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第28話 哀愁のスモークチキン

ちょうどスモーク終わりました

スモークが終わったチキンの図

「こんなはずじゃなかった。」

 夕闇迫る渓谷のキャンプ場。刻々と冷えゆく晩秋の大自然の中、カセットコンロで鳥肉をあぶりながら、私は打ちひしがれていた。
 数時間前、私は希望に満ちていた。澄み渡る青い空、心地よい清流のせせらぎ、紅葉の山々。今宵は、満天の星空のもと、焚き火の温かい炎に照らされながらパートナーとワインをくみかわすのだ。肴は焚き火で焼いたカマンベールチーズと、じっくり時間をかけていぶしあげたお手製のスモークチキンである。
 そう、今回の目玉はスモークチキンである。「邪道」というパートナーのそしりにもめげずカセットコンロを積み込んだのは、このためである。

 パートナーは、釣れない釣りに子どもを連れだした。一人残った私は早速、簡易薫製機「スモークちゃん」を紐解いた。簡単で易しいと言っても、初挑戦。一応、書いてある説明を読む。なになに、下ごしらえ?塩漬け?塩抜き?何だそれ?いやでもしかし、要するに味付けだろう。気を取り直し、用意した鳥骨付きもも肉を取り出す。あ、まだ半解凍状態。アウトドアの本に、足の早い鳥肉は冷凍せよと書いてあったのだが、時期的に不要で あったか。
 とりあえず塩、コショウをふる。さて、することがなくなってしまった。せっかちな私は鳥肉の解凍が待ちきれない。解凍と薫製を兼ねることにする。
 カセットコンロに段ボールとチップ皿、汁受け皿、網、S字フック、鳥肉をセットし、着火。ごく弱火でしばし待てば、白く細い煙がたなびく。あとは火が通るまで気長に待つだけである。時折チップを足すだけで他にすることがない。しかし火のそばは離れられない。大自然の中で、のんびりと贅沢な時間を味わう。

 そうこうするうちに1時間経過。鳥肉から油が滴るようになった。薫製ならではの香りが漂う。いいぞいいぞ。
 更に30分。あめ色になった鳥肉はいかにもうまそうに艶やかに輝く。出来上がりだ。この色、この艶、この香り。

 ふと気が付くと、パートナーがずぶぬれで立っている。そのうえ、ありゃりゃ?血だ!川に落ちて、岩に腿をぶつけた? なにやってんだあ。
 けが人はほっといて、試食である。がぶり。
 皮がゴムのように伸び、かみきれない。皮と身の間に、油が、じゅわーっとにじみ、うまい。少々塩味が薄いが、よしとしよう。さて、身は?うーん、柔らかい。ジューシー!これは大成功じゃあないか!
 と、ありゃりゃ?血だ!火が通っていない!どうしよう! これ以上いぶせば、油は抜け落ち、焦げ臭くなってしまう!時間もない!誰かここに電子レンジをもってきてよお!!
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「こんなはずじゃなかった。」

教訓

 下準備はやっぱり大切!

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