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第29話 びろ〜ん

 ある日、深夜の家族会議で、突然コロッケを食べることになった。しかも、パートナーにうまくまるめこまれて、2種類も作ることになってしまった。ソースをとろっとかけたコロッケなんだと、せつせつと訴えられて、その誘惑に負けてしまった、って感じだ。

 ひき肉ポテトコロッケと、エビクリームコロッケに決まった。コロッケなんて、芋つぶし、丸め、衣付け、揚げるだけである。よっしゃよっしゃあ。
 ところで、クリームコロッケは? ありり???
 頭の中には、ひき肉コロッケが、ぽつんとひとつ置いてある、そんな感じである。う〜む。

 食べたいと言った当のパートナーに、作り方を教えてくれと言ったら、「さあ、知らな〜い。」
 なんてえ勝手なやつだ、まったく。しょうがない、頼るは、料理本。「スーパーおかず百科」とか「毎日のおかず○○○日」とか「サルでも分かるパンとスープ」とかいった本を、総動員してみる。でも、じぇんじぇん書いていない。なんてこったい。2日間にわたる調査の末、ついに書いてある料理本を発見した。だけんどもしかし、ホワイトクリームが、はたしてタワラ型に揚がるのか、と言う点については、何も書いていない。相手はクリームなのだ、私タワラになります、なんて簡単には言ってくれない。当たってつぶれろか?

 製作当日。ポテトコロッケの方は、サクサクと芋団子にできあがった。思い描いたとおり。料理マシーンか達人にでもなったような気分である。おかげで、サクサクと20個もできてしまった。きっと、パートナーが責任を取って、げろっと平らげてくれるに違いない。

 いよいよ、難関のクリームコロッケをつくらなければならない時間だ。冷やしたエビ入りホワイトクリームを、小麦粉の上にスプーンで乗せる。ころん、びろ〜ん。が〜あ、だめだあ。
 それでも1時間ほど格闘し、何とかクリーム団子はできあがった。手はベタベタ、キッチンは粉だらけ、うまくつかないパン粉が、山のようにくずかごへ。クリーム団子といえば、あいかわらずびろ〜んである。う〜む。とりあえ忘れることにしよう。

 団子さえできてしまえば、あとは油でちゃちゃっと揚げて、ザクザクと食べるだけである。楽勝楽勝。 この揚げ油のあま〜い匂いが、なんとも食欲をそそる。ノスタルジックな匂い、コロッケの最大の魅力かも知れない。しかも、サクサクとろ〜り。

 できあがったアツアツのコロッケを、ぱくつく。う、うますぎるぜ。はむはむしながら、普段料理をしないという会社の後輩との会話に思いをはせる。
「人に料理を作ってもらうのって、うれしいですよねえ。」
「そう、喜んでもらえるから、作ろうと思うんだよね。」
「だから、普段料理しないんですけど、お母さんに作り方だけは聞いておくんですよ。」
「でもねえ、頭で分かってても、うまく作れないってこと多いよね。そうそう。」
 べたべた、ザラザラ、びろ〜ん。うまく作れないんだよなあ。そうそう。

 あつあつホクホクコロッケを囲んで、パートナーと、作り方談議に花が咲く。
「ところで、何で玉子の前に、小麦粉つけるの?」
「さ〜あ、知らな〜い。」
もちろん、料理本には書いていない。謎は深まるばかりである。

パートナーのひとこと

 今度は、まがたま型に挑戦だ!

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