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第11話 あやしの玉子酒

 ゾクゾクと寒気がする。ゲシュンとくしゃみも出れば、ズベズベと鼻水も出る。絵に描いたような風邪なのだが、あいにく熱はないようである。
 これがかえっていけない。高熱でぶった倒れてくれれば、心おきなく仕事も休めるし、回復も早かったりするのである。だけんどもしかし、あいにく熱はない。ティッシュを山とかかえて仕事に出かけ、はかどらない上に、2週間はズベズベの鼻水地獄である。
 こんなときには、えてしてろくでもないことをしでかすものである。
 食欲は全くないが、何か食わねば直るものも直らない。簡単で、栄養があり、身体も温まって、その上、こてんと寝られると言うきわめて都合のいいものでなければならない。ホットミルクにしておけばよいものを、つい欲張ってしまうのは悪い癖、思いついたのは玉子酒である。

 もちろん、風邪をひいたときの玉子酒ほどぴったりなものはないのである。だけんどもしかし、問題は、今まで作ったことがないことにある。料理本などを見てみるが、そんなものは書いているはずもない。しまいには、国語辞典を持ち出してみるが、もちろん作り方など分からない。ここであきらめずに挑戦してしまうところが、我ながら悲しい。運悪くパートナーもいないときている。

 さ〜て、具合の悪い体にムチ打ってキッチンに立つ。鍋にボチャンと玉子をかち割り、日本酒をダバッと投入する。火にかけて、グ〜リグ〜リかき回していると、フワ〜ッとアルコールの匂いが立ち昇る。いいねえ、いいねえ。これだよ、これこれ。頭だけは妙にハイであったりする。

 おっと、ここでミルクなどもダバッと入れてみると完璧に違いない。でへへ、うまそうである、色合いもクリーム色、体にも良さそうである。グ〜リグ〜リして、グッと飲んで、ホア〜ッと寝れば、明日はシャッキリ、全快間違いなしである。だけんともしかし、頭だけは妙にハイなのだが、どうやら道を踏み外したらしい。
 しばらくグ〜リグ〜リしていたら、ところどころにモヤ〜ンとしたものが出来てきた。それが、みるみるうちにプルンプルンに固まってくるではないか。鍋にはポソポソのものまでへばり付きだした。

 トロトロの玉子酒をグッと飲んで、ホア〜ッのはずが、どうしてモヤ〜ン? いくらハイな頭でも、こりゃまずい。作業は中止、とりあえずできた玉子酒を飲んで、いや、食べてみる。プルンプルンである。グッと飲んで、ホア〜ッのはずが、ポソポソである。なんでえ〜。

 さて、風邪も治まり、ハイな頭も静まったところで、パートナーにかくかくしかじかで、玉子酒ってあんなものかと聞いてみたら、即座に「それ、おかしい」と言われた。何が? え? 玉子の白身とミルクを入れちゃだめだって? どして?

パートナーのひとこと

 それってプリン。

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