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第15話 親のありがたさ

 年に1、2回しか実家に帰らない。帰っても、なあ〜んにもしない。全く親不孝ものである。ところが、親とはありがたいもの、そんな子供の好物をそろえて、待っていてくれるのである。しかも帰りには、なあ〜んにもしないばかな子供に土産まで送ってくれる。まあ、離れて住んでいればこそ、かもしれない。

 当然のごとく、そんな土産の中にも、子供の好物がわんさか入っている。こんなに大量に送ってどうするんだ、というくらい入っている。困るのを知ってて送る親も親だが、限度を知らんと悪態をつく子も子である。

 正月の帰省土産に、大量のお餅が入っていた。もちろん、私の大好物である。心構えは親不孝であるが、胃袋の方は親孝行である。さっそく、ストーブにアルミホイルを載せて焼いてみる。きな粉をまぶしたあべかわ、海苔をくるりと海苔餅、どれもこれも旨すぎる。お餅の方は、あくまで外はカリッと、中はモチモチっと焼く。カリカリがバカッと割れてプク〜ッと膨れれば上出来である。

 しばし、ストーブの前に正座。が、いつまでたってもプク〜の気配がないばかりか、徐々に、平たく広がっていく。おいおい、溶けているじゃあないか。お箸でつまもうにも、どろ〜んと伸びるばかりで、どうにもならない。がああ、どうしろと言うんじゃあ。
 目の前に大好物があるのに、食えない。こんなに大量のお餅を、そのまま見捨てろと言われても、そんなことできるわけがない。なんとか食えるようにならないものか。あれこれと知恵を絞る。そうそう、外側にカリッとした皮を作れば良い。これで、おいしさを中に閉じ込めるのだ。さて、どうすれば・・・、油で炒めてみればどうだろう。外側パリパリで中しっとり。さっそく、フライパンへ直行である。
 フライパンを火にかけ、油を引き、お餅をジューッ! さてさてさてさて、ひっくり返してみる。おろあ? フライパンにねばるー、フライ返しにひっつくー。だ、だめだあ。
 へばりついたお餅を、タワシで洗い落としながら、物思いにふける。こんな悠長な焼き方では間に合わない、もっと瞬間的にパリパリ皮を作ってしまわなければだめだ。油で、揚げるしかない。

 洗ったばかりのフライパンを火にかけ、油をドボドボ注ぎ、揚げ餅の準備にかかる。一気に揚げてしまえば・・・ぐははは。一網打尽である。さっそく、お餅投入。おおお、皮ができあがっていく。よしよし、完成。お箸でつまみ上げる。パリッとした皮。実にいい。と、皮が破れる。中身がどろ〜ん。ありゃりゃ、皮一枚だけになってしまった。悔しい、悔しすぎる。食べてみる。ああ、涙が出る程、香ばしい。だけんどもしかし、これじゃあ揚げ餅には程遠い。

 そもそも、お餅に水分が多すぎるのである。ならば、干せばいいではないか。我が郷土の青森には、「ほしもち」なる保存食が、ちゃあんとある。ついたお餅を、干すだけ。あとはそのまま食おうが、焼いて食おうが、なんでもOK。非常にシンプルな食べ物である。先人を見習って、さっそく干してみる。

 待つこと数日。い〜い具合である。子供の頃に、親がよく作ってくれた。それを、こんな街中のアパートで作ることになろうとは思わなかったが、まあいい。
 さっそく食べてみる。う〜ん。思い出した。「ほしもち」って、こんな味だった。乾パンのような、安っぽい煎餅のような・・・素朴な民芸調である。水分が少なすぎて、とてもお茶なしでは飲み込めたものではない。しかも、こんなに干してしまった。う〜ん、どうしよう。水に浸けて、戻そうかなあ。

パートナーのひとこと

 そうまでして、食いたいかね?

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