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第5話 おまめさんは冬作れ

あとさきを考えずに大量に作ってしまった煮豆

あとさきを考えずに大量に作ってしまった煮豆の図

 私は茫然としていた。目の前に豆がある。
 パートナーの実家から送られてきちまったのだ。
 「私に、豆を、煮、ろ、と…!?」
 煮豆は、パートナーも私も、好物である。

 しかし、食卓に供される以前の豆については、その正式名称すら定かではない。「これって、うずら豆?」「ささげ?」「金時豆?」「あづき?」小さいのだ。水を吸わせる以前の豆は小さく、当然、固い。問答のすえ、金時豆とあたりをつけた。

 さて、どうしようか。

 思えば、我が母は、豆をたくのが、得意だった。どんな豆でも、形のままに、きれいに、ふっくらと炊きあげる。「料亭の豆」である。ここは、ひとつ、果敢に挑戦しようじゃないか。「あんこ作るぞ!!」と言い切っちゃう私なのだった。

 季節は冬。折りよくストーブが出ている。
 母はいつもストーブの上でコトコトと、煮ていたのだ。
 よし、明日は一日家にいる。
 今日から水につけておこう。

 翌朝、豆が大きくなっている。しめしめと火にかける。たっぷりの水で、「親指とひとさし指ではさんでつぶれるくらい」になるまで煮る。「ぐらぐらふっとうさせちゃうと、豆の表皮が破けるよ…」の言葉通り、気がついたら、皆、切腹の憂き目にあっていた。

 これで、「料亭の豆」の夢は破れる。

 しかし、味で勝負だ。ギリギリの遠火に、ナベをおきかえ、ひたひた、よりも多目の煮汁に、これでもか、と砂糖を入れる。味見。甘くない。砂糖を追加。甘くない。煮汁が煮詰まってくれば…甘くないっっ!!

 体重計が脳裏をかすめる。カロリーとか、ダイエットとかいう言葉もうかぶ。しかし、このままやめるわけにはいかない。心を鬼にして、ドバドバと砂糖を入れる。めまいを覚えるほど大量の砂糖が、豆をつややかに包みはじめる。このことは私の胸にしまっておこう。クツクツと心地よい音がリズミカルに続く。甘いあたたかいにおいが冬の室内に、ほんわかとただよう。「おいしいもん食って早死にするなら幸せだよな」なんてぬくぬくとコタツで考える。

 さて、どうやら甘味がついてきた。でも今いちぼんやりした味。

 ここで塩が登場だ。思ったよりもたくさんの塩。なんとか体裁をととのえた私の煮豆。出来上がりは、甘さひかえめである。「あんだけ入れて、こんなもん…。」コワイ話である。

 表皮は破れ、半分溶けた煮豆だが、なんだかあたたかな一日であった。パートナーの批評なぞ、この際、聞かないでおこう。

教訓

 「おまめさん」は偉大だ。しかし、すげー大量の砂糖を使っていることは、まちがいないぞ。

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