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第31話 なにやってんだあ

 私は、つまみ食いのスキをねらうワルガキ顔を見るために、ケーキを作っているんじゃないのに。そんな気分になってしまった。

 前日の土曜日、子供と私はべったりだった。なにしろ、年に1度の運動会、懸命に走る子供を励まし、誉め、見詰めていないといけない。
「帽子を取れ〜!、逃げろ〜!」

 ところが、日曜日ときたら、その反動かパートナーにべったりである。あまり忍耐力のないパートナーのことである、そんなべったりもしばらく続くと、辛抱もブッチリと切れる。その前に、何か手を打たなければならない。

「ロールケーキを一緒に作るよ」
 このひとことに、子供は目をきらきらさせて乗ってくるはず。だけんどもしかし、親の希望とは裏腹に、子供の中では、友達、ロールケーキ、親の順番に大切らしい。
「ケーキは食べたいから、作っといて!」といって、遊びに行ってしまった。とほほ。
 しかも、30分もすると、もう友達のところから帰ってきて、開口一番、
「できたあ?」
んなわけないだろ。

 スポンジを焼く。手伝ってもくれないのがちょっとさびしいが、今に見ておれ。 型に流してオーブンに入れ、焼き上がる頃には、スウィートな香りがぷんぷんである。がぜん、みんなの目の輝きが違ってくる。出来上がりは、ちょっとかたかった。特に、端っこのところなど、クッキーのようだ。でも、
「できたの? これ食べていい?」
って、聞いているそばから、ばりばりつまみ食いを始める。こらー!

 生クリームを泡立てる。ちょっとゆるめに。パートナーのリクエストで、栗の甘煮なんかも入れちゃう。徐々にゴージャスなロールケーキに変身しつつあるようだ。がはははは。

 手伝ってもくれなかったのが、一転、クリームを塗りたいと言い出した。おいしいところばかり持っていくようでは、良い大人にはなれないが、手伝うというんだから、邪険にもできない。生クリームおそるべし。

 さて、不器用に塗り広げられたクリームをゴムべらでならしながら、最後の巻き上げ。しかし、ボクッと折れてクルリとは巻けない、。脇からクリームがビビッとはみ出してるし。があ〜あ、ってな状態である。
そんなところをすぐさま嗅ぎつけ、はみ出したクリームをなめに来る。こりゃこりゃまったく。

 あああ? 知らない間に、泡立てボールとゴムベラ抱えて何なめてんだあ。こっちは、パートナーの方だ。大の大人が、目をきらきらさせて、なにやってんだか。ま〜ったく。
 ま、喜んでくれるのはうれしいが、それなら、作るって言った時から喜んで欲しいものだ。

 つまみ食いのスキをねらう子供、堂々とゴムベラ抱えてクリームをなめるパートナー。私は、こいつらのこんなワルガキ顔を見るためにケーキを作っているのか?

パートナーのひとこと

 そうだよ!

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