34回日本カトリック映画賞

 

SIGNIS JAPAN (日本カトリックメディア協議会 )ニュースリリースより


SIGNIS JAPAN (日本カトリックメディア協議会、会長:千葉茂樹、事務局:東京都区港区赤坂8-12-42 女子パウロ会内) は、同協議会が主催する「第34回日本カトリック映画賞」に、「風のかたち−小児がんと仲間たちの10年−」(監督:伊勢真一、製作:いせフィルム、カラー105分、2009年)を選定しました。授賞式は、来たる6月12日(土)午後2時15分から、川崎市麻生区の川崎市アートセンターで行います。授賞式の後、受賞作品を上映し、伊勢監督と監修の細谷亮太医師のお話を伺います。

日本カトリック映画賞は、前の年に日本で制作された映像作品の中から、カトリックの世界観と価値観にもっとも適う作品に贈られる賞で、今年で34回目を数えます。


「風のかたち」授賞理由

東京教区司祭 晴佐久昌英

「イエスは一人の子供の手を取り、御自分のそばに立たせて言われた。『わたしの名のためにこの子供を受け入れるものは、わたしを受け入れるのである。わたしを受け入れる者は、わたしをお遣わしになった方を受け入れるのである。あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉い者である』」(ルカ福音書9・47−48)

小児がんと向かい合うことは、神と向かい合うことである。

確かに、子供の病とその苦しみ、何よりもその死は、あまりにも不条理で救いのないものに見える。しかし、この映画を見ていると、そのような最も小さな存在こそが、最も神の恩寵に満たされていることに気付かされる。

子供たちが精一杯生きる姿に触れると、人間を創造した神への信頼が湧いてくる。

子供たちの不安と苦しみを知ることで、眠っていた愛の心が呼び覚まされる。

子供たちの死という究極の犠牲こそが、永遠の命への希望を生み出す。

すなわち、病という十字架を背負ったこの子供たちを受け入れる者は、救い主キリストを受け入れ、キリストにおいて御自分の愛を現した神を受け入れているのである。

「最も偉い者」である子供たちを信じてカメラを向け続け、目には見えない信仰と愛と希望を映し出し、時に救い主のまなざしすら感じさせるこの気高い作品に、最大級の賛辞を贈りたい。

映画「風のかたち−小児がんと仲間たちの10年−」紹介

小児がんと向き合う子どもたち、かれらを支える医師や家族の姿を10年にわたり撮り続けたドキュメンタリー映画である。小児がんは10人のうち8人は治る病気となったが、病を抱えた子どもたちと家族の不安は大きい。

そんな彼らを応援する医師たちが企画して一年に一回サマーキャンプを行ってきた。ほんの一時でも病院を離れ、自然の中で過す時間がどれほど子どもたちにとって大切か。伊勢監督とスタッフは毎年そのキャンプに参加し、子どもたちが悩みや夢を語る声に耳を澄ませてきた。最初のうちは子どもたちに病気のことを聞けなかったと伊勢監督は言う。4年位たつと子どもたちの方から「撮らないの?」と言うようになった。子どもたちが伊勢監督とスタッフを、語りたい何かを、語れる人たちと思ったからだろう。

伊勢監督の作品の特長は、「撮影」という自分たちの都合を押し付けるのではなく、対象となる人々にひたすら寄り添いながら撮ることにある。当然時間がかかる。しかし、時間をかけたからこそ見えてくるものがある。それはこの映画の場合、病を抱えた子どもたちの心の変化と成長である。病気の不安にとらわれていた子どもが、何年か後には回りの人の幸せを願うまでになっている。この映画にはそんな子どもたちが何人も登場する。

「病気になったのが家族の誰かではなく自分でよかった」

「救ってもらったお返しに、困っている人や弱い人を助ける仕事をしたい」

病気を体験して弱さを強さに変えていく子どもたち。画面の子どもたちの表情が輝く。時間をかけて一人ひとりの命を見つめてきたからこそ捉えることができたものだ。子どもたちの表情と言葉から伝わってくるのは人間の生きる力と、希望の力強さだ。

一つのテーマを10年にわたって撮り続けることは誰にでもできることではない。伊勢監督はエッセイに書いている。「この作品の演出家はヘボカントク(私)ではなく、10年という“時間”だと思う。」 対象に寄り添い、必要な時間をたっぷりかけて撮る伊勢監督の姿勢がここに現れている。画面に映っている人々と監督の信頼関係がスクリーンを通して伝わってくる。「風のかたち」は病気になっても人は輝くことができると確信させてくれる映画だ。見終わった後、この映画と出会ったことを感謝したくなる数少ない作品である。