「風

<2007年10月号>発行:いせフィルム            

窓をあけ、風に触れてみる。スクリーンは窓、映画は風。


<たより 1> タイマグラからの便り〜『タイマグラばあちゃん』近況報告

   

澄川嘉彦監督 

「タイマグラはもうすぐ本格的な
冬を迎えます。蒔を割ったり、屋
根を塗り替えたり、冬支度に忙し
い毎日です。」                    

 

 

監督澄川嘉彦

 この映画も気がついてみれば完成して三年がすぎた。ありがたいことに今でも月に一回くらいのペースで上映が続いている。出来上がった時にはこんなに息の長い映画になるとは思ってもみなかった。最初の一年目ぐらいはあちこちで見てもらえるかもしれない、いや見てもらいたいと願っていたが、上映会もせいぜい二年目くらいまでで後は忘れられていくのだろうと考えていた。しかし、それは作った側の勝手な思い込みで映画はひとりで元気に歩き続けている。

 9月の末に岩手県の矢巾町という街で小さな上映会があった。タイマグラから車で2時間くらいなので私もおじゃまして上映後に少し話しをさせてもらった。話しも終わり会場の出口で観客の人たちを見送っていると男の方が近づいてくる。七十歳は越えていらっしゃるように見えたが精悍なからだつきが今でも現役で畑や山に出ておられることをうかがわせる。何かお話しがあるのかなと思っているといきなり私の手をとってしっかりと握りしめてこられた。何も言わずうなずかれるだけで、こちらがたじろくほど純粋な眼の光で見つめられた。隣に立った奥さんが「よくタイマグラばあちゃんのところへ味噌を買いに行ったり遊びに訪ねたりしていたんですよ」とお話しして下さった。

 しばらくたった後、当のご本人が初めて口をひらかれた。
「このような記録を残してくれて本当にありがとうございました」。
 この一言は私に大切なことを思い出させてくれた。プロデューサーの伊勢さんによく言われるのだが「私たちスタッフにとっては何十回目かの上映会であっても、見る人たちにとってはひとつひとつの上映会が映画との初めての出会いなんだ」ということを。
 私にとっては四年目の上映会であっても、あのおじいさんにとっては映画との最初の出会いである。握りしめてくる強い手の力が出会いの深さを物語っていた。
自主制作の映画がテレビやビデオ、ほかのメジャーな映画と異なる点はもしかしたら「終わりがない」ということなのかもしれない。放送日や発売日、全国一斉公開などというピークがないかわりに、その映画を愛してくれる人たちとの新たな出会いによって「初めて」の自主上映会が少しずつだけれど永遠に続いていく。
「もう四年もたったのだから」などという作った側の思い上がりはうち捨てて、これからも、一回一回の「初めて」を大切にしていきたい。

『タイマグラばあちゃん』今後の上映予定

10月28日(日)13:00〜 北海道上川郡清水町・上羽帯少年自然の家「百姓映画祭」

            主催:NPO法人インフォメーションセンター 問合せ:090-6268-7778

11月18日(日)14:00〜/18:00〜岩手県宮古市(旧新里村)・和井内ふるさと会館

            主催:みやこ映画生活協同組合    問合せ:0193-64-5588(みやこシネマリーン)

 


<たより 2> 『ボクラの島を忘れない』「瀬戸内海研究フォーラム」報告!   監督 多田亜佐美


サンポート高松

 

 映画「ボクラの島を忘れない」を製作した多田亜佐美です。

9月13日、香川県高松市で開催された「瀬戸内海研究フォーラム」に参加してきました。瀬戸内海に携わり、活動している人たちの報告会です。今年のテーマは「豊かな海と島づくり」。映画「ボクラの島を忘れない」(瀬戸内海・香川県丸亀市の島、広島が舞台)の撮影を通しての活動を報告させていただくことになりました。その報告の一部を紹介させていただきます。

 


発表に臨む多田監督

 

「日本の原風景としての瀬戸内の島々」〜研究発表より〜

   当初、島の保育所を撮影するにあたって、役所の人や、はたまたマスコミに勤める友人に言われました。
「どうしてどこにでもある島の保育所を撮影するのか?もっと○○で有名とか○○で日本一。とかいっぱいあるだろう」って・・・。

 夫の転勤ではじめて瀬戸内を訪れた私にとっては、きらきらと輝く海に浮かぶ漁船、フェリー、島々。瀬戸内海そのものに魅力を感じました。この海と共に生きている人たちのその生きていく姿が身近に感じられる、また理屈でなく、瀬戸内の潮風に包まれるだけで心がとけていく。

 上映活動がはじまり、映画は老若男女、また地域にとらわれることなく静かに静かにひろまっていきました。映画にうつっていた人々も。瀬戸内に住む人たちをも気付かずにいた世界がこうして映像を通して、人々の心をそっと温めていく。上映活動を通して、瀬戸内の島のスバラシさ、島に生きる人たちの日常生活の大切さを改めて感じることが出来ました。

島の子どもが、私が香川県を去るときにプレゼントしてくれた詩です。

 

 「ふるさとひろしま」(ひらいまさこ)

   花やはないけど

   のにさくちいさな花がある

   しんごうもほどうきょうもないけど

   ヤマモモをとりつつかえるみちがある

   あかりも たのしげな ざわめきもないけど

   ほしふるよるの しずけさがある

   本やも としょかんも ないけど

   しぜんという ゆたかな本がある

   えきもバスていもないけど

   だれをもあったかくむかえてくれる みなとがある

   人はすくないけど

   だからこそ しまじゅうの人が

   大きな 一つの かぞくなんだ

   ここ ふるさと ひろしま

 

 

 

 

 

 特別な島でなく、特別な地域でなく、特別な人でなく、そのままの。人々の生活、文化、歴史。あるがままの瀬戸内の今の姿に改めて向き合い、記録として残し、そして何らかの形で発信していくこと。現代を生きる私達に大切な何かを語りかけてくれると思います。

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 研究フォーラムでお話させていただき、改めて私自身もこの映画の原点、瀬戸内海と出逢えたこと、「ボクラの島を忘れない」と出逢えた奇跡に感謝の気持ちがつのりました。日本の中には、まだまだ出会った事のない故郷がいっぱいあるような・・・。そんな故郷の姿をいつかまた撮ってみたいです。

 よかったら皆様、秋の瀬戸内にぜひぜひ、おいでください^^
魚も、野菜も、さぬきうどんも。どれもオイシイですよ〜。
ボーッと海を眺めて気持ちをリラックス・・・
東京住まいになってチョットさみしい自称・瀬戸内広報の多田でした。

  「ボクラの島を忘れない」ホームページ http://asami.babyblue.jp/ 
あさみニッキ好評更新中 デス!

 

<たより 3> 映画「花の夢―ある中国残留婦人―」ポレポレ東中野上映報告      監督 東志津


上映終了後のロビーで。
主人公・栗原貞子さんと東監督

 

 

 9/15に始まった「花の夢」ポレポレ東中野での劇場公開が10/5、無事、最終日を迎えました。朝10:30からの1日1回上映。たった1回きりのその上映時間を目指して、遠方からもたくさんの方々が足を運んで下さいました。切実な思いを抱えて映画と向き合う年配の方、なんとなく映画館に入っちゃった、という感じの若いカップル。いろんな人たちの思いをいっぱい吸い込んで、映画がどんどん成長していくように感じました。お客さんも日増しに増え、最後は満員の大盛況。帰り際、深々と頭を下げて下さる方や、涙ながらに感想をお話しされる方も。短い時間にもかかわらずたくさんの方々が感想を書いて下さり、映画が確実に届いていることを実感できた三週間でした。

『花の夢』今後の上映予定

<ミニシアター>
・11/3(土)〜11/16(金)広島・横川シネマ 問合せ:082-231-1001
・12/8(土)〜(予定)大阪・第七芸術劇場  問合せ:06-6302-2073
・12/8(土)〜12/21(金)横浜・ジャック&ベティ 問合せ:045-243-2875
・12/8(土)〜12/21(金)名古屋・シネマスコーレ 問合せ:052-452-6036

・岡山映画祭
  11/11(日)13:00〜/15:10〜(会場:岡山県立美術館ホール)問合せ:086-254-0238

・さらば戦争映画祭
  11/17(土)東京ウィメンズプラザ

・自主上映
  11月2日(金)13:40〜神奈川県横浜市泉区・上飯田地区センター 問合せ:045-805-5188
  11月3日(土)15:30〜 神奈川県逗子市・神奈川大学(20号館310室)問い合せ:045-481-5661
  11月18日(日)10:00〜 茨城県筑西市・生涯学習センター「ペアーノ」問い合せ:0296-24-2111
  11月27日(火)14:00〜/19:00〜 東京都江東区・総合区民センター公会堂 問合せ:03-3647-1717

 


<たより 4> いせフィルム 上映会情報

上映会情報をご覧ください。


自主上映をしませんか?

☆自主上映とは?☆
既存の映画館での上映ではなく、皆さんひとりひとりのお力添えにより
上映会を開いていただくのが、自主上映です。
伊勢真一関連作品は、フィルム、ビデオ、DVDなどで自主上映会への
貸出を行っています。詳しくは、いせフィルムまでお問い合わせください。

伊勢真一監督作品

『をどらば をどれ』('94)
『奈緒ちゃん』('95)
『ルーペ』('96)
『見えない学校』('98)
『えんとこ』('99)
『風のかたち』ドクター編('03) '99編('99)
『ドキュメンタリーごっこ』('00)
『みなみ風』('01)
『ぴぐれっと』('02)
『きゅう漆』('02)
『朋あり〜太鼓奏者 林英哲―』('04)
『ありがとう』('06)

澄川嘉彦監督作品

『タイマグラばあちゃん』('04)

 

山本起也監督作品

『ツヒノスミカ』('06)

 

多田亜佐美監督作品

『ボクラの島を忘れない』('05)

東志津監督作品

『花の夢』('07)


お問い合わせ:いせFILM

〒150-0001東京都渋谷区神宮前6-28-5宮崎ビル302
TEL:03-3406-9455 FAX:03-3406-9460
HP:http://www2.odn.ne.jp  E-mail:ise-film@rio.odn.ne.jp

<編集後記> 
秋はおいしいものを食べて おなかがいっぱい。風邪には気をつけましょう。(事務局より)