみたか』『白い花はなぜ白い』の上映。
8/28(日)立山町民会館で、14時から『ありがとう』の上映があります。

「恥のかたまり」を観てもらうナリワイに定年はないから、
くたばるまでやり続けるのだ。
自主上映活動への応援、よろしくお願いします。