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第23話 かっちょいいもつ煮込み

 私の頭の中を、かき乱すようなことが起こった。土曜日の朝に「ボローニャ風もつ煮込み」をテレビで紹介していたのである。背も鼻も高い精悍なラテン男が良く似合う、とてもおしゃれなもつ煮込みが、テレビ映りの非常に良いこじゃれたイタリア料理店で出されているのである。「一杯飲み屋風」でコチンコチンに凝り固まった頭には、衝撃さえ感じられる。

 少し落ち着こう。
「あれは、錯覚なのではないか?」
 こぎたない一杯飲み屋で、ビールで顔を赤くしたおやじが良く似合う肴。噛んだ時に口の中に広がる、じゅわじゅわっとした味わいは捨てがたいが、イメージはあまり良くない。
「そんなものが、なぜ、あんなに私には似合わないおしゃれな料理になるのだ?」
 疑問は次から次へと湧いてくる。

 「一杯飲み屋風」というか、「日本風しょぼいもつ煮込み」は、茶色だか灰色だか良く分からないもつと、これまた何色だか分からない大根なんかといっしょに煮込まれ、結構脂ぎっていたりする。さらに、風呂敷きのような模様の器に入って出ちゃったりもする。かたや、「ボローニャ風かっちょいいもつ煮込み」は、トマトの鮮やかな赤が目に眩しく、器だって白くて、まるでキザ野郎の歯のように輝いている。

 どうやら、(1)色彩鮮やか (2)ギトギト感なし ということが、両者の明暗を分けているようだ。人間だって、何色だか分からないくすんだ男、ギトギト男よりは、さっぱりと色艶が良いほうがもてるし、顔色の悪い女よりは、健康的で肌や唇の色合いが美しい方が良いに決まっている。
 と、ここまでくると、どうしても「日本風」を自分と重ねてしまって、なんとも打ちひしがれた気分になってしまう。う〜む。

 さわやかな土曜日の朝から、打ちひしがれているのも損なので、気分転換に、作ってみることにした。いくらかっちょよくても、まずければ、話にならない。やはり、中身が大切である。
 まずは、脂を抜くために、約6時間ひたすら煮る。その間に煮汁とともに脂を捨てる。そのうち、さっぱりと、柔らかくなってくる。お次はトマトソース。イタリア産トマトの缶詰を使うが、色の鮮やかさが日本のトマトと全然違う。これを玉ねぎのみじん切りと炒める。これに、もつを投入すれば、完成。見た目も超かっこいい。味付けは、酸味の効いたあっさり味のミートソースといったところである。出来上がった「ボローニャ風」を食べてみる。食っても・・・うまいじゃないか。

 もつをかみ締めつつ、再び考え込む。こんなにきれいで、しかもうまい。「日本風」と「ボローニャ風」味に雲泥の差があるかといえば、ない。だけんどもしかし、見た目では「ボローニャ風」の完全勝利。
 日本人として、いかにもくやしい。これでいいのか? 見た目で勝てなきゃ、中身で圧倒的な差をつけるしかないじゃないか。となれば、質実剛健でいくしかない。でも、「質実剛健もつ煮込み」って、どんなだ?

パートナーのひとこと

 もつは、もつだな〜。

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たぶん12万