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第25話 スウェーデン人がやってきた

 会社にスウェーデンからの研修生がやってきた。3日間にわたって研修をしてやってくれという。さて、困った。英語がまったく話せないうえに、今の職場は2週間前に転勤になったばかりで、仕事も知らない。それでも通訳はつけてくれたし、色々な人に助けてもらった。金髪で背の高い好青年に立ち向かうには、あまりにも分が悪いと思われたのだろう。まあ、捨てる神あれば、拾う神ありってところである。

 「仕事のことはともかく、日本の文化を学びたい。でも、焼き鳥はもういらない」という研修生と、昼食を共にする。焼き魚定食についてきた、とろろは、どうやって食うのだと言うから、醤油をたらして、ごはんにぶっかけろと言うと、けげんな顔をしていた。お箸をうまく使いながら、「なかなかいいよ」と口では言っていても、顔は笑っていない。こいつは正直者である。

 この研修生、4カ月も研修するらしい。アパートを借りて住み込んでいる。その間にお米でご飯を作って見たいから、やり方を教えて欲しいと言われた、炊飯器で簡単にできるぞと答えてやったら、1回か2回作るのに、炊飯器を買うのはもったいないし、国にもって帰ってもしょうがないだろうとのお返事。ごもっともである。

 家に帰ればよきお母さんであろう通訳さんと顔を見合わせて、「こまったなあ。」 そう、普通の鍋でのご飯の作り方を知らないのである。知っているのは、はじめちょろちょろなかぱっぱ、赤子ないてもなんとやらってことくらい。研修生には、今の日本人は鍋でご飯を作る人はほとんどいないし、我々も教えられるほどは知らないと、正直に話してあきらめてもらった。日本人が主食の作り方を教えられないのは情けないが、欧米人にパンの焼き方を教えてくれといっても、まあ、似たようなものだろう。

 本当においしいご飯を炊こうと思うと、様々なノウハウが必要である。お米の研ぎ方、お米の状態や季節による水加減の違い、微妙な火加減や追い炊きだのむらしだのと、実に細かい。また、時々出来具合を見てみるというわけにもいかない、一発勝負ものである。以前、いざというときのためにごはんを鍋で炊いてみたことがある。沸騰してから12分などという中途半端な時間を時計で計りながら、非常に緊張しながら作った。ふたを開けてみて、「おおお、かにの穴、うまくできた証拠だ」と、感動もひとしおであったが、悲しいことに10年前に買った炊飯器製と味はたいして変わらなかった。

 こうやって日本の文化は失われていくのかもしれないが、そのうち、お焦げが出来る炊飯器が出来るかもしれない。あれは、うまかった。今度はおいしいおこげにでも挑戦してみるかな?

教訓

 おこげは自分で洗ってね。

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