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第21話 残り香の大学イモ

 じゃーっ! ほとんど揚げ物をしないのに、夜の9時にサツマイモを揚げている。目指すは大学イモ。まあ、ちいとばかり腹が減ったのである。

 スーパーの惣菜コーナーで時々見かけるこの大学イモ、イモ・クリ・カボチャ好きにはたまらない。揚げたサツマイモのぱさぱさ感を、白みつで補った超優れものである。だけんどもしかし、今ひとつメジャーになりきれない。イモ・クリ・カボチャ系としては、そんな大学イモに、じくじたる思いを抱いてしまうのである。

 実はこの大学イモ、この時初めて作ってみた。いつものよからぬアイディアで、帰省土産の水飴をなんとか食ってやろうという了見から始まったのである。この水飴、ただの丸いブリキ缶に水飴を入れただけ。それを、堂々と「津軽飴」と称して売っている。もちろん、我が故郷の人々が、日に3度は食べなければ気が済まない、というのでもなければ、貧乏な田舎町の町おこしというのでもない。今もって、「なんでじゃ?」である。

 肝心の、大学イモの作り方であるが、これがまた極めて大雑把。ひとくち大に、ザックザックとイモを切る。油で濃いきつね色に、じゃーっ! と揚げる。水飴をねろねろとからめる。以上。悲しいくらいシンプルなお菓子である。だけんどもしかし、その最大の魅力は、その香り。揚げている時に、ふ〜んと漂う、甘く香ばしい香り。何とも素朴で、ノスタルジックな香りである。こういうのが、おふくろの味とかおばあちゃんの味とか言うのかも知れない。が、残念ながら、おふくろにも、おばあちゃんにも、作ってもらったことがない。どちらも、揚げ物は苦手だったのか、ふかして食ったほうが早いと思ったのだろう。

 頃合い良く揚がりかかったところで、大学の先輩が登場した。わざわざ気にかけてくれ、足を運んでもらえるのは、ありがたやありがたや、であるのだが、今揚げ物の真っ最中じゃーっ! 生のイモをそのまま食べるわけにもいかず、 心の中ではありがたくても、行動で示すことはできない。しょうがない、出来上がるまで待っていてもらおう。こちらは、水飴をからめるという、大事なお仕事が残っているのだ。先輩をほったらかして、揚げイモを水飴の中に投入。ぬらぬらつやつやと、色合いも美しい。本当は、水飴ではなく白みつなのだが、今回は水飴が目的なので、そこらへんのことは、とんと気にしないことにした。

 そうこうしているうちに、ようやく完成。「いやいや、申し訳ない」と、お詫びに、できたてホヤンホヤンの大学イモを差し出した。先輩、すでに一杯きこしめした後。そんな時に、大学イモというのも考え物である。だけんどもしかし、それが私のキャラクターでもあり、先輩も理解してくれている。いや〜、助かった。あつあつの大学イモをつまみながら、仕事や昔話に花満開である。

 ついつい話し込んでしまった。大学イモ水飴バージョンも、もうすっかり空っぽである。
 あああああ? おいおい、私はまだ食ってないぞ。ひとつも!!
 「先輩ひどいじゃないですか。ひとつくらい残しといてくれても」とは言えないところが、悲しい。それどころか、にこやかに先輩を送り出して、がっくり。皿に残った匂いをかいでは、がっくり。本当においしかったのかは、今もって分からない。
 せんぱ〜い、覚えてる? だめ? だろうなあ、やっぱり。

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 10年前のことを、根に持つなよ〜。

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