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第18話 いわしの蒲焼き

 苦手というのは、人それぞれだが、料理をするうえで、魚が苦手という人が結構多い。高校の調理実習で、「さんまの磯辺巻き」を作ったとき、数人の級友が顔面蒼白状態であった。魚に触るのがイヤなのである。では、食べられないのかと言えば、そうでもないところが興味深い。

 確かに、現代の台所では、血を見ることは殆どない。タマネギを切っていて血を見るヤツも中にはいるが、一個体を、血と内蔵にまみれつつ解体するという作業は、出来れば避けたいものである。
 さらに、魚料理は何かと面倒である。まず、さばき方が分からない。我が家には、万能包丁しかないのを見れば分かるとおり、魚を上手にさばける人間はいない。三枚卸しの正式な手順も知らない。焼き魚のヒレに塩を付けたりはするが、串を打って焼くことは出来ない。
 腕に覚えもなければ、こだわりも、学習意欲もないのである。

 大体において魚は高い。いわゆる大衆魚であっても、頭、骨などの廃棄率を考えると、とても安いとは言えない。そのうえ、魚は食べにくく、小骨が刺さって病院行きってことすらあるのである。
 全くもって、魚料理は厄介だ。このように数々のデメリットがあるにもかかわらず、なぜに私は魚を食べるのか。

 結局、私は日本人なのである。メインの食材を牛、豚、鶏、玉子、魚、大豆製品として、ローテーションを組むことで、日本人の食卓はこんなにも豊かなのだ。その一つを欠くことは、献立を考える自分の首を絞めることになる。また、明日の日本人を養う身の上、家庭料理に魚は不可欠。さらにいうなら、おさかなはおいしいのである。

 そうして私は考えた。作り方が簡単で、安く美味しく食べやすい魚料理。それが「イワシの蒲焼き」である。
 第一に、イワシは安い。栄養価が高い。ヘルシーである。そのうえ、頭が良くなるというおまけ付き。
 第二に、イワシは手だけで開ける。頭を落とし、はらわたを取り、胸から尾まで骨をしごくようにして指を伝わせていくと、イワシの開きは簡単に出来る。中骨を切り取り、腹の骨を包丁でそぎ落とし、気になるヒレを切り取れば、あっという間に下準備終了である。
 これに、軽く塩、コショウし、小麦粉をまぶして油でソテーする。焼けてきたら、「鰻の蒲焼き」を買ったときに付いてきたタレを水で適当に薄め、イワシソテーに絡めるのである。小麦粉がとろみを加え、汁気がなくなってきたら出来上がり。
 山椒の代わりに針しょうがを加えると、いっそう美味しい。丼にしても酒の肴にも弁当にもいい。

 あまりにも完璧な我が家風、魚料理だ。陶然と自分に酔っていると、皿にのせる寸前、イワシの尻尾が取れちゃったりするのである。

教訓

 多めにもらおう、蒲焼きのタレ

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