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第12話 愛情のしょうがスープ

 パートナーが風邪をひいた。滅多にないことである。
 しかも熱がある。滅多にないことである。
 常日頃、手の掛からないパートナーなので、寝込んだりすると私はうれしい。「うれしい」が「うっとうしい」に変わるまで、三日とかからないのであるが、とにかく初日はただ珍しく、かまいたい。柄にもなく、甲斐甲斐しくお世話などしたくなる。

 しかし、手の掛からないパートナーは、一人で枕元にティッシュとごみ箱を備え、自分で買ってきた薬を飲み、厚手のパジャマを着込んで、汗をかいては着替え、ひたすら眠る。こんこんと眠って、起きてくると、少しずつ顔色が良くなり、熱が下がっていく。風邪への対処法を会得しているらしい。

 家にいても、話し相手にもならず、これといってしてあげることもない。枕元ににじり寄っても、前後不覚に寝こけている。非常につまらない。洗濯物ばかりが増えていくが、パートナーが寝込んだときにしてあげる唯一のことが、「洗濯」というのも、何か哀しい。
 さすがのパートナーも熱をおしての炊事は出来ず、私が受け持つ訳なのだが、風邪ひきで食欲のない人間に食べさせるものと言えば、大体相場は決まっており、消化がよく、体を温めるもの、おかゆとか、うどんとか。あまりにも無難だ。

 一人暮らしで一番、寂しいのは、風邪で寝込んだときと聞く。心細く、孤独感が募るという。さもあらん。さもあらん。ということは、こういうときが、同居人がいて良かったと、痛感させる絶好のチャンスなのである。夕食には、発汗効果抜群で、翌朝には熱がすっきり下がり、感謝感激されるような何かを作らねばならない。パートナーが思いも寄らないものがよい。「へえー」と感心されれば、株も上がり、数日後、私が熱を出したときに、あたたかい介護が期待できるというものである。

 そこで、しょうがスープである。
 しょうがといえば、薬味である。薬味といえば、薬である。魚の臭みを取るのみならず、殺菌効果もある。体を温め、発汗を促す陽性の食物の代表格である。漢方薬としても有名だ。体に悪いわけがない。
 しょうがの皮をむき、針のように細く千切りにする。決して水にさらしてはいけない。大きめの器に針しょうがをこんもりと盛る。そこに、出来立て、あつあつのコンソメスープをたっぷり流し入れるのである。以上。大胆かつシンプル。ふーふーしながら飲むと、からい。喉がひりひりする。しかし、飲むそばから汗が噴き出す。飲み終わる頃には、顔面真っ赤っかの汗だく状態である。

 さあ、明日の朝の感謝の言葉が楽しみだ。

教訓

 喉が痛いときは、やめようね。

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たぶん12万